GT-Rをも凌駕したスペック! 峠とラリーを席巻した「第1世代ランエボ」進化の軌跡│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

GT-Rをも凌駕したスペック! 峠とラリーを席巻した「第1世代ランエボ」進化の軌跡

GT-Rをも凌駕したスペック! 峠とラリーを席巻した「第1世代ランエボ」進化の軌跡

三菱のスポーツモデルとして思い浮かべる車種はいくつかあると思いますが、その中でも「ランサーエボリューション」を外すことはできないでしょう。ラリーに力を入れていた三菱が培ってきた技術の最大のアピールの場であるWRCで多くの勝利を挙げて、三菱の技術力の高さを印象づけることに大きく貢献したモデルです。「ランサーエボリューション」のシリーズは、初代のⅠから最後のⅩまで、24年の間進化を続けてきましたが、ここでは、その中で第一世代と呼ばれるⅠ〜Ⅲにスポットをあてて掘り下げていきたいと思います。

●文:往機人(月刊自家用車編集部)

軽量+ハイパワー+4駆という最強の組み合わせが爆誕

三菱の「ランサーエボリューション」が誕生したのは1992年です。三菱は1967年に初めて国際的なラリー競技に参戦したのを皮切りに、その協議の場を“走る”“曲がる”“止まる”というクルマが本来持つ基本性能を高める絶好の機会ととらえて積極的に参戦をおこなってきました。1973年にはラリーの最高峰としてWRC(世界ラリー選手権)がスタートし、三菱は「ランサー 1600GSR」を投入して1〜4位を独占するという偉業を達成。1987年にはWRCのトップカテゴリーが、専用マシンによる“グループB”から、市販車をベースとする“グループA”に変更となります。

競技でも、市販車が本来持つポテンシャルが重要だと考えていた三菱はこの転換を絶好の機会ととらえて、この年にデビューした「ギャラン VR-4」を投入して、タイトルを獲りに行きました。その結果、1989〜1992シーズンでメジャータイトルの総合優勝を果たします。そのWRCへの参戦で培った走りの技術を、そっくりそのまま軽量なランサー(4代目)の車体に盛り込んで、一気に戦闘力の倍増を図ったのが、初代の「ランサーエボリューション」というわけです。初代「ランサーエボリューション」の登場は自動車のマーケットやラリー界にも大きなインパクトを与え、ホモロゲーション獲得のための2500台という販売台数を3日で完売しました。そのため急遽2500台の追加生産をおこなったというエピソードもあります。

そうして好評を得たことで三菱は「ランサーエボリューション」のシリーズ化を決め、この4代目ランサーをベースとして、続く「エボⅡ」、「エボⅢ」を発売することになります。この「エボⅠ」〜「エボⅢ」までが“第1世代”と呼ばれています。

ランサーエボリューションⅠの特徴と戦績

先述のように「ランサーエボリューションⅠ」は、「ギャラン VR-4(E39A型)」の動力性能とフルタイム4輪駆動システムによる走行性能を受け継いだモデルです。エンジンは強力なパワーを発揮する「4G63型」ターボエンジン(インタークーラー付き)が搭載され、パワーは250psまで引き上げられています。サスペンションは前がマクファーソンストラット式を引き継ぎ、トラクション性能に大きく影響する後ろは、「VR-4」のダブルウイッシュボーン式の進化版と言えるマルチリンク式を採用。

小型のボディによって重量は競技ベースの「RS」グレードで1170㎏と軽量で、パワーウェイトレシオ4.68㎏/psとこの当時トップの数値を誇りました。ベースとなる「ランサー 1800GSR」との外観上の違いはあまり多くなく、遠目ではリヤの大型スポイラーが目印となりますが、冷却能力に応じたボンネットフードのダクトやフロントバンパーの開口部、大径ラリータイヤを想定して拡大されたホイールアーチなど、細かい変更点は多岐にわたっています。WRCへは翌年の1993年よりフル参戦しています。

当初はフロントヘビーの重量配分によるハンドリング矯正に苦戦しましたが、リヤサスペンションや前後スタビライザー、そして4WDシステムなどに徹底的な見直しを図り、充分に戦える状態に仕上げていきました。「エボⅠ」での最高位は2位となっています。

ランサーエボリューションⅠ (1992年)

フロントバンパー中央部の開口部から大きなインタークーラーが見える。GSRにはキーレスエントリーなど多くの快適装備も付き、ファミリーカーとして十分な居住性も備わっていた。

GSRエボリューションは、ミシュランXGT-Vと専用アルミホイールを標準装備。

快適装備がほぼ省略されるRSに対し、GSRはオートエアコンやカセット+6スピーカーのオーディオ、パワーウインドウなど快適装備が充
実。またオプションでオーディオ下に3連メ-ター(油圧、電圧、ブースト)を追加することができた。ステアリングホイールはMOMO社製本革巻き3本ステアリングを採用。

人工皮革「ソアベール」を採用したRECARO社製のフロントシートが採用される。

ギャランVR-4用のインタークーラーターボエンジンを大幅に手直しした4G63型。最高出力250psを誇った。

ランサーエボリューションⅡの特徴と戦績

1994年に次期モデルの「エボⅡ」が発売されます。位置付け的には初代の実戦投入で洗い出された改善点を無くすために改良がおこなわれた正常進化版というものです。外観上の変更点は少なく、フロントバンパー下のリップスポイラーと、リヤのスポイラー下に「リアウィッカー」という整流用のスポイラーが追加された程度です。

主な改善点は足まわりで、サスペンションの基部となるメンバーから見直され、サスペンションアームは適正化と強度アップが図られています。それとともにホイールベースが10mm、トレッドもフロントが15mm、リヤが10mm拡大されました。ホイールは15インチのままですが、タイヤが195/55R15から205/60R15に変わり、幅と外径が拡大しています。エンジンは変わらず「4G63型」インタークーラー付きターボのままですが、吸排気経路とブースト圧の見直しで10ps出力が向上しています。

競技では、これまで研究開発を進めてきた“ACD(電子制御アクティブディファレンシャルシステム)”を投入。この機構の投入が功を奏して、それまでになく良好なハンドリング特性が得られたことで、APRC最終戦の「タイラリー」で優勝を果たしました。肝心のWRCではその進化を活かせず、最高位はⅠと同様の2位となっています。

ランサーエボリューションⅡ(1994年)

エボ1とほぼ外観は変わらないが、見えない部分で大きく進化している。外観的には、フロントバンパー下に小さなリップスポイラーが追加されている。

象徴的なリアウイングは、ウィッカーが追加され、高速域での安定性が高められている。

運転席まわりも大きな変更が施されていないが、メーターパネルの視認性がアップされている。

フロントシートは、エボⅠ同様レカロシートが装備されるが、ヘッドレスト一体式のフルバケットシートとなり、さらにサポート性能を向上。

ランサーエボリューションⅢの特徴と戦績

1995年には4代目ランサーベースの第1世代最後となる「エボⅢ」が登場します。このⅢでは、主に競技での戦闘力向上と安定性の向上が図られました。外観では、左右のダクトが大きく拡大され、下部にはブレーキ冷却導入用のダクトを備えたフロントバンパーと、後ろから見て逆台形にすることで水平翼の拡大を図ったリヤスポイラーに違いが見られます。

エンジンには出力向上の手が入り、大径タービンの採用と圧縮比のアップがおこなわれています。それに加えてインタークーラーを大型化することで出力が10ps向上して270psとなりました。そして、“アンチラグ・システム”と呼ばれる、ターボラグの解消をおこなうシステムが導入されています。これはターボの大径化によって増したアクセルレスポンスの遅れを2次エアの供給で解消するというもので、細かいアクセルワークを多用するラリーでの戦闘力アップが目的の装置です。一般の用途では過剰な機構のため、市販状態ではほぼ作動しないという大胆な採用状態は、この時代ならではと言えるでしょう。

そんな大胆な手法を含む市販状態でのブラッシュアップによって、WRCでは第2戦スウェディッシュラリーで念願となる「ランサーエボリューション」として初のWRC総合優勝を1-2フィニッシュで獲得し、強さをアピールしました。

ランサーエボリューションⅢ(1995年)

インタークーラーやラジエーターに、より多くの走行風を当てるため、バンパー中央と左右の開口部が極限まで広げられ大型化されたエボ3。さらにバンパー下部が前方に大きく張り出し、空力性能(ダウンフォース)を高めている。エボ2までの「ほっそりした顔」から「いかつい顔」に大きく変更された。

大型化されたリアウイングは、ラリーの高速ステージやジャンプ後の着地姿勢を安定させるため、強力なダウンフォースを発生させる設計だ。

これまで標準的な3本スポークだったが、エボ3から握りが太く、センターパッドのデザインが洗練された新世代のMOMO製本革巻きステアリングに変更された。

フロントシートは、エボ2同様レカロ製一体型フルバケットシートが奢られる。

ストリートでも強さを発揮

「ランサーエボリューション」はこのようにWRCでの勝利のために仕立てられたモデルですが、その戦闘力の高さはストリートの舞台でも大いに発揮され、国産車の速い車のトップグループに一気に食い込むようになります。

250ps以上の大パワーを発揮して、軽量の車体で4輪駆動による強力なトラクションを備えた「ランエボ」は、格上とされていた2000cc以上のターボマシンたちにとっては驚異の存在です。パワーでは排気量に勝る格上マシンが上ですが、車両重量を加味すると、その当時最強の一角だった「スカイラインGT-R(BNR32型)」を上回るスペックでした。

そのためゼロ発進の加速ではトップレベルのパフォーマンスを発揮して、コーナーが続く山道では登りも下りも強さを発揮するという、オールマイティの強さを見せていました。唯一の弱点は、ホイールサイズの限界によるブレーキ性能の低さで、これは第2世代の「エボⅤ」まで抱える問題となります。

1996年、マキネンを擁するランエボ3は、独走でこの年のドライバーズチャンピオンとなり、三菱に初のWRCタイトルをもたらした。

フロントに2ポットキャリバー・15インチのVディスクを採用することで制動力をアップ。しかし、ホイールサイズの限界もあり、ブレーキ性能の脆弱さは否めなかった。

ランサーエボリューション第1世代主要諸元

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