日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」試乗インプレッション

環境問題の点からも、このところ急激に注目を集めているBEV(電気自動車)。その中でも今、とくに話題を集めているのが日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」。ともに軽自動車規格の新しいEVだ。今回はその2モデルの公道試乗リポートをお届けしよう。

●文:月刊自家用車編集部(T.T.) ●写真:奥隅圭之

アクセルを踏めば踏んだだけ、過不足ない駆動力と加速感を引き出せる。両車に大きな違いはなし

NISSAN サクラ G(2WD)
車両本体価格:294万300円
ボディカラー:ブロッサムピンク/ブラック(2トーン)※有料色:6万6000円高
問い合わせ先:0120-315-232(日産自動車お客様相談室)

現在、日産と三菱は提携関係にあり、そのつながりから生まれたこの2モデル。基本的な構造は共通となっており、プラットフォームなどは両社のデイズ/eKがベースとなっているが、その開発初期段階からBEVモデルへの展開が前提にされていた。そのため、スペースに限りのある軽自動車でありながら、駆動用バッテリー(リチウムイオン電池:350V/20kWh)はすべて床下に格納されており、キャビン空間やユーティリティ面での制約がないのも大きな見どころだ。

MITSUBISHI eKクロスEV P(2WD)
車両本体価格:293万2600円
ボディカラー:ミストブルーパール/カッパーメタリック※有料色:8万2500円高
問い合わせ先:0120-324860(三菱自動車お客様相談センター)

一充電当たりの航続可能距離はWLTCモードで180kmを確保。さすがに長距離用途は厳しいけれど、日常的な買い物や子どもの送り迎え、近所のドライブがメインなら十分だろう。自宅などでの普通充電はもちろん、急速充電にも対応しているため出先でいざというときにも安心。約40分で80%まで充電できる。

またBEVにとって問題となりがちな空調システムについても、高効率なヒートポンプ式を採用することで実走行距離の改善が図られているため、暑さや寒さを無理に我慢する必要もない。前席にはシートヒーターも設定(※標準またはオプション扱い)されている。

それでは気になる走りをみていこう。足回りの設定や出力特性などについては、サクラとeKクロスEVは基本的に共通のため、大きな違いはないだろうな……と予想はしていたものの、実際にドライブしてもやはりその通りだった。

しかし、両車ともに「低速域から高速域までパワー感がほとんど変わらない」ことにはかなり驚かされた。起動時のトルクに優れるモーターの特性として、低速域でのパワー感があるのは当然なのだが、逆に高速域になればなるほど変速ギヤがないため頭打ち感が出やすい。しかし、サクラとeKクロスEVはその印象があまりしないのだ。速度域を問わず、アクセルを踏めば踏んだだけ、過不足ない駆動力と加速感を引き出せる。

原動機には、現行ノートe-POWER4WDのリヤモーターを流用しており、若干デチューンされているとはいえ、最高出力は軽自動車の自主規制値の47kW。また最大トルクは195Nmとデイズ/eKターボモデルの倍近い数値となっている。スペックから見ても軽自動車としては飛びぬけて高性能なのだが、単純に出足の良さや加速の鋭さといった“スポーティ”方面に味付けを振っていないところが両車のいいところ。とにかく“品が良い”走りだ。

ハンドリングも中立付近は穏やかで初期応答性に優れるタイプではないが、コーナーではサスペンションストロークを上手に使ってきれいにロールさせる。そのため同乗者の頭も揺すられにくく、フラットな乗り味が特徴だ。重量物のバッテリーが床下に配されていることによる低重心構造も効いているのだろう。

また、静粛性に関してはBEVのため当然と言えば当然なのだがとても優秀。格上のコンパクトクラスはもちろん、アッパーミドルクラスからの乗り換えでも不満は感じないはずだろう。ただ、内装トリムや遮音材配置の違いからなのか、ロードノイズなどの騒音の感じ方がサクラとeKクロスEVでは若干異なるシーンが見受けられた。

これからのBEV本格的普及のカギを握ることになる、エントリークラスの注目2モデル、日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」。そのリアルワールドにおける実力は予想以上に素晴らしいものだった。

主要諸元(サクラ G)
●全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1655 ●ホイールベース(㎜):2495 ●車両重量(㎏):1080 ●パワートレーン:前モーター(最高出力47kW/2302-10455rpm、最大トルク195Nm/0-2302rpm) ●駆動用バッテリー:リチウムイオン(350V/20kWh) ●充電ポート仕様:普通充電AC200V、急速充電DC(CHAdeMO規格対応) ●駆動方式:FWD ●トランスミッション:一段固定式 ●交流電力消費率(Wh/㎞)WLTCモード:124 ●一充電走行距離(㎞)WLTCモード:180
●サスペンション前/後:マクファーソン式/トルクアーム式3リンク ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク式/リーディングトレーリング式ドラム ●タイヤサイズ:165/55R15(メーカーOP装着)

主要諸元(eKクロスEV P)
●全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1670 ※ルーフレール装着により、標準車全高比+15㎜ ●ホイールベース(㎜):2495 ●車両重量(㎏):1080 ●パワートレーン:前モーター(最高出力47kW/2302-10455rpm、最大トルク195Nm/0-2302rpm) ●駆動用バッテリー:リチウムイオン(350V/20kWh) ●充電ポート仕様:普通充電AC200V、急速充電DC(CHAdeMO規格対応) ●駆動方式:FWD ●トランスミッション:一段固定式 ●交流電力消費率(Wh/㎞)WLTCモード:124●一充電走行距離(㎞)WLTCモード:180 ●サスペンション前/後:ストラット式/トルクアーム式3リンク ●ブレーキ前/後:ベンチレーテッドディスク式/リーディングトレーリング式ドラム ●タイヤサイズ:165/55R15


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