
フォルクスワーゲンの新型パサートの国内販売が始まった。パサートは、1973年に初代が誕生し、これまで3400万台以上が販売されてきたフォルクスワーゲンのビックモデルのひとつとなる。今回導入されたモデルは第9世代であり、従来までのセダンボディとは決別し、ステーションワゴン専用モデルとなっているのが特徴だ。
●文/写真:鈴木ケンイチ(月刊自家用車編集部)
地味なキャラクターと上手に決別。クラス上を感じることができる上級ワゴンに進化
刷新されたルックスそのもののも、新型パサートの大きな特徴。先代は直線基調のデザインであり、端正で落ち着いたイメージがあった。ところが、新型はなだらかに起伏する流麗なルーフラインを備えており、フロントデザインの目力も十分。エモーショナルで迫力あるルックスになっている。
車両寸法は全長4915×全幅1850×全高1500mmで、先代よりも全長が130mmも伸びている。5mにも届こうというサイズを得て車格もアップしているが、「端正だけど、おとなしくて、ちょっと地味」という過去のイメージはなく、より迫力があり、より色気のある、まさにプレミアムなステーションワゴンに変化している。
現行世代からワゴン専用モデルとなったパサート。全長4915×全幅1850×全高1500mmで先代よりも全長が130mm拡大。実用キャラが勝っていた先代と比べると上級志向が強まった印象だ。
利便性の高さも先代譲り。というか、より進化している。130mm伸びた全長のうち、50mmが後席まわりに使われ、残り80mmは荷室拡大に使われているという。実際に荷室容量は先代比プラス40Lの1920L。写真を見ると気づくが、後輪のホイールハウスの出っ張りもなく、荷室空間がスクエアなのも特徴だ。荷室内の使い勝手を向上させる、追加のバーや、トノカバーの下に小物を入れるためのハンモックのような器具も用意されている。リアルな使い勝手の良さを追求させるグッズが揃っているのも大きな魅力だろう。
パワートレーンは、ハイブリッド&プラグインハイブリッドに、ディーゼルターボを加えた3つを展開
今回の新発売に合わせて用意されたパワートレーンは3種類。基本といえるのが、1.5Lのガソリンターボエンジンをマイルドハイブリッド&FF駆動を組み合わせた「eTSI」。そのプラグインハイブリッド版が「eHybrid」。そして4WDの2Lディーゼルターボの「TDI 4MOTION」となる。プラグインハイブリッドが6速DSGで、それ以外は7速DSGを使う。また、それぞれに装備が異なるグレードが用意されている。「eTSI」には、エントリーの「eTSI Elegance Basic」、ミドルグレードの「eTSI Elegance」、スポーツグレードの「eTSI R-Line」。「eHybrid」には、「eHybird Elegance」と「eHybrid R-Line」。「TDI 4MOTION」には、「TDI 4MOTION Elegance」と「TDI 4MOTION R-Line」だ。
価格は、以下のようになる。
- eTSI Elegance Basic:524万8000円
- eTSI Elegance:553万円
- eTSI R-Line:576万4000円
- eHybird Elegance:655万9000円
- eHybrid R-Line:679万4000円
- TDI 4MOTION Elegance:622万4000円
- TDI 4MOTION R-Line:645万8000円
ちなみにプラグインハイブリッド車には55万円の補助金が用意されているため、補助金を使うとディーゼルターボ車の「TDI 4MOTION」よりも、実質価格は低くなる。
レザーがたっぷりと使われてた贅沢なキャビン空間。ダッシュ中央部には15インチのタッチディスプレイを設置。機能性に富んだインターフェイスも採用されている。シフトセレクターはフロアではなく、ステアリング右奥のコラムレバーで行うタイプ。
エントリーグレードでも上質な内装仕立て。プレミアム感にどっぷり浸れる
今回試乗したのは、プラグインハイブリッドとなる「eHybrid Elegance」だ。レザーシートパッケージ/DCC Proパッケージ/電動パノラマスライディングルーフがオプションで追加されていた。
そのインテリアは、スッキリとしながらもレザーがたっぷりと使われており、外観に負けない格の高さを感じることができた。さらに目を引くのは、15インチもの巨大なタッチディスプレイだ。まるで大型パソコンがそのままそこにあるかのようだ。カーナビゲーションの表示はiPhone風で、先代よりもずいぶんと使いやすくなっていると感じた。また、ギヤのシフトはハンドルのコラムに移っていたのだが、これが悪くなかった。ギヤ操作は、上下ではなく、ひねり込むように行う。これならば、ウインカーと間違えて、誤操作することはないだろう。
スポーティーセダンを彷彿させる、キビキビとしたハンドリング
街中を走り始めても、そのほとんどが電動走行で済んでしまう。走行用モーターは最高出力85kWに、最大トルク330Nmもあるのだ。リチウムイオン電池を25.7kWhも積んでいるから、一充電で最大142kmものBEV走行が可能だ。スムーズで力強く、そして静かな走行を楽しむことができる。
しかし、街中であっても、アクセルをひとたび思い切り奥まで踏み込むと、すぐに1.5Lの直列4気筒インタークーラーターボエンジンが目覚める。目覚めてしまえば、逆に、エンジンは歯切れのよいビートを轟かせる。意外に威勢がよくてびっくりする。
また、オプションで装備された、2バルブ独立制御式のアダプティブシャーシコントロール“DCC Proパッケージ”により、サスペンションをより締め上げることもできる。装着された255/40R20という大径タイヤとあわせて、操舵に対する反応と乗り心地は、かなりシャキっとしている。スポーティセダンのキャラクターを感じさせるハンドリングであったのだ。
実用性という点では、広く、使い勝手にこだわった荷室があり、とても高い実力を備えている。ここは歴代パサートの伝統もしっかりと受け継いでいる。ただ、最新モデルとなる今回の9代目は、従来の実用性一辺倒ではなく、より色気を感じさせる方にキャラクターを変更したようだ。流麗なフォルムに迫力ある顔つき、そしてキビキビとしたハンドリングは、これまでにない、新しい「パサート」と言えるものだった。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(フォルクスワーゲン)
ゴルフRの起源はゴルフⅣのR32。大パワー×4WDという構成が当時からの流れ 今年1月にマイナーチェンジを行ったゴルフ8(通称8.5)のトップモデルとなるゴルフRを、千葉県木更津市にあるポルシェエクス[…]
最新インフォテイメント「MIB4」を採用するなど、機能面を大きく強化 今回導入されるゴルフの改良新型は、第8世代の進化型という意味から「ゴルフ8.5」とも呼ばれている。マイナーチェンジということもあっ[…]
累計760万台を超える販売実績を持つ、VWのベストセラーモデル 「ティグアン」は、2007年の初代導入からこれまで、世界市場において760万台以上が販売されている。2019年以降は、フォルクスワーゲン[…]
エクステリア&インテリアをブラックで仕立てた”Black Style”も用意 「T-Roc」は2020年の導入当初より、クーペスタイルの洗練されたエクステリアデザインや、日本の道路環境でも扱いやすいコ[…]
新型「Golf R」&「Golf R Variant」のジャパンプレミアを実施 東京オートサロンのフォルクスワーゲンブースでは、“究極のパフォーマンスと実用性の両立”をコンセプトに開発されたRモデルの[…]
最新の関連記事(ワゴン)
最新インフォテイメント「MIB4」を採用するなど、機能面を大きく強化 今回導入されるゴルフの改良新型は、第8世代の進化型という意味から「ゴルフ8.5」とも呼ばれている。マイナーチェンジということもあっ[…]
レヴォーグ:モデル概要〈見た目はキープコンセプトながら、中身はまるで別物に進化〉 初代モデル(先代)の大成功を引き継いで登場した現行レヴォーグ(2代目)。エクステリアはキープコンセプト路線を採用したた[…]
艶やかなグロッシーブラックのアクセントが映える特別な1台 今回導入される特別仕様車「XC60 Dark Edition」は、V60やXC40で好評を博したDarkエクステリアを、XC60 B5 AWD[…]
システム最高出力190ps/最大トルク310Nmを発揮するガソリンハイブリッド車のエントリーモデル 2024年2月に国内導入された現行世代の5シリーズツーリングには、これまで48Vマイルドハイブリッド[…]
スバル自慢の正統派ステーションワゴン。2023年にはSUV色を強めたレイバックも追加 2020年秋にデビューした現行レヴォーグは、レガシィの系譜を受け継ぐステーションワゴン。走りの良さや充実の装備機能[…]
人気記事ランキング(全体)
ベース車両は日産のNV200バネット 日産「NV200バネット」は、2009年に登場した小型商用バン。全長4400mm、全幅1695mmという取り回しのしやすいサイズ感で、都市部でも扱いやすいことが大[…]
ラグジュアリーと機能性を融合した“移動する部屋” 「escort」は全長5380mm、全幅1920mm、全高2390mmと、堂々たるボディサイズを誇るハイエースキャンパー。乗車定員は4名、就寝定員も4[…]
ベース車両はダイハツのハイゼットカーゴ ハイゼットカーゴキャンパーの魅力は、軽自動車ならではの取り回しの良さと維持費の安さにある。コンパクトな車体は狭い路地や駐車場でも扱いやすく、女性ドライバーやシニ[…]
ソニーの最新技術を採用、夜間も強いニューモデル コムテックは、様々なタイプのドライブレコーダーをリリースしており、ハイエンドから普及機、ユニークなモデルなど、多様なユーザーの要望に対応する。また、ドラ[…]
大人3人+子ども3人が就寝可能な“住める空間” 最大の魅力は、その就寝スペースだ。ベッド展開をフルに活用すれば、大人3名と子ども3名が同時に就寝できる。チャイルドベッドは120×160cm、メインベッ[…]
最新の投稿記事(全体)
燃料でもマルチパスウェイ戦略を! トヨタがS耐富士24時間レースでで“液体水素”と“低炭素ガソリン”のダブル挑戦する根底にあるのは、「モビリティの未来は1つの道ではない」というトヨタのマルチパスウェイ[…]
スーパー耐久出場を目指すドライバーのための耐久レース入門カテゴリーの創出 S耐チャレンジは2025年1月の東京オートサロン2025のなかで行われたSTMOの公開理事会のなかで構想が発表された。その構想[…]
生産規模を約3300台に増やすことで、供給不足の早期解消を図る スズキの新型ジムニーノマドは、1月30日の発表からわずか4日間で約5万台もの受注を獲得。これは月間計画販売台数1200台の約41か月分に[…]
草木の緑がどんどん濃くなって、躍動感にあふれるこの時期。春から夏に向かうちょうどいい気候だからこそ、クルマ&ドライブ好きの方におすすめしたいのが峠道を通るドライブ。 峠道と聞くとどうしてもガンガン攻め[…]
現代技術と伝統が融合 ─ ハイブリッドで蘇るヘリテージ ポルシェ911スピリット70のベースとなるのは、高効率なパフォーマンスハイブリッドを搭載した現行の911カレラGTSカブリオレ。新開発の3.6リ[…]
- 1
- 2