「ガソリンの無駄ですね」エアコンを使うと燃費に影響。実は温度を上げても「無駄」だった…けど黄金バランスの設定温度あります!│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「ガソリンの無駄ですね」エアコンを使うと燃費に影響。実は温度を上げても「無駄」だった…けど黄金バランスの設定温度あります!

「ガソリンの無駄ですね」エアコンを使うと燃費に影響。実は温度を上げても「無駄」だった…けど黄金バランスの設定温度あります!

ドライブで欠かせないカーエアコン。快適さを保つ一方で、燃費が悪化することは多くのドライバーが感じているだろう。特にガソリン価格が高騰している昨今、エアコンをどう使うかは財布にも直結する問題だ。では、車内を涼しく保ちながら燃費への影響を最小限に抑える“最適な設定”とは何か。エアコンの仕組みから温度設定、風の向け方までを改めて見直してみたい。

●文:月刊自家用車編集部

エアコン使用は燃費に確実な影響を与える

真夏の炎天下、エアコンを使わずに運転するのは現実的ではない。しかし、エアコンを稼働させると燃料消費が増えるのは避けられない。環境省のデータによれば、エアコン使用時の燃料消費量はおよそ12%悪化するとされている。つまり、10km/L走る車なら8.8km/Lに落ちる計算になる。

エアコンを使用すると燃費は確実に悪化する。仮に設定温度を上げても、燃費の改善は限定的だ。

この数字は小さく見えるかもしれないが、長距離ドライブや通勤での使用を考えると決して軽視できない差だ。エアコンを使うこと自体が悪ではないが、少しの工夫でその影響を減らすことはできる。まずはエアコンの仕組みを理解することから始めたい。

エアコンの“燃費悪化”を引き起こす犯人はコンプレッサー

カーエアコンの構成部品は、コンプレッサー、コンデンサー、エキスパンションバルブ、エバポレーター、レシーバードライヤーの5つから成る。このうち燃費悪化の原因となるのがコンプレッサーだ。

A/Cボタン

冷媒と呼ばれる液体を圧縮して温度を変化させる役割を担うコンプレッサーは、作動時にエンジンから動力を奪う。エンジンに負荷がかかることでガソリン消費が増えるという仕組みだ。真夏のようにフル稼働が続く状況では、燃料消費量が大きく膨らむのも当然といえる。

つまり、カーエアコンが燃費に影響を与える根本要因は「エンジンがエアコンを動かす」という構造そのものにある。電動コンプレッサーを採用したハイブリッド車やEVでは影響が軽減されるが、ガソリン車の場合は避けられない宿命とも言える。

設定温度を上げても、燃費への影響は意外と小さい

「少しでも燃費を良くするために、温度を高めに設定している」という人も多いだろう。しかし、実際のところこれは大きな改善にはつながらない。家庭用エアコンのように温度設定に比例して消費エネルギーが増減するわけではないからだ。

カーエアコンを操作するイメージ画像。

カーエアコンは、冷媒を高圧・低圧で循環させ、その際に発生する熱の吸収と放出で温度をコントロールしている。つまり、設定温度を上げてもコンプレッサーは稼働し続けるため、燃費の差はごくわずかにとどまる。

燃費を優先するあまりに暑さを我慢するのは非効率であり、熱中症などのリスクにもつながる。むしろ、エアコンの仕組みを理解し、風の流れや車内環境を整えることのほうが燃費改善に効果的だ。

適正温度は「25℃」。欧州車はやや低めの傾向に

自動車部品メーカーの調査によると、日本車の適正なエアコン設定温度は25℃前後とされる。欧州車の場合は22℃程度が基準だ。これは車体の断熱性やエアコンシステムの特性の違いによるもので、どちらも車内快適性と燃費のバランスが最も良いとされる温度域だ。

カーエアコンの適正温度は、日本車では「25℃」、欧州車では「22℃」とされている

もちろん、体感温度は個人差があるため一概には言えないが、目安として25℃を中心に調整するのが現実的だ。外気温や日射の強さに応じて1〜2℃単位で調整すれば、快適さを損なわずに燃費への影響を抑えられる。

吹き出し口の角度で“冷え方”が変わる

多くのドライバーが見落としがちなのが、吹き出し口の向きだ。エアコンの風は単に冷気を送るだけでなく、効率的な空気循環を生み出す役割を持つ。

後席が暑く感じるのは、冷気が前方で滞留してしまうため。中央の吹き出し口をやや上向きかつ後席方向に向けることで、車内全体に冷気が広がりやすくなる。逆にサイドの吹き出し口は窓ガラスに沿って流れるため、効率が下がりやすい。

カーエアコンの送風口。

風量も重要で、最初は強風で一気に冷やし、その後に「AUTO」や中程度に落とすのが理想的だ。こうすることでコンプレッサーの負荷を抑えつつ、車内温度を安定させることができる。

直射日光を遮る工夫が燃費改善の第一歩

エアコンの効率を高めるには、冷やす前の環境づくりも重要だ。直射日光で熱せられた車内は、短時間で50℃を超えることも珍しくない。その状態から冷やそうとすれば、エアコンは全力で稼働し、燃料を大量に消費する。

駐車時はサンシェードを使用し、可能なら日陰に停める。乗車直後はまず窓を全開にして熱気を逃がすだけでも、車内温度は急速に下がる。その後にエアコンを作動させれば、コンプレッサーの負担は大幅に軽減される。

わずかな工夫だが、こうした“前準備”が燃費改善に大きく貢献する。

サンシェードを使用することで車内が高温なることを防ぐ。

エアコンを切りすぎるのは逆効果になることも

燃費を気にして頻繁にエアコンをオフにするドライバーもいるが、これは逆効果になりかねない。エアコンを停止すると湿気がこもり、ガラスが曇りやすくなる。視界が悪化すれば安全運転にも支障をきたす。

カーエアコン温度調整のイメージ

さらに、内部の冷媒やコンプレッサーには定期的な潤滑が必要で、使わない期間が長いと劣化や故障の原因にもなる。燃費を優先するあまり安全やメカニズムを犠牲にするのは本末転倒だ。

燃費と快適性、そして安全性のバランスを取る

エアコンを上手に使うには、「節約」ではなく「最適化」という考え方が重要になる。温度や風量、吹き出し方向、日差し対策といった複数の要素をバランスよく整えることで、燃費を抑えながら快適な車内環境を維持できる。

車種によってはエコモードを搭載しているので、積極的に利用してみよう。

車内が快適であれば、ドライバーの集中力も保たれ、結果的に安全運転にもつながる。エアコンは単なる快適装備ではなく、安全装備のひとつと考えるべきだ。

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