
横浜ゴムの乗用車用スタッドレスタイヤ「iceGUARD(アイスガード)」の第8世代モデルとなる「iceGUARD 8 (アイスガード エイト)」は、従来の「アイスガード」シリーズが一貫して追求してきた氷上性能をさらに高めるため、新しい技術コンセプト「冬テック」を初めて採用している 。今回は、その真価を確かめるべく、実際にこのタイヤを装着した車両で試乗。その強みやポイントをお届けしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:横浜ゴム
氷上から雪上まで、新たなレベルの信頼感を獲得
スタッドレスタイヤを選ぶ上で、最も重要な性能の一つとなるのが氷上性能だ。
氷上性能を左右するのは、「水膜の除去」「氷面との密着性」「エッジによる引っ掻き効果」の3つの要素。各タイヤメーカーごとに様々な技術を投入しているが、目指すところはこの3つの要素の性能向上に他ならない。
だが実際にクルマを走らせる場所は、氷上だけではない。氷上以外の路面での走行が圧倒的に多く、さらに氷上性能と他の路面での性能は相反する部分も少なくない。
その相反する要素の壁を乗り越え、氷上性能と雪上、そしてドライ性能を高い次元で両立させたのが、前モデルのアイスガード7(iG70)だった。
そして、その後継モデルとして登場したのが、今回試乗したアイスガード8(iG80)になる。
これまで培ったアイスガードの特徴となる、マイクロ吸水バルーンやマイクロエッジスティック、ゴムの劣化を防ぐオレンジオイルS+といった設計を継承しつつ、アイスガード8では新たな素材「水膜バスター」が導入されている。
この水膜バスターは、まるでバラの花のような多層構造を持つ微細な粒子で、その花びら状の隙間が毛細管現象によって強力に水を吸い上げるのが特徴だ。
また、高密度化が実現されたことでブロック剛性も向上し、タイヤの接地面形状を安定させてくれる。これも氷上性能とそれ以外の路面での性能を高いレベルで両立させるための重要なポイントの一つといえるものだ。
トレッドパターンの設計も進化した。前モデルと比べて8%拡大した実接地面積は、氷上性能の向上に直結している。また、雪上やウェット性能を高めるために溝のレイアウトや容量を最適化し、「雪をしっかりと掴む」ラグ溝倒れ込み抑制サイプなどの新技術も採用されている。
横浜ゴムの社内試験によるレーダーチャートを見ると、前モデルのアイスガード7と比較して、最も性能が向上したのは氷上性能と静粛性になる。次いで、雪上、ドライ、ウェット、そして性能劣化抑制の各項目も向上している。
一方で、耐摩耗性と転がり抵抗(燃費性能)は、同等のレベルを維持。つまり、降雪地域のユーザーのメリットを最優先に考えて開発されたことを示している。
乗用車用スタッドレスタイヤの第8世代となるアイスガード8では、冬用タイヤの新技術コンセプト「冬テック」を初採用。冬の路面との「接触」を最大化する技術が用いられることで、氷上&雪上性能が大きく向上している。
氷上で感じる圧倒的な安心感
カローラハイブリッドを使った氷上試乗テストでは、社内計測値をわずかに上回る結果が示された。
テスト車両のABSとの相性も良好で、氷上でフルブレーキングしても、停止するまで安定した制動力を維持。氷盤旋回テストでは、アイスガード7が限界を迎えるのがおよそ19km/hだったのに対し、アイスガード8は約23km/hまで速度を上げることが可能だった。
アイスガード8は、従来品と比較して氷上制動性能が14%、氷上旋回性能が13%向上したというが、実車テストでもそれに近い結果を確認することができた。
あくまでも目視での確認だが、おおよそ社内計測値とも一致する結果になる。タイヤのグリップの限界が高くなった分、滑り始めた時の影響は少し大きく感じたが、コントロール性は非常に高く、限界が上がったことで速度制御にも余裕が生まれている。
雪上での短制動やスラロームにおいて、前後方向のグリップ力が印象的だ 。スリップアングルが深くなっても、加減速の効きが良い 。また、トラクションでフロントを引き込むようなFF車との相性が良いのも強みの部分。
雪上での短制動やスラローム走行も試したが、前後方向のグリップ力の良さが特に印象的。スリップアングルが深くなっても、加減速の効きが良く、トラクションで車体を前に引き込むようなFF車との相性の良さも際立っていた。
前モデルのアイスガード7のバランスの良さを引き継ぎながら、全方位に進化したというのが率直な感想。特にグリップ面の限界性能が高まったことで得られたコントロール面の余裕は魅力的。雪国で求められる信頼性の高い走りを実現できている。
今回の取材では試せなかったが、アイスガード8でさらに高まったという、ドライ&ウェット性能や静粛性の向上も、非降雪地域でスタッドレスタイヤを選ぶユーザーにとって注目すべき点と言えるだろう。
前モデルのアイスガード7もバランスの取れた性能を発揮したが、アイスガード8は、そのバランスを崩すことなく、氷上と雪上での性能をさらに引き上げている。最新モデルを名乗るにふさわしい安心感を確認することができたのだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニュース)
ポール・スミス氏が、MINIとポール・スミスの協業を示す大きな木箱の上に座っているイメージが公開された。木箱の中におさまる「MINI ポール・スミス・エディション」がジャパンモビリティショーで発表され[…]
新型「ティアナ」は新デザインでプレミアムキャラを強化 中国市場でプレミアムな快適性を提供する洗練されたセダンとして評価されている「ティアナ」は、新型ではイメージを一新。エクステリアは、よりシャープでエ[…]
新たな移動の価値を感じてもらうコンテンツを用意 アイシンブースでは「心を動かす移動の未来」をコンセプトとした、来場者に新たな移動の価値を感じてもらうコンテンツが展示される。 メインステージでは、未来か[…]
多岐にわたるコンテンツを、メインプログラムにも出展 「ジャパンモビリティショー2025」の日本自動車工業会主催のメインプログラムでは、体験型の未来モビリティが集結。 ホンダは、未来の移動からモビリティ[…]
ターボモデルが登場!人気を呼びそうだ SUBARUが10月16日に、人気のコンパクトSUV「REX(レックス)」に4WDモデルを追加することを発表した。「REX」はダイハツからのOEM供給モデルだが、[…]
最新の関連記事(カー用品)
低域から超高域まで情報量豊かに表現するハイレゾ音源再生にも対応したエントリーモデル パイオニアのカロッツェリア・カスタムフィットスピーカーは、純正スピーカーからの交換を前提としたカースピーカーで、車室[…]
フロントカメラ一体モデルをラインナップに追加 ドライブレコーダーの装着率増加に伴い、ミニバンやワゴン車など後方視界が狭い車種で、後方を確認しやすいデジタルミラー型のニーズが高まっている。パイオニアは、[…]
今年2月に開催された「Modulo THANKS DAY」の1カット。 モデューロと無限の熱き共演が実現 「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」は、ホンダアクセスが手掛けるホンダ純正の[…]
ドア開閉時の爪などによるひっかき傷や汚れを防止 クルマのドアを開閉する時、どんなに注意していても付いてしまうのが爪痕などのキズ。細かなキズでも汚れなどが入り込めば目立ってくる。そうなれば、超極細コンパ[…]
便利な機能を持った、実用的なカーカーバー 今回紹介するのは、車種別の便利なカー用品を多数リリースしている、クラフトワークスのカーカバーだ。同社の特長としては、車種別にピッタリとフィットするように設計さ[…]
人気記事ランキング(全体)
なぜ消えた?排気温センサー激減のナゾ 排気温度センサーは、触媒の温度を検知し、触媒が危険な高温に達したときに排気温度警告灯を点灯させるためのセンサーだ。このセンサーは、いつのまにか触媒マフラーから消滅[…]
自動車整備の現場では、かなり昔から利用されているリペア法 金属パーツの補修材として整備現場ではかなり昔から、アルミ粉を配合したパテ状の2液混合型エポキシ系補修材が利用されている。 最も名が通っているの[…]
積載性が優れる“第三の居場所”をより快適な車中泊仕様にコンバージョン ロードセレクトは新潟県新潟市に本社を構えるキャンピングカーや福祉車両を製造•販売している会社。オリジナルキャンピングカーはロードセ[…]
手軽に楽しめる“ライト”な車中泊モデル キャンピングカーというと大げさに感じるかもしれないが、「ウォームスライト」はそのイメージを軽やかに覆す。ベースとなるのはスズキ・エブリイ。街乗りもできるコンパク[…]
エアコン使用は燃費に確実な影響を与える 真夏の炎天下、エアコンを使わずに運転するのは現実的ではない。しかし、エアコンを稼働させると燃料消費が増えるのは避けられない。環境省のデータによれば、エアコン使用[…]
最新の投稿記事(全体)
ポール・スミス氏が、MINIとポール・スミスの協業を示す大きな木箱の上に座っているイメージが公開された。木箱の中におさまる「MINI ポール・スミス・エディション」がジャパンモビリティショーで発表され[…]
24C0239_017 サーキットを速く走るための、特別なチューニングがプラス 「Mercedes-AMG GT 63 PRO 4MATIC+ Coupé」は、サーキットでのパフォーマンスを追求したい[…]
低域から超高域まで情報量豊かに表現するハイレゾ音源再生にも対応したエントリーモデル パイオニアのカロッツェリア・カスタムフィットスピーカーは、純正スピーカーからの交換を前提としたカースピーカーで、車室[…]
車中泊を安心して、かつ快適に楽しみたい方におすすめのRVパーク 日本RV協会が推し進めている「RVパーク」とは「より安全・安心・快適なくるま旅」をキャンピングカーなどで自動車旅行を楽しんでいるユーザー[…]
新型「ティアナ」は新デザインでプレミアムキャラを強化 中国市場でプレミアムな快適性を提供する洗練されたセダンとして評価されている「ティアナ」は、新型ではイメージを一新。エクステリアは、よりシャープでエ[…]
- 1
- 2