
「運転の愉しさ」を磨き上げて登場した新型エルグランド(車両本体価格689万7000~757万9000円)。日産の上級カテゴリーを支えるフラッグシップとして、先進技術を結集させた一台だ。ショーファーの快適性とドライバーズカーの走りを両立した、最高峰ミニバンの実力をお教えしよう。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
二つの価値を高次元で両立させた最上級ミニバン
現在の日産の国内ラインアップにおいて、上級クラスを担うのはスカイラインとエルグランドのみ。セダン人気が落ち着いた今、実質的にはエルグランドが一手で日産の上級クラス市場を支えている格好だ。
そんな背景もあって、16年ぶりに満を持して登場した新型エルグランドは、日産のフラッグシップ戦略における新たな幕開けを象徴する一台としての役割を期待されている。
そんな新型エルグランドの見どころは、「最上級ミニバン」というだけではない。新世代e-POWERをはじめ、前後独立モーターで制御する「e-4ORCE」、さらに電子制御ダンパーまで投入されるなど、日産が誇る最新技術が惜しみなく注ぎ込まれていることも挙げられる。
期待される役割も多様で、VIPを送迎するショーファーカーとしての資質はもちろん、その対極にある「ドライバーズカー」としての魅力も期待される。一見矛盾しそうなこの二つの価値を、高次元で両立させている点こそ、新型の最大のハイライトだ。
堂々とした大柄なボディでありながら、伸びやかなキャラクターラインによってスマートな印象もプラス。日産の最上級モデルに相応しい貫禄と新世代の先進感を力強くアピールするモデルに進化を遂げている。
主要諸元(G e-4ORCE)
●全長×全幅×全高:4995×1895×1975mm ●ホイールベース:3000mm ●車両重量:2440kg ●乗車定員:5名 ●パワーユニット:1498cc直列3気筒DOHC(140ps/23.2kg-m)+前後モーター(フロント:151kW/330Nm、リヤ:100kW/195Nm) ●駆動方式:電気式4WD ●WLTCモード総合燃費:16.8km/L ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)/ベンチレーテッドディスク(R) ●サスペンション:ストラット式(F)/マルチリンク式(R) ●タイヤ:235/60R18
グリルパターンとシームレスにつながる多眼LEDヘッドライトの精巧な仕上がり。繊細なドット状グラフィックが立体的に輝き、夜間はもちろん昼間でも一目で新型と分かる個性的かつシャープな目元も印象的だ。
先代は床下格納式だった3列目シートは、オーソドックスな左右跳ね上げ式に変更。座面が厚めゆえに格納時には出っ張り感が強めだが、床面が低くなったこともあって積載性が向上している。
過激さよりも扱いやすさを極めた、フラッグシップらしい走り
パワートレーンはe-POWER専用設定。発電用の1.5Lターボに主要ユニットを統合した「5 in 1」を組み合わせ、熱効率向上とコスパの最適化を図ったシステムだ。
2.4tを超える巨体ゆえ、スポーツモデルのような過激な加速感こそないが、ラフなアクセルワークを行っても揺すり返しはなく、乗員全員が自然体でいられる扱いやすさに仕上がっている。
走行モードを変えてもこの安心感のある基本特性はブレない。洗練されている反面、「スポーツ」モードではもう少し威勢の良さや遊び心があっても面白かった、と感じるほどマイルドだ。
また驚いたのは静粛性の部分で、新たに開発搭載されたアクティブ・ノイズ・コントロールの威力は絶大。エンジン音からロードノイズまで見事に遮断している。これにより期待を超える高い静粛性を実現している。
ドライバーの意図に素直に応える完成度の高いフットワーク。コーナリング時も安定感が高いなど制御の秀逸さも印象的だ。
リニアなステアリング反応と電子制御サスにより、背の高いミニバン特有のグラつき感は皆無。ドライバーズミニバンとして、存分に楽しめるポテンシャルを感じることができる。
発電専用に最適化された1.5L直列3気筒ターボエンジンと、主要ユニットをコンパクトに統合した「5 in 1」システムを搭載。高熱効率と優れた省燃費性能を兼ね備えた新世代パワートレーンだ。
ミニバンの弱点を克服する、ドライバー志向の足回りが印象的
フットワークは予想以上にドライバー志向が強め。といってもマニア向けの硬さではなく、高速巡航や長距離ドライブで「クルマと対話しながら走れる」信頼感と走りの質感を追求したものだ。
シャシーにリニアソレノイドバルブ採用の電子制御サスを搭載したこともあって、ピッチやロールを抑えたフラットな乗り味で、快適重視の「コンフォート」を選んでも、不快なぐらつきとは無縁。セダンやSUVから乗り換えても、重く背の高いミニバン特有のハンデをまったく感じさせない。
それでいて、同乗者へのもてなしにも抜かりはない。特にサードシートの出来栄えは予想以上で、座り心地と乗り心地は「妥協させられた感」がなく、寛いで過ごせるレベルにある。
ほかのカテゴリーからの乗り換えでも違和感のない走り心地を実現した上で、ショーファー用途にも確かな快適性で応える新型エルグランド。内装や装備を含め、乗る人すべてが「最上級」を実感できる完成度の高い一台に仕上がっている。
ライバルがますます後席主体のショーファーカーへと傾倒していく中で、あえて「運転する愉しさ」と「全席対等なフラット感」にこだわり抜いた姿勢には、日産のクルマづくりへの明確な意地と美学を感じる。
16年という長い沈黙を破って生まれたこの走りは、ドライバーズミニバンという独自の境地を開拓し、日本の高級ミニバン市場に新たな一石を投じる存在になるはずだ。
大型の統合型横長ディスプレイが広がる先進的なコックピット。余計なスイッチを減らしたクリーンな水平基調デザインにより、視界が広く開放的で、ドライバーが運転に集中できる上質な空間を実現している。
体圧を適切に分散するゼログラビティ構造を採用したフロントシート。長時間のドライブでも疲労が少なく、包み込まれるようなホールド感と上質な革素材の肌触りが楽しめる。
2列目シートは、大型アームレストと電動オットマンを備えたキャプテンシートを採用。頭部を優しく包むヘッドレストやホールド感あるクッションで快適な移動空間を満喫可能だ。
分厚いクッションとしっかりとした座り心地を備えた3列目シートは、予想以上に膝元や頭上に余裕がある。長時間の移動でも快適に過ごせるクオリティだ。
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