空冷ビートルの正式名称は「ビートル」でいいの?

1970年代のヤナセ発行カタログには大きく「かぶと虫」と書かれてますが……

ビートル、タイプ1、カブトムシ、ケーファー・・・多くの呼び名がある空冷ビートルの名称はどれが正しいのでしょうか?

●文/まとめ:ストリートVWs編集部

空冷ビートルには、いろいろな呼び方があります。タイプ1、かぶと虫、ワーゲン、ケーファー・・・そのほとんどがいわゆる「ニックネーム」です。

どんなふうに呼んでも自由なのですが、雑誌やメディアでは「正式名称」を使いたいときがあります。

カタログ表記が正式名称のはず・・・だが

何が正式なのか? 誰が決めるのか? と考えると、メーカーが公式に発表している名称が正式でしょう。

ヨーロッパ車は車名が数字であることが多く、また同じカタチのモデルでも異なる数字の車名だったりして不便です。そこで便宜上まとめて「型式」で呼ぶことが自動車業界やマニアの間では一般的です。たとえばメルセデス・ベンツの「W124」やBMWの「E36」というように。

空冷時代のVWも同様で、カタログでは「Volkswagen 1200」、「Volkswagen 1300」、「Volkswagen 1500」、「Volkswagen 1200LE」などなど。それも年式やグレード、仕向地によってころころと変わります。そのため、ビートルのことを型式で「タイプ1(ワン)」と呼ぶ人も多いです。

ビートル以外にも「タイプ1」が存在する。困ったぞ!

タイプ1という呼び方は、ワンボックスのタイプ2、中級セダンのタイプ3、上級セダンのタイプ4と並べると、とてもキレイでわかりやすい分類であり、便利なニックネームとしても定着しています。カタログのタイトルに使われたこともあったので、正式名称と言えるかもしれません。

しかしタイプ1は、あくまで型式であり、また厳密にビートルだけを指す分類としては不十分といえます。なぜなら、型式のタイプ1系には派生ボディであるカルマンギア(タイプ141~144)、郵便車(タイプ147)、軍用車や多目的車(タイプ181~183)なども含まれるからです。「タイプ1オーナーの人、手を挙げて~」と言ったら、カルマンギアオーナーもザ・シングのオーナーも手を挙げることでしょう。

ニックネームだった「Beetle」を公式も採用

1967年モデルのヤナセ発行カタログには「スーパービートル」の表記が。本国版の写真を流用しているためヘッドランプとバンパーが本国仕様のままとなっている。 [写真タップで拡大]

そこで「ビートル」が総称としてしっくりきます。

もともと「ビートル」という呼称は非公式のニックネームでした。ルーツは1930年代の開発段階から、ポルシェ社内で「Käfer」(ケーファー:ドイツ語で甲虫の意)と呼ばれていたといわれています。もちろんその姿が甲虫、特にコガネムシに似ているからです。その英訳である「Beetle」という愛称が広まったのは、英語圏への正規販売が開始された1940年代末からだと思われます。また、世界各国でも「Käfer」を意味する翻訳語がニックネームとして定着しました。

しかしVW社はカタログ等の公式資料では頑なに「Beetle」という表記を使いませんでした。ところが初めて大々的に使ったのが1967年モデルのカタログです。新しく1500ccモデルが登場し、一部の国でカタログのタイトルとして「Super Beetle」と表記されたのです。

また、翌1968年モデルでは世界各国で「Beetle」を意味するニックネームがカタログに採用されました。これ以降、ヤナセによる日本語版カタログの表記は基本的に「かぶと虫」または「ビートル」、欧文では「Beetle」となりました。ストライプやデカールなど、後付けの純正アクセサリーに「Beetle」の文字が入ることもありました。

しかし、どの国でもカタログ内部の文章やスペック表などは依然として「Volkswagen 1500」などの数字車名のままでした。つまり「ビートル」は車名ではないが、正式な総称であるといえます。まだ、ややこしい・・・

1970年代後半にはヤナセがアクセサリーとして「beetle」ストライプを販売。 [写真タップで拡大]

北米仕様はついに「Beetle」が車名に!

1971年モデル北米仕様のカタログには「Super Beetle」が車名として書かれている。 [写真タップで拡大]

1970年には、欧州各国で「Beetle」を意味する名がつく限定車が登場しました。しかし、あくまでもグレード的な扱いであるため、車名とは言いにくいでしょう。

そして、1971年モデルのラインナップにストラット・サスペンションを持つ1302が追加されると、その北米仕様車は「Super Beetle」という車名で発売されました。また従来型のトーションバー・サスペンションのビートルは「Standard Beetle」の名前で併売されました。ついにアメリカでは「Beetle」が正式車名になったのです。

ニュービートルの登場により「ビートル正式説」が決定的に

結局、空冷時代に「ビートル」が正式な車名だったのは北米市場だけでした。そのため、本国目線では例外的に捉えられていました。

しかし、1997年に発売された「ニュービートル」によって、ついに「ビートル」が世界的な車名として採用されました。しかもドイツ本国でもドイツ語の「Neue Käfer」ではなく、「New Beetle」という英語表記となり、基本的に全世界の市場で英語に統一されました。

このとき、日本では旧型である空冷ビートルのことを「旧ビートル」とシャレて呼ぶことも流行りました。

そして2011年にデビューした後継モデル「ザ・ビートル」も、ドイツ本国で「Beetle」と名付けられました。このときは一部の国で現地の言語に翻訳されました。

ザ・ビートル発表会に集まった歴代ビートルたち。 [写真タップで拡大]

ビートルの日本語正式総称は「ビートル」と解釈

というわけで、Street VWs編集部ではビートルのカタチをしたタイプ1のことを「ビートル」と表記しています。その理由は、タイプ1じゃない空冷ビートルは存在しないこと、タイプ1にはビートル以外の空冷VWが存在するからです。

しかし、どんな呼び方をしても自由です。名前をひとつに決めなかったことが、ビートルが世界中で親しまれた秘訣だったのかもしれません。「ハービー」って呼んでも通じますものネ!

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毎週水曜日はVOLKSWEDNESDAY! 面白くて勉強になるフォルクスワーゲン情報をお届けしますので、お楽しみに。


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