空冷ビートル・テールランプ図鑑

空冷ビートルの灯火類は世界の安全基準にあわせて拡大していきました。なかでもテールランプは年代を象徴するパーツとなっています。年式を見分けるヒントにもなるので、覚えておけばワーゲン博士になれるかも!?

●文/まとめ:ストリートVWs編集部

次第に大きくなるテールランプ

後続車に存在を知らせるテールランプ。また、ブレーキランプやウインカー、バックランプも組み込まれたコンビネーションランプのことも、一般的にテールランプと呼ばれている。

空冷ビートルのテールランプは、尾灯として光るだけのタイプに始まり、制動灯、方向指示灯、後退灯が徐々に追加されていった。その進化のタイミングはリアウィンドーとはズレがあるため、リアウィンドーとテールランプの組み合わせで、年式を細かく判別することも可能なのだ。

仕向地によって異なるタイプも存在するが、ここではドイツ本国仕様に絞って見ていこう。

1938~1952年 スプリット時代は尾灯と反射板だけ

1938~1952年(写真は1950~1952年のタイプ)

スプリット・ウィンドーの時代に装着されていたテールランプ。正円の小さなレンズに尾灯と反射板の機能だけを持たせたタイプだ。

このランプにはブレーキランプとウインカーの機能は備わっていない。ブレーキランプはライセンス灯に組み込まれていて、ウインカーの役割はBピラーに「セマフォー」と呼ばれる腕木式方向指示器を備えている。

厳密には年代によってレンズ周囲のトリムやハウジングの形が変化するが、基本的なスタイルは共通している。写真は最も数が多い1950年以降のタイプ。

1952~1955年 ブレーキランプが追加された”ハート・テール”

1952~1955年 ”ハートテール”

スプリット・ウィンドーの最終型から、オーバル・ウィンドーの前期までにかけて装着されていたテールランプ。ハウジングの上部にブレーキランプが組み込まれ、そのレンズ形状が上から見るとハート型のため「ハート・テール」と呼ばれている。

尾灯の面積は楕円形に拡大。まだ方向指示器はセマフォーのままなので点滅はしない。

また、ブレーキランプの視認性が悪いことから、US仕様車のみ末期の1955年にハート型レンズのない通称”エッグテールランプ”が装着されていた。

1956~1961年式 オーバル後期は大きめの楕円形になる

1956~1961年式

オーバル・ウィンドー後期からスモール・ウィンドー前期にかけて装着されたテールランプ。尾灯とブレーキランプがダブル球1つにまとめられ、レンズが拡大、装着位置も高くなって視認性が良くなった。

まだ方向指示器はドイツをはじめほとんどの仕向地でセマフォーのままだが、北米仕様車はひと足先にウィンカー機能を備え、このタイプのテールランプのままブレーキランプとウィンカーが兼用となる。

日本ではオーバル時代に登場したことから「オーバル・テール」と呼ばれることがある。英語圏ではレンズカットが六角形で雪の結晶に似ていることから「スノーフレーク・テールライト」や「ハニカム・テールライト」と呼ばれることもある。

1962~1967年式 ウィンカーが追加され2バルブになる

1962~1967年式

スモール・ウィンドー後期から低年式時代まで装着されていたテールランプ。全車にウィンカーが採用され、テールランプには独立したウィンカーが追加された。

オレンジ色部分がウィンカー、赤い部分がダブル球で尾灯とブレーキランプとなる。北米仕様車や日本仕様車はウィンカーも赤いレンズになる。

低年式時代まで使用されたが、高年式になっても引き続き装着されたグレードもある。

なお、この低年式時代まではバックランプがオプション扱いで、バックランプを装着する場合はバンパーの上などに別途取り付けていた。

高年式はバックランプも装備

1968~1972年式 バックランプが追加された”アイロン・テール”

1968~1972年式 ”アイロンテール”

高年式の前期といえる時代に装着されたテールランプ。バックランプを組み込んで下部が角張った形になった。日本ではスチームアイロンに似ているため「アイロン・テール」と呼ばれたり、ロケットに似ているので「ロケット・テール」と呼ばれ親しまれている。

このタイプも北米仕様車はウィンカー部分が赤くなるほか、北米仕様車のみ1971~1972年式は大きさが一回り大きくなる。日本仕様車は1969年初頭まで赤く、春頃からオレンジ色になるが、大きさは変わらない。

1973~2003年式 視認性マックスの”ビッグ・テール”

1973~2003年式 ”ビッグテール”

ラージ・ウィンドーの2年目から装着されたテールランプで、これが最終形態。一段と大きいので日本では「ビッグ・テール」と呼ばれている。英語圏では象の足を意味する「エレファント・フット」と呼ばれることもある。

北米仕様はリフレクター部分の形状が異なり、また日本仕様も1974年式から北米仕様と同じものが装着されるようになった。

他にも異なるテールランプがあった

なお、今回紹介したテールランプがすべてではなく、小改良で生まれたディテール違いや、輸出先の法規にあわせた仕様も存在するので、研究するのも楽しい。そうしたバリエーションをご紹介する記事もお楽しみに。

毎週水曜日はVOLKSWEDNESDAY! 面白くて勉強になるフォルクスワーゲン情報をお届けしますので、お楽しみに。


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