ガソリンの種類を選ぶ際、”ハイオク”と”レギュラー”、そして”軽油”の違いとそれぞれの価格設定について、明確に理解している人は意外と少ないかもしれません。しかしこれらの燃料の特性と価格差の理由を理解することで、自分のクルマに最適な燃料を選び、エンジンを長持ちさせることができます。ではハイオクガソリンがレギュラーより高い理由や、軽油がガソリンより安い理由はどのような点にあるのでしょうか。
●文:月刊自家用車編集部
”高級ガソリン”?ハイオクがレギュラーより高い理由とは
ハイオクガソリンがレギュラーガソリンよりも高価である理由を理解するには、”オクタン価”という指標を理解することが大切です。
オクタン価(Octane Rating)はガソリンの品質を示す数値のひとつで、エンジンのノッキング(エンジン内での異常燃焼)に対する耐性を測定します。オクタン価が高いほど、ガソリンは高圧縮下でもノッキングを起こしにくいという特性があります。
ノッキングとは、エンジン内で燃料が圧縮されて爆発するときに、タイミングを誤って早く爆発してしまう現象を指します。ノッキングが頻繁に起きるとエンジンは過熱し、性能が低下するだけでなく、部品に損傷を与えることもあります。
そしてハイオクがレギュラーガソリンより高価な理由としては、大きく3つが挙げられます。
まずひとつ目の理由には、ハイオクの製造にはオクタン価を上げるためにレギュラーガソリンよりも多くの添加物が必要であり、製造コストがかかるためです。
ハイオク車両は、スポーツカーや高排気量モデルが多い。
オクタン価を上げるための添加物/洗浄剤が、製品の価格に直接影響を与えているのです。
2つ目の理由は、ハイオクが特殊なエンジン向けに開発されているためです。
ハイオクにはオクタン価が高く設定されています。これによりハイオクは高い圧縮比を必要とするエンジン、たとえば高性能なエンジン/ターボエンジンなどに適しています。
これらのエンジンはハイオクガソリンの高いオクタン価を活用することで、最大の性能を発揮することができるのです。
そして3つ目の理由は、ハイオクの製造量がレギュラーガソリンに比べて少ないため、一単位あたりの製造コストが高くなるという経済的な側面です。
原油からガソリンを製造する際、レギュラーガソリンとハイオクの比率は、製油所の設定によりますが、通常はレギュラーガソリンの方が多く生成されます。
これは、一般的にレギュラーガソリンを使用するクルマの数がハイオクを必要とするクルマよりも多いため、レギュラーガソリンのほうが需要が大きいのです。その結果、製造コストの観点から見るとハイオクは量産効果が低く、単位当たりの製造コストが高くなります。
ちなみに、レギュラー対応のクルマにハイオクガソリンを入れてもエンジンの性能を向上させることはありません。
なぜならレギュラー車のエンジンは、ハイオクガソリンを活用できるように開発されていないためです。
ただ、反対にハイオク車にレギュラーガソリンを入れると、ノッキングが発生し、エンジンに損傷を与える可能性があるので注意しましょう。
一体なぜ?軽油がガソリンより安い理由
軽油がガソリンよりも安価なのは、主に3つの理由が挙げられます。
まずひとつ目は、製造工程の違いです。軽油はガソリンに比べて精製工程が短く、生産コストが低いです。
これは、軽油が比較的重い炭化水素から作られ、原油を分留する際に上部に浮くガソリンよりも下部に多く存在するためです。
2つ目の理由は、税制上の違いです。
軽油は商業車両/農業機械などの燃料として以外にも、発電/暖房などの広範な用途に使用されており、社会全体の経済活動に直接関係しています。そのため日本では、軽油の税率がガソリンに比べて低く設定されています。
基本的に軽油は、レギュラー/ハイオクよりも安い価格設定になっている。
また市場全体の需要が大きく、価格が安定しているのです。
3つ目の理由は、ディーゼルエンジンがガソリンエンジンに比べて燃費が良いため、軽油の需要が高いという点です。
ただその一方で、ディーゼルエンジンの排ガス規制が厳しくなりつつあり、新たなディーゼル車の開発は難しくなっています。
このようにハイオクガソリンとレギュラーガソリン、そして軽油の違いを理解すれば、それぞれの燃料が適しているエンジンや用途、価格設定の理由が明確になります。
これらの知識を身につけて自分のクルマに適した燃料を選ぶことで、エンジンの寿命を延ばし、クルマの性能を最大限に引き出すことが可能になるのです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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