
2024年10月15日~18日に幕張メッセ(千葉県)で開催となった、シーテック2024。25周年を迎えるデジタルイノベーションの総合展であり、今回はジャパンモビリティショービズウィーク2024と同時開催された。ここではネクスティ エレクトロニクスブースで気になった、クルマに関する次世代技術をご紹介。
●文/写真:月刊自家用車編集部(ヤマ) ●外部リンク:シーテック
シートの振動”だけ”で4Dサウンドを味わえる
完全自動運転のひとつ前の段階、いわば”半自動運転”社会の段階に役立ちそうな技術がこの”振動シート”だ。
振動子をシートに内蔵することで、ドライバーモニタリングアラートや衝突検知などの先進安全装備と連動して注意を喚起。
道路をはみ出す可能性があったり、道路上の障害物や他のクルマとの衝突の可能性があったりする場合に、振動でドライバーに伝える。
キャデラックなどシート振動機能自体を採用しているクルマもすでにあるが、ネクスティで展示されたものは振動子を多数搭載。また振動子自体の動き・制御が細やかで、たとえば駐車時のソナーセンサー警報音のように「ぶつかる可能性のある方向」を振動子を組み合わせて表現しつつ、強弱、間隔を変えて作動させることが可能。
実際に体験してみると、正面の危険なのか後側方の危険なのかなど、振動の種類によって「何が起こりそうなのか」がとてもわかりやすい。
担当者によればもちろん視覚や音も重要だが、ドライバーには触覚で訴えることがかなり効果的だという。完全自動運転化されればクルマが勝手に避けたり駐めたりしてくれるだろうが、半自動運転状態などでは、いざというときの判断の心強い”パートナー”になってくれそうだ。
そして何よりおすすめなポイントが……迫力のある音楽を楽しめること。各振動子がまるでスピーカーのような働きをして、シートだけで高音や低音までをカバー。
骨伝導イヤホンの全身版とでも言えば、分かりやすいだろうか。細かな制御が可能なので歌声はもちろん、かなりの重低音も楽しめた。
たしかにクルマが自動運転化されれば、音楽や読書、食事など座席での過ごし方は様変わりするだろう。しかし正直これは、自動運転時代到来の前に採用してほしい機能だ。
振動子を多数搭載したシートに座って実際に体験。
ドライバーが看板に気を取られていると、振動でウォーニング。
使用する振動子はGREWUS社のボイスコイルモーター”HapForce”。非常に小さい。実際の音を文字で表現できないことが残念。
うろ覚えの曲も再生、車内がカラオケ状態に?!
次に紹介する展示も、音楽に関する次世代技術だ。運転していてつい口ずさむ、お気に入りの歌。しかし途中から歌詞がわからなくなり、ハミングに変化…。
こちらの技術が実用化されればそんな事がなくなり、歌詞付きカラオケが楽しめるようになるはず。メロディの一部をソフトが認識し、自動検索。曲名や歌詞を表示しつつ、その音楽を再生してくれるのだ。
たとえばラジオから流れてきている曲が気に入ったけれど、曲名がわからない。そんな時もこの機能があれば再生が可能。少し先の歌詞を先行して教えてくれる機能もあり、気になっていたあの曲を運転席でフルに歌い切れるわけだ。
実際、この「曲を当てて再生しつつ歌詞を出してくれる」機能はすでにアプリとして存在。しかし現時点での法令では、注視してしまう可能性もあるため歌詞の表示など含め、クルマと結びつけることが難しい。
自動運転化時代に向け将来的に、カーナビやディスプレイオーディオといったインターフェースに組み込みたい、という考えだ。
ブースでは運転席が再現され、実際に体験が可能だった。
車で歌えるシステム
ソフトは楽曲認識アプリ、OTO-Mii。
音声で先行して歌詞を読み上げてくれるので、画面(歌詞)を見ずとも歌い切ることが可能。
不要時はスイッチ類が見えないスマートな車内を実現
最後に紹介するのは、表示・非表示の切り替えが可能というスマートな操作機器類の提案だ。素材の温度変化や経年変化に影響されない、高精度の感圧センシング技術を採用。
物理スイッチではないので、自由な場所に配置することもできる。たとえば自動運転モードの時だけ、それに関わるスイッチ類を出現させることも可能。
また静電と感圧を組み合わせるなどし、ミスタッチを軽減。実際に触ってみると、”押した感”(フィードバック)がとても分かりやすい。
このタッチボタン自体は実際に採用されているケースもあり(Ultrasense Systems)、ネクスティではボタン制御や素材加工、振動フィードバック等、より最適なUI実現をサポートしている。
センターコンソールなどでタッチパネル式のスイッチ類を使用したことがある方なら分かると思うが、物理的なスイッチでないと、目を離しての操作がなかなか難しかったりする。
自動運転化されれば目を離すのも自由になるし、必要でないときはスイッチ類が表示されない、まるで好きな家具に囲まれた落ち着きのある自室のような、スマートな車内デザインが実現されそうだ。
インパネの一部に目立たないよう、スイッチ類を配置することが可能だ。
ステアリングに採用した例。たとえば選択中のモードにより「押せる」「押しても反応しない」などスイッチの切り替えが可能。
超音波信号を通す金属表面素材を使用したスイッチも。音量を上げる、下げるといった操作も指のスライドで可能。それに合わせたフィードバック(音量を上げるとトトトッと反応が強くなるなど)が気持ちいい。
ネクスティ エレクトロニクスのブース。同社は豊田通商グループで、株式会社トーメンエレクトロニクスと株式会社豊通エレクトロニクスが統合し2017年に誕生。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニュース)
多目的次世代アリーナを10月3日に開業 開業記念式典には、小池百合子東京都知事やBリーグの島田慎二代表理事CEOなど多数の来賓が出席。トヨタ自動車の豊田章男会長は、アリーナへの思いを語るとともに、室伏[…]
多様なモビリティサービスに対応可能なバッテリーEV。価格は2900万円から 「e-Palette(イーパレット)」は、人々の生活と社会を豊かにする新たな移動体験を創出する、未来志向のプラットフォームと[…]
オートサロン2025で披露された注目バージョンが市販化 2020年に発売が始まったGRヤリスは、走りに直結するさまざまな改良を頻繁に行うことでも有名なモデル。それだけメーカーのこだわりが強いことをユー[…]
BYD初のステーションワゴン 世界初公開された、新型ハイブリッド車「BYD SEAL 6 DM-i TOURING」は、BYD初のステーションワゴンであり、同社が独自に開発したプラグインハイブリッド車[…]
WLTCモードで295kmの航続距離を確保 新型軽EV「N-ONE e:」は、「e: Daily Partner」をグランドコンセプトに掲げ、日々の生活をより豊かにするパートナーを目指して開発。 EV[…]
最新の関連記事(月刊自家用車)
スズキのBEV世界戦略車が国内導入 新型eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された、スズキのBEV世界戦略車第一弾となるモデル。 「Emotional Versatile Crui[…]
剛性の積み重ねが生む一体感 2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
多目的次世代アリーナを10月3日に開業 開業記念式典には、小池百合子東京都知事やBリーグの島田慎二代表理事CEOなど多数の来賓が出席。トヨタ自動車の豊田章男会長は、アリーナへの思いを語るとともに、室伏[…]
人気記事ランキング(全体)
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
前席は快適でも、後席は意外と暑くて不快な場合も… まだまだ強い日差しが照りつけるこの季節、車内の冷房の稼働は必須と言える。クルマに乗り込んで、涼しい風に当たって「はぁ〜涼しい…」と、ひと息ついていると[…]
2人旅に特化したゆとりある空間 TR540S Joinの魅力は、まず「2人旅に特化」と割り切った設計にある。就寝人数を2名(乗車人数は5名)に絞ったことで、車内レイアウトに余裕を生み出し、広々としたダ[…]
最新の投稿記事(全体)
スズキのBEV世界戦略車が国内導入 新型eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開された、スズキのBEV世界戦略車第一弾となるモデル。 「Emotional Versatile Crui[…]
剛性の積み重ねが生む一体感 2024年に実施されたゲームチェンジャーとまで言われた20式から24式への進化。その革新的な変化と比べると、24式から25式への進化は「ブラッシュアップ」と表現するのが妥当[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
プロポーショニングバルブの開発で、ブレーキ液圧を適正に制御 クルマは様々な要因で荷重変化が起こり、それによってタイヤの接地性が変化し、制動力が左右される。これを防ぐために開発されたのが前後のブレーキ液[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
- 1
- 2