
●文:月刊自家用車編集部
ヤリスクロス:モデル概要
ヤリスクロスは、ハッチバックのヤリスをベースにしたコンパクトSUV。ヤリスの弱点であった後部座席と荷室のスペースを拡大することで、実用性を大幅に向上させており、手頃な価格設定も手伝い、2020年8月のデビュー以来、爆発的な人気を誇るモデルになる。
パワートレーンは、1.5LのガソリンNAエンジンと1.5Lのハイブリッドエンジンの2種類を設定。どちらも高出力と優れた燃費性能を持つ3気筒の「ダイナミックフォースエンジン」を採用。燃費性能は非常に高く、ハイブリッド車はもちろん、ガソリン車でも20km/L前後の走行が可能。トランスミッションは、ガソリン車にはCVT、ハイブリッド車には電気式CVTが組み合わされる。
ヤリスクロス:スタイリング&パッケージ
エクステリアは、凝縮感のある塊のようなデザインを巧みに表現。水平基調のボンネットラインがSUVらしいタフなイメージを強調している。また、大型のホイールアーチ、大径ホイール、切り上がったLEDライトが印象的なフロントマスクなど、ベースのヤリスとの違いも明らかだ。
【トヨタ ヤリスクロス ハイブリッド Z(2020年8月モデル)】 ●全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm ●ホイールベース:2560mm ●車両重量:1190kg ●パワーユニット:1490cc直3DOHC(91ps/12.2kg-m)+モーター(59kW/141Nm) ●トランスミッション:電気式CVT ●WLTCモード総合燃費:27.8km/L ●ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク/Rディスク ●サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 ●タイヤ:215/50R18
ヤリスクロス:インパネ内装&シート
インパネの基本形状や構成素材はヤリスを踏襲するが、メーターデザインやセンターコンソール意匠で差別化。最も大きな違いを感じるのは後席周りで、足元も頭上空間もゆったり。延長されたホイールベースの余裕は後席のゆとりに当てられることで、ヤリスの弱点をしっかりと解決している。
さらに荷室スペースの拡大も大きな特徴のひとつ。シート格納時には上下2段に使い分けができるラゲッジデッキボードなどを用いることで完全フラット床面を実現している。後席は4:2:4後席分割可倒式と多彩なシートアレンジを採用することで、実践的なユーティリティ性能も手に入れている。
後席スペースが拡大したことで、ハッチバックのヤリスよりも実用性は1ランク以上アップ。撮影車は上級グレードの「Z」。中央にDA(ディスプレイオーディオ)が配置されるなど、基本レイアウトはヤリスと共通だが、高さ奥行きに余裕を持たせてシートやメーターなどを変更することで1ランク上を主張している。
ヤリスクロス:パワートレーン
1.5L直列3気筒のダイナミックフォースエンジンを、ハイブリッド車とガソリン車の両方に搭載。
ハイブリッド車は、燃費を優先した制御で、エンジン単体では控えめなスペックだが、最新のTHSⅡ(シリーズパラレル式ハイブリッド)と組み合わせることで真価を発揮する。車両重量は重くなるものの、路面の突き上げが穏やかになり、走行安定性やハンドリングの良さにつながっている。
ガソリン車は、ヤリスに比べて車両重量が増加しているが、走行性能の低下を感じさせないことが妙味。これは、早いタイミングでシフトダウンする変速制御により、力不足を抑えているため。また、浅いアクセル操作でも十分なトルクを感じられる設定で、高速巡航時でも無理なく走行できる。また燃費性能はヤリスには及ばないものの、コンパクトSUVとしては非常に優秀だ。
新世代のGA-Bプラットフォームを採用することで、抜群のシャーシ性能を持つことも大きな強み。高速長距離から街乗りまで安定した走りを楽しむことができる。動力性能も燃費性能もハイブリッド車が優れているが、ガソリン車も内燃機エンジン車としてトップ級の実力ということも見逃せない。
ヤリスクロス:モデル変遷
【2020年8月:初期型】ヤリスクロス発売
パワートレーンは1.5Lガソリン車と1.5Lハイブリッド車を選択可能。駆動方式はFFと4WDを用意。グレードはガソリン車が4タイプ、ハイブリッド車が3タイプを設定。当時の月販目標台数は4100台とされていた。
HYBRID Z(2WD)
【2022年7月:新グレード追加】GRの“走りの味”をプラスした「GR SPORT」と、アグレッシブさを強調した「Z “Adventure”」を追加
一部改良に伴い、2つの個性が異なるグレードを追加。
まず1つめは、TGR(トヨタ ガズー レーシング)が展開するスポーツカーシリーズ・GRのエッセンスが注がれた「GR SPORT」を追加。専用内外装による差別化のほか、ボディ剛性強化/足まわりのチューニング/パワートレーンの改良により、走行性能も向上している。価格はガソリン車が236万7000円、ハイブリッド車が275万円、駆動方式はFFのみ。
2つめは、専用バンパー(フロント/リヤ)/ルーフレール(シルバー)/専用シート表皮(合成皮革[サドルタン]×ツイード調ファブリック[ブラック])を装備した「Z “Adventure”」を追加。
ヤリス クロス GR SPORT。フロントのフォグベゼルやリアディフューザーを専用意匠としたほか、ラジエーターグリル(アッパー・ロア)、リアバンパーロアカバーには、GRの‘G’をモチーフにしたスポーティーなメッシュタイプへ意匠変更。専用18インチアルミホイール(切削光輝/センターオーナメント付)、及び、GR SPORT専用エンブレムを採用している。
「GR SPORT」。専用シート表皮のスポーティシートを採用。内装の加飾は、グロスを抑えたダークメタリック塗装にすることで差別化されている。
「GR SPORT」。フロア下とロアバックにブレースを追加することで剛性を強化。ほかにも専用サスペンションの採用などで、よりスポーティーな特性にチューニングされている。
ヤリスクロスZ “Adventure”
ヤリスクロスZ “Adventure”
【2024年1月:一部改良】一部改良を実施。内外装の変更と安全装備の充実が図られた
GR SPORTを除くグレードは、アッパーグリルのパターンをよりSUVらしくした力強いデザインに変更。ほかにも最新のディスプレイオーディオが搭載されている。
また、トヨタセーフティセンスも最新仕様にアップデート。プリクラッシュセーフティの検出対象範囲を、交差点での出合い頭時の車両や自動二輪車に拡大されている。
●ヤリスクロス グレードバリエーション&価格【2024年1月モデル】 | ||
パワートレーン | グレード【トランスミッション】 | 価格【2WD/4WD】 |
1.5L直列3気筒 120PS/14.8kg・m | X【CVT】 | 190万7000円/213万8000円 |
G【CVT】 | 215万円/238万1000円 | |
Z【CVT】 | 243万5000円/266万6000円 | |
Z アドベンチャー【CVT】 | 255万1000円/278万2000円 | |
GRスポーツ【CVT】 | 257万1000円/- | |
1490cc直3DOHC 91PS/12.2kg・m + モーター 59kW/141N・m | ハイブリッド X【電気式CVT】 | 229万5000円/- |
ハイブリッド G【電気式CVT】 | 252万4000円/- | |
ハイブリッド Z【電気式CVT】 | 280万9000円/- | |
ハイブリッド Z アドベンチャー【電気式CVT】 | 292万5000円/- | |
ハイブリッド GRスポーツ【電気式CVT】 | 295万4000円/- | |
1490cc直3DOHC 91PS/12.2kg・m + フロントモーター 59kW/141N・m リヤモーター 3.9kW/52N・m | ハイブリッド X【電気式CVT】 | -/252万6000円 |
ハイブリッド G【電気式CVT】 | -/275万5000円 | |
ハイブリッド Z【電気式CVT】 | -/304万円 | |
ハイブリッド Z アドベンチャー【電気式CVT】 | -/315万6000円 |
【2025年02月:最新型】一部改良を実施。特別仕様車「Z“URBANO”」を追加
ETC2.0がZ/G/Uグレードに、ドアミラーヒーターがG/U/Xグレードに、そしてディスプレイオーディオがXグレードに標準装備化されるなど、これまでオプションだった機能が標準となり、商品力を強化。
また、特別仕様車「Z“URBANO”」を新設定。「URBANO(ウルバーノ)」はイタリア語で「都会的な、洗練された」という意味で、ブラックのパーツで都会的かつスポーティーなデザインを際立たせたモデルになる。トヨタマークやドアハンドル、アルミホイールにブラックの加飾を施し、スタイリッシュさを演出している。
特別仕様車「Z“URBANO”」
●ヤリスクロス グレードバリエーション&価格【2025年2月モデル】 | ||
パワートレーン | グレード【トランスミッション】 | 価格【2WD/4WD】 |
1.5L直列3気筒 120PS/14.8kg・m | X【CVT】 | 204万6000円/227万7000円 |
G【CVT】 | 217万2500円/240万3500円 | |
Z【CVT】 | 251万3500円/274万4500円 | |
Z アドベンチャー【CVT】 | 262万9000円/286万円 | |
Z ウルバーノ【CVT】 | 262万3500円/285万4500円 | |
GRスポーツ【CVT】 | 264万8800円/- | |
1490cc直3DOHC 91PS/12.2kg・m + モーター 59kW/141N・m | ハイブリッド X【電気式CVT】 | 243万3200円/- |
ハイブリッド G【電気式CVT】 | 254万6500円/- | |
ハイブリッド Z【電気式CVT】 | 288万7500円/- | |
ハイブリッド Z アドベンチャー【電気式CVT】 | 300万3000円/- | |
ハイブリッド Z ウルバーノ【電気式CVT】 | 299万7500円/- | |
ハイブリッド GRスポーツ【電気式CVT】 | 303万1600円/- | |
1490cc直3DOHC 91PS/12.2kg・m + フロントモーター 59kW/141N・m リヤモーター 3.9kW/52N・m | ハイブリッド X【電気式CVT】 | -/266万4200円 |
ハイブリッド G【電気式CVT】 | -/277万7500円 | |
ハイブリッド Z【電気式CVT】 | -/311万8500円 | |
ハイブリッド Z アドベンチャー【電気式CVT】 | -/323万4000円 | |
ハイブリッド Z ウルバーノ【電気式CVT】 | -/322万8500円 |
ヤリスクロス:最新値引き&納期情報(2025年8月現在)
- 車両本体目標値引き額:20万円
- 納期の目安:6か月
- リセール予想:B
大都市部ではオーダーストップとしている販売店が目立ってきた。特にハイブリッドモデルはかなり厳しい。地方によっては注文OKという店もあるが、ガソリン車のみで納期も「今すぐ契約しても納車は来年3月以降」とのこと。近々全面的に停止となる可能性が高そうだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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