
●文/写真:鈴木ケンイチ
アウディ史上最もパワフルな市販モデル
「e-tron」シリーズの頂点に君臨する「e-tron GT」は、アウディとポルシェが共同開発したプラットフォームを採用する4ドアクーペのグランツーリスモ。
2025年8月に実施された改良では、一充電走行距離は従来比で約20%向上し最長648kmに到達。最高出力も680kW(約912馬力)とするなど、アウディ史上最もパワフルな市販モデルへと変貌を遂げている。
今回試乗したのは、高性能モデルになる「RS e-tron GT performance」(2469万円)で、4輪操舵のオールホイールステアリングやアクティブサスペンション、セラミックブレーキなど、490万円相当のオプションが贅沢に盛り込まれた、正真正銘のアウディ最強仕様であった。
実車を前にしてまず驚かされるのは、全高1380mmという低く流麗なシルエットだ。
105kWhもの巨大な駆動用バッテリーを搭載しながら、これほどの低重心フォルムを維持できる点に、電気自動車専用設計の強みを感じる。後席の頭上空間こそタイトだが、荷室は実用的な容量を確保。乗降時にはアクティブサスペンションが車高を最大77mm自動で持ち上げ、スマートなエスコートを見せてくれる。
インテリアは、アウディらしいシャープで洗練された空気感に包まれていて、使われている素材も、ある意味、アウディらしいもの。
本革のスエードのように見えるのは、再生ポリエステルなどを使うDinamica(ダイナミカ)で、ファブリックも同じく再生素材となるCascade(カスケード)。カーペットやフロアマットも、リサイクルされたナイロン繊維素材を使っているなど、非常に環境意識の高い内容となっている。
大径極薄タイヤを意識させない、一級品の乗り心地とハンドリングフィール
そんな「RS e-tron GT performance」で街に出てみる。ゆっくりと走ってみれば、EVらしく静かそのもの。21インチ、フロント35扁平、リヤ30扁平という極薄タイヤでも、突き上げはマイルド。フラットな姿勢を保っており、乗り心地は良好だ。
低速と高速で位相を変化させる4輪操舵のオールホイールステアリングがあるためか、全長4995×全幅1965㎜、ホイールベース2900㎜の大柄さでも、取り扱いが苦にならない。最小回転半径は、ノーマルで5.5m、オールホイールステアリングだと5.2mという数値は優秀だ。超ハイパフォーマンスカーでありながらも、気難しいことはなく、運転はしやすい。これであれば、GT(グランツーリスモ)というように、高速道路でのロングランにも不安はないだろう。
ハンドリングは非常に素晴らしいものであった。ステアリングの手応えは軽めではあるけれど、しっかりとタイヤのグリップ感を伝えてくれる。直進安定性に優れる一方で、微小な舵角にも車体が正確に反応する。ステアリングからグリップ感が伝わってくれるので、ゆっくりと走っていても、4輪のタイヤにかかる荷重がわかる。自らの運転スキルが向上したかのような錯覚さえ覚える。
強大なパワーを完全に支配する、卓越したシャシー性能
ステアリングには「RS」と「BOOST」という2つの赤いボタンと、パドルシフトが備わっている。「RS」は、パワートレインの特性を好みに設定して、呼び出すためのもの。パワートレーンの特性は、効率優先のエフィシェンーと、コンフォート、ダイナミック、そしてサーキット走行向けのRS専用モードが用意されている。
モードを切り替えると、明らかなパワー感の差だけでなく、ダイナミック以上では、アクセル操作に伴ってエンジン音のような「ヒューン」という特殊効果音がプラスされる。また、「BOOST」ボタンを押すと、10秒間のプラス70kW(約94馬力)のパワーアップが行われる。そして、パドルシフトは3段階に回生ブレーキの強さを変えることができるというものだ。
ちなみに、「RS e-tron GT performance」のダイナミックモードのシステム最高出力は550kW(約738馬力)。「ブースト」ボタンを押すと620kW(約831馬力)、サーキットなどで使うローンチモードでは680kW(約912馬力)となる。
高速道路の合流で、その真価を試したところ、ブーストを起動し、アクセルを深く踏み込むと衝撃的なGが全身を襲った。かつてリッターバイクで味わった0-100km/h加速3秒台の世界を超えていて、公称2.5秒という数字は、もはや物理的な恐怖を感じるレベルだ。
しかし、これほどのパワーを解放しても車体は微塵も乱れず、シャシーがパワーを完全に支配下に置いている。エレガントな走りと、苛烈な走りの両方を実現することができるシャシーの実力の高さも驚くべき部分だろう。
「RS e-tron GT performance」は、環境を大切にしたEVという部分と、高級なグランツーリスモの快適さ、運転の楽しさ、そしてアウディ史上最強のパワーという、いくつもの顔が奇跡のようにバランスしたクルマであった。さすが「e-tron」シリーズのフラッグシップ、値段も納得の走りだったのだ。
「RS e-tron GT performance」 主要諸元
- 寸法:全長4995×全幅1965×全高1380㎜。
- 車両重量:230㎏
- 駆動方式:4WD
- システム最高出力:680kW
- システム最大トルク:1027Nm
- 搭載バッテリー:105kWh
- 一充電走行距離:631km(WLTCモード)
- 交流電力量消費率:179Wh/km(WLTCモード)
- 価格:2469万円
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