
Katomotorが創業70周年を記念してリリースしたハイエースベースのキャンピングカー「パブロ」は、芸術と旅を融合させた特別な一台である。外装は鮮烈なアートが施され、内装はギャラリーのような空間を演出。新開発のスライド式二段ベッドや雪国仕様の断熱構造を備え、実用性も兼備する。世界限定5台という希少性と唯一無二の存在感に迫る。
●文/写真:月刊自家用車編集部
老舗ビルダーが本気を注いだ、世界限定5台の特別なキャンピングカー
新潟県燕市を拠点とする老舗キャンピングカービルダー「Katomotor」は、1956年の創業以来、自動車やバイクを扱い、1990年代からは本格的にキャンピングカーの製造に取り組んできた。その姿勢は一貫して「手仕事の品質」と「日本の生活環境に即した設計」を重視するものであり、雪国の厳しい環境に耐えうる断熱性や、職人による堅牢な家具造作など、他のビルダーとは一線を画す独自のスタイルを築き上げてきた。
そんなKatomotorが2025年に発表したのが、ハイエースをベースにしたキャンピングカー「パブロ」である。ネーミングの由来はもちろん20世紀を代表する芸術家パブロ・ピカソであり、彼の自由な発想と革新的な表現にインスピレーションを受けた特別記念モデルだ。
パブロ・ピカソとKatomotorがコラボレーションしたハイエースベースのバンコンが「パプロ」だ。ハイエースワゴン GLの車体内外にピカソのアートペイントを施し、商用車らしからぬ鮮烈なイメージを与える1台に仕上がっている。
外装デザイン は「 走るキャンバス」
「パブロ」の最大の特徴は外装デザインにある。一般的なキャンピングカーが落ち着いた単色やシンプルなデカールで仕上げられるのに対し、パブロは大胆な色彩と線描によって全体を包み込む。直線と曲線が交錯し、鮮烈な色が踊るその車体は、まるで移動するアート作品。道路を走る姿は人々の視線を惹きつけ、「キャンピングカー=地味で実用的」という既成概念を覆す存在感を放つだろう。
しかしこの派手さは単なる装飾ではない。Katomotorが手掛ける以上、実用性と耐久性を兼ね備えていることは必然であり、雪国でも安心して旅ができる断熱構造や防錆加工が施され、美しさと機能性が見事に両立している点が評価できる。
大胆にペイントされたピカソの鳩と手をモチーフとするボディサイドの印象は鮮烈。ルーフにピカソのサインが控えめに付されているのもアーティスティックだ。
アートと快適性が融合したインテリア
外観が「走るキャンバス」であるならば、内装はまさに「移動するギャラリー」である。シートやベッド、壁面に至るまで、ピカソの代表作をモチーフにしたパターンやカラーリングが散りばめられ、乗り込んだ瞬間から特別な空間に包まれる。通常のキャンピングカーにおける内装デザインは木目やシンプルなファブリックが主流であるが、パブロでは居住空間そのものが芸術鑑賞の場へと変貌している。
機能面で注目すべきは、新開発のスライド式二段ベッド。限られた室内スペースを有効に使うために考案されたこの機構は、使わないときにはスリムに収納でき、就寝時にはしっかりとした寝床を提供する。乗車定員は7名、就寝定員は3名であり、家族や少人数のグループでの旅に最適なバランスだ。また、ハイルーフ仕様のチップトップを採用するため、室内高は1640mmと居住性も高い。
また、家具はすべて自社工房で製作されており、ナラ材の突板を用いて木の温もりを活かした仕上がりはアート性の高い内装に調和しつつも、使い勝手や耐久性を失っていない。細部に至るまで職人の手による調整が加えられており、量産車にはない質感を体感できる。
新開発のスライド式二段ベッドは、通常時はソファーとして使用し、就寝時は文字通り二段目をスライドして展開。下段のソファーは背もたれを外して通路を塞ぐように設置すれば大人2名で使えるベッドになる。冷凍冷蔵庫のドアにもピカソのアートが備わる。
独自の断熱・防音施工によって、夏は涼しく、冬は暖かい
ベース車両にはトヨタ ハイエース ワゴンGLを採用し、全長4840mm、全幅1880mm、全高2320mmというサイズは、日本の一般道路や駐車場においても扱いやすく、長距離移動から都市部での使用まで幅広く対応できる。
ハイエースの信頼性の高いパワートレインと耐久性は言うまでもなく、キャンピングカーとして重量が増しても安定した走行を確保する。さらに、Katomotor独自の断熱・防音施工によって、夏は涼しく冬は暖かい快適な車内環境を維持。長距離ドライブでも疲労を軽減し、安心して旅を続けられる点は特筆に値するだろう。
シートの背面にもピカソのサインが備わり室内を彩る。定評のあるハイエース GLのチップトップ仕様がベースであるため、使い勝手やドライビングに不安はない。車体後部の左サイドには、トイレの設置や物入れ、着替えスペースなど多目的に使えるマルチルームを装備。
FFヒーターやリア専用クーラー、ルーフベンチレーター、サイドオーニングなどオプションで選べる装備は多数。展示車には100V家庭用エアコン、オリジナルリチウムサブバッテリーシステム 200Ah、高性能サイン波 1500Wインバータースイッチ付きを搭載。
所有すること自体が特別なステータス
「パブロ」は世界でわずか5台のみが製作される超限定モデルである。販売価格は税込977万1300円と決して安価ではないが、その希少性と芸術的価値を考えれば妥当な設定だろう。購入希望者が多数の場合には抽選販売となる可能性もあり、所有すること自体が特別なステータスとなるはずだ。
加えて、購入者には限定デザインのコラボレーションTシャツが特典として用意されている。3種類のデザインから1枚を選ぶことができ、クルマだけでなくライフスタイル全体を彩る「パブロ」の世界観を共有できる仕掛けが用意されている。
リアゲートから車体前方を望む。ナラ材の自然な温かみとピカソのアートペイントが絶妙なシンフォニーを掲げ、そのまま車内から出たくなるかも。室内とマルチルームを隔てる敷板にもピカソの作が据えられている。
芸術と旅、そしてクラフトマンシップが交差する特別な一台
この特別なキャンピングカーは、2025年7月に東京ビッグサイトで開催された「東京キャンピングカーショー2025」にて初披露された。展示ブースには多くの来場者が足を止め、その斬新な外装と芸術的な内装に驚きと興奮の声が上がった。
実車を目にした人々からは「まるで美術館が移動しているようだ」「旅をすること自体が芸術体験になる」という感想が寄せられ、従来のキャンピングカー市場に新風を吹き込む存在として注目を集めた。
Katomotorの代表取締役である加藤健資氏は「アートとキャンピングカーという一見相反する世界を、ひとつのクルマで融合させた」と語る。ピカソが常識を打ち破り続けたように、Katomotorもまた固定観念に縛られないクルマづくりを追求したのである。芸術と旅、そしてクラフトマンシップが交差したこの一台は、単なる移動手段や宿泊手段を超え、「旅そのものを創造的な体験へと変える」ことが使命なのかもしれない。
東京キャンピングカーショーで出展された「パブロ」は、多くの来場者を引き付け称賛された。まったく異なる世界観をもつピカソとキャンピングカーを、ここまで違和感なく融合させたKatomotorの手腕には脱帽だ。
「パブロ」は、Katomotorが70周年の節目に放った特別なキャンピングカーであり、芸術性と実用性を兼ね備えた唯一無二の存在である。ハイエースをベースにしながらも、内外装の大胆なデザイン、新機構のスライド式二段ベッド、雪国仕様の断熱性能など、同社の技術と精神が凝縮されている。
世界で5台しか存在しないこの「パブロ」を手に入れることは容易ではない。しかし、もしもその鍵を手にすることができれば、それは一台のクルマを超えて、創造性と自由を象徴する特別なアートピースを所有することを意味するのである。
●Katomotor パブロ
・車体価格:977万1300円(税込み)
※写真の展示車はオプション込みで1102万5300円(税込み)
ライフスタイルとアートのコラボレーションは、ついにキャンピングカーの世界にもやってきた。「パブロ」を契機に、今後様々なカテゴリーからキャンピングカーとのコラボレーションが進んでいくのかもしれない。
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