
ここに来て、BEVの最新モデルが続々と登場しているが、今回試乗したアバルト500eは、走りの質で勝負できる稀有なBEV。アバルトの名にふさわしい刺激的なモデルに仕上がっていたのだ。
●文:川島 茂夫 ●写真:編集部
電動化時代になっても、クルマを操る楽しさは変わらない
アバルト
500e スコーピオニッシマ
価格:630万円(ハッチバック)660万円(カブリオレ)
「アバルト」は、トヨタで言えば「GR」であり、メルセデスベンツなら「AMG」、BMWなら「M」に相当するブランド。ただ、フィアットモデルのスポーティグレードとしての設定ではなく、独立したスポーツカーブランドとして展開されている。以前はマツダ・ロードスターをベースにしたアバルト124スパイダーなどもラインナップしていたが、現在国内に導入されているのはフィアット500ベースのモデルのみだ。
今回試乗したアバルト500eは、BEVのフィアット500eに対して、最高出力は約30%増の114kW、最大トルクは約7%増の235Nmと、高出力型モーターに変更することで性能アップが図られている。専用のシャシーや内外装を採用するだけでなく、動力性能も含めた総合的な性能向上が図られていることは、これまでのアバルトモデルと同様だ。
その走りは、まさに「やんちゃ」とか「わんぱく」と言う言葉がぴったり。
多少角を丸めているとはいえ、路面からの突き上げは大きめで、いかにもハードなスポーツドライビングに対応したサスチューン。それでいて神経質な挙動は少なく、高速コーナリングでも優れたラインコントロール性能を示してくれるので、幅広い速度域で手応え十分の操舵感が楽しむことができる。
アクセル入力の応答性は、電動駆動ならではの瞬発力をことさら主張するタイプではなく、低速から高速までリニアなコントロール感覚を重視したセッティング。BEVとしては速度上昇に癖がなく素直で、伸びやかさを強く意識した特性だ。なお、ドライブモードは、アクセルオフと回生の強度が異なる3つのタイプが選べるが、そのいずれもリニアなコントロール感覚を軸とした特性だ。
多少癖はあるもののクルマを楽しく操れる、レベルの高い走りに対して、ウィークポイントに感じてしまうのが、後席と荷室の余裕&使い勝手。これはベース車のフィアット500と同じ弱点になるのだが、使い倒すには余裕がなく、キャビン実用性はこのクラスの中で見劣りしてしまう。
さらに運転支援機能もフィアット500eにはACCが備わっているにもかかわらず、アバルト500eは定常型のクルーズコントロールとダウングレードしている。ドライバーの疲労軽減を測ってくれる運転支援機能に関しては、一昔前の水準といわざるを得ない。
アバルトらしい丁寧で上質なキャビン仕立ては好ましいが、実用性もある程度は欲しいというユーザーにはオススメしにくいモデルだ。だが、BEVでも走りに刺激が欲しい、楽しく走りたいと願うユーザーにとっては絶妙の味付けで、BEVになっても、アバルトが大事にしてきたスポーツマインドを感じることができる。万人向けではないが、BEV選びの選択肢のひとつとして、面白い存在になりうる一台だ。
ABARTH 500e Scorpionissima / Turismo | |||
ハッチバック | カブリオレ | ||
ハンドル位置 | 右 | ||
全長(mm) | 3675 | ||
全幅(mm) | 1685 | ||
全高(mm) | 1520 | ||
ホイールベース(mm) | 2320 | ||
トレッド 前/後(mm) | 1470 / 1460 | ||
車両重量(kg) | 1360 | 1380 | |
乗車定員(名) | 4 | ||
種類 | 交流同期電動機 | ||
定格出力 kw | 47 | ||
最高出力 kw(ps)/rpm [ECE] | 114(155) / 5000 | ||
最大トルク [ECE] | 235 / 2000 | ||
動力用主電池 | 種類 | リチウムイオン | |
電圧 V | 3.65 | ||
容量 Ah | 120 | ||
個数 | 192 | ||
総電圧 V | 352 | ||
総電力量 kWh | 42 | ||
充電走行距離 WLTCモード | 303 | 294 | |
交流電力消費率 WLTCモード | 152 | 158 | |
駆動方式 | FF | ||
ステアリング形式 | ラック & ピニオン (電動パワーアシスト付) | ||
サスペンション | 前 | マクファーソンストラット (スタビライザー付)) | |
後 | トーションビーム (スタビライザー付) | ||
主ブレーキ | 前 | ディスクブレーキ | |
後 | ディスクブレーキ | ||
タイヤサイズ | 205/40R18 | ||
最小回転半径 (m) | 5.1 |
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