
ボルボのコンパクトEVとなる「EX30」が8月に一部改良と、大幅なラインナップ拡充を行った。今回は、そこで追加された“ボルボ史上最速”を謳うツインモーター仕様の走りをレポートしよう。どんなクルマで、どのような走りを見せてくれたのだろうか。
●文/写真:鈴木ケンイチ
高い環境意識のもとに生まれたスタイリッシュなEV
ボルボ史上最も小さなEVとして、2023年11月に日本導入されたのがEX30だ。
サイズでいえば全長4235×全幅1835×全高1550㎜なので、日本の立体駐車場にも入れることのできるBセグメント相応のEVとなる。
また、使用したアルミの約25%、鉄の約17%、プラスチックの約17%にリサイクル材を用いることで生産時のCO2排出を抑制しているなど、ボルボ史上最も少ないカーボンフットプリント(生産から走行、廃車になるまでのライフサイクル全体でのCO2排出量)も実現している一台になる。
またデザイン面でも、従来のボルボ車とは一線を画す存在ということも魅力のひとつ。
集約化をテーマに構成されるデザインは、非常にシンプルでクリーンなイメージ。
キャビンまわりの物理スイッチも少なめで、ディスプレイ類はセンター部に、オーディオ用のスピーカーもダッシュボードのサウンドバーとして配置される。
ウインドウの操作スイッチも中央のアームレスト部に設置されているので、ドアにはスイッチもスピーカーも存在していない。パッケージ視点から見ても、EX30は非常に高い環境意識のもとに生まれたEVということがわかる。
今回の改良で5グレード体制へ
今回の一部改良では、最初に導入された1モーターのFF仕様に加え、同じ1モーターFFのスタンダード仕様、容量の小さなバッテリーを積むエントリーグレード、パワフルな2モーターの4WD仕様、そしてクロスオーバー仕様という4モデルを追加した。全部で5グレードとなったことで、価格レンジも広くなっている。
| 新モデルでの立ち位置 | グレード | 仕様 | 価格 |
| エントリーグレード | 「EX30 Plus Single Motor」 | バッテリー:51kWh(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー) 航続距離390㎞ 最高出力200kW(272PS) 最大トルク343Nm | 479万円 |
| スタンダードグレード | 「EX30 Plus Single Motor Extended Range」 | バッテリー:69kWh 航続距離560㎞ 最高出力200kW(272PS) 最大トルク343Nm | 539万円 |
| 上級グレード ✳︎従来モデルでも設定 | 「EX30 Ultra Single Motor Extended Range」 | バッテリー:69kWh 航続距離560㎞ 最高出力200kW(272PS) 最大トルク343Nm | 579万円 |
| 4WDグレード ✳︎試乗モデル | 「EX30 Ultra Twin Motor Performance」 | バッテリー:69kWh 航続距離535㎞ 最高出力315kW(428PS) 最大トルク543Nm | 629万円 |
| クロスオーバー・グレード | 「EX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performance」 | バッテリー:69kWh 航続距離500㎞ 最高出力315kW(428PS) 最大トルク543Nm | 649万円 |
また、バリエーション拡充にあわせ、シートの座面の20㎜拡大、回生ブレーキの効き目の増加(フリー、弱め、強めの3段階)、インフォテイメント系へのクアルコム・スナップドラゴンの採用、クルマの前部両サイドのミリ波レーダーとドライバーモニタリング・システム追加による安全機能の拡充も行われている。
強烈スペックとは裏腹に、その走りはスムーズで静か
今回は、EX30の4WDグレードとなる「EX30 Ultra Twin Motor Performance」を試乗した。このグレードは、従来からあるFFの「EX30 Ultra Single Motor Extended Range」に、プラス50万円で購入できる4WDモデルという立ち位置になる。
試乗したのは「EX30 Ultra Twin Motor Performance」価格は629万円。
洗練されたシンプルさが際立つEX30のスタイリング。従来のボルボとは一線を画す、集約化されたクリーンなデザインが特徴。
この4WDグレードのポイントは、グレード名に「Performance(パフォーマンス)」と付くことで、前後の2つのモーターを合わせると、最高出力315kW(428PS)/最大トルク543Nmを発揮する。0-100㎞/h加速は、驚きの3.6秒。これはボルボ史上最速の性能という。
「どれほど、じゃじゃ馬なのか?」と恐る恐る走り出してみれば、その走りはスムーズで静か。肩透かしするほど、ジェントルな振る舞いが強い。
これほど静かに感じる理由は、後輪モーター用に採用されたシリコンカーバイト(炭化ケイ素)ベースのインバーターの貢献が大きいようだ。さらに全長は4.3mを切る小さなボディなので、幅が狭い裏道もまったく苦にしない。245/40R20という大きく薄いホイール&タイヤを履いているのだが、そのサイズ感は少しも感じさせない。ハンドル操作も軽く、幅広い速度域でゆったりとした気分で走ることができる。
そんな一般道でのふるまいに反して、高速道路では史上最速のパワーを存分に味わうことができる。本線の合流や追い越し加速といった瞬発力が欲しいシーンでは、スーパースポーツ並みの強烈な加速感も堪能できてしまう。
重心も低く、さらに4WDということもあって、安定感も極めて優秀。高性能モデルでありがちな、どこかに飛んでゆくような不安は一切ない。美味しいところだけを上手に切り取った印象だ。
ただ、ワインディングでは、スポーツカーのような一体感は薄め。そう感じる理由は足回りで、EX30のアシは明らかに街乗り向けで、快適感は申し分ないのだが、少しフワフワしている印象が強めだ。
キャビン内装は、物理スイッチを極限まで減らし、中央の大型ディスプレイとサウンドバーに機能を集中。高い環境意識と革新性が融合した、次世代ボルボのデザイン哲学を体現している。
後席を倒せばフラットな大容量空間が出現する荷室。日常の買い物からレジャー用品の積載まで、幅広いシーンに対応可能。
「パワフル」さは、あくまでボーナス。その本質は良質のEVコミューター
街中から高速道路、ワインディングまで走らせてみれば、確かに「ボルボ史上最速」のパワーは恐るべきものだと感じる。ただ、その走りはスポーツカーとは明らかに異なる。
大半のシーンでは、ゆったりとした快適なEVとして使い、高速道路の合流や追い越しなどで、秘めるポテシャルをちょっとだけ使う。これが賢い楽しみ方だろう。
ただ、その一瞬のパワーの凄みは、FF仕様にプラス50万円するだけの価値は大いにある。また、雪の降る地域に居住するユーザーであれば、4WD仕様が欲しいというケースもいるだろう。そのときに、ボルボ史上最速の大パワーがボーナスとしてついてくると考えると良いのではないだろうか。
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