予想以上の良フットワーク、けっして価格だけのクルマにあらず ホンダ・新型「WR-V」プロトモデル試乗インプレション

ホンダSUVのエントリーモデル「WR-V」がついに正式発表。プロトモデルになるが、その走りを試乗する機会が訪れた。正直、試乗前はガソリン車のみという理由もあって“価格優先モデル”と思い込んでいたのだが、走りでも、実用性でも、1クラス上のモデルとも十分に戦える力作モデルに仕上がっていたのだ。

●文:川島茂夫●写真:奥隅圭之

抜群のシャシー性能がもたらす、良質な走りに驚き

ホンダ WR-V
価格:209万8800~248万9300円


ホンダ同門のヴェゼルとの関係は、サイズに絞り込めば、ほぼ同等のコンパクトSUVだが、パワートレーンをガソリン車に絞り込み、さらにFF車のみにすることで、ヴェゼルよりも価格レンジを一段下げている。

このこなれた価格設定が、WR-Vの最大の武器になるのは間違いないが、価格だけのありきたりのモデルに仕上げていないことが凄みのひとつ。

そう感じてしまう大きな理由は、走りの完成度の高さ。特にフットワークの出来の良さだ。

いざWR-Vを走らせてみると、操安性も、乗り心地も、ドライバーを身構えさせるような挙動が少なく、段差などでの収束感も良好。そのふるまいには価格優先で造られたモデルという印象は感じない。

特に高速走行時の操安性の高さが印象的で、コーナー時の挙動も落ち着いているので、操舵に神経を使わなくていい。揺れ返しや車軸周りの揺動感も少なく、すっきりした味わい。一言でいうと、ロングドライブで乗り疲れしにくいタイプだ。最近のホンダ車でお馴染みの「アジャイルハンドリングアシスト」が非装着にもかかわらず、これほどまでに仕上げた開発陣に拍手したくなるほどだ。

一本筋の入ったサスチューンながら、乗り心地も良好。後発開発の強味ゆえか、ヴェゼルよりも細かな揺れが減ったようにも思えたほど出来が良い。

1.5Lエンジンは、負荷が強まる高速走行時に少し不満あり

ただし、1.5L直4のガソリンエンジン(118PS/14.5kg・m)は、市街地主体ならば十分な動力性能と思うが、高速走行時、特に加速が欲しい時に、どうしても余裕のなさを感じてしまう。CVTの巧みな変速制御のおかげで、エンジン回転が高回転に貼り付くようなことはないが、ちょっとした踏み増し加速でも回転数は高く跳ね上がるのも少し気になる。シャシー性能が良好なだけに、パワートレーンは残念に感じてしまう。

パワートレーンは1.5Lの直4NAにCVTの組み合わせ。これはヴェゼルのガソリン車と同じ構成になる。

シートアレンジは平凡だが、キャビン&荷室の広さはクラス最大級

ちなみにWR-Vで、もうひとつ見逃せない強みが、見た目のサイズ感以上に広大なキャビン&荷室スペースが確保されていることだ。高い全高を活かしたパッケージには、多彩なシートアレンジを軸としたユーティリティ性能に優れるヴェゼルとは違った、扱いやすさ、使い勝手の良さがある。車体全長が100mm大きいカローラクロスと比較しても、キャビン&荷室スペースは同等以上。同乗者も窮屈な思いは感じないだろうし、荷物も気兼ねなく積むことができる。

インパネは実用車らしい水平基調のシンプルなデザイン。大きめのフロントウインドウ&フラットなダッシュデザインにより、前方視認性も優秀だ。

サイズ以上に広々としたキャビンは、WR-Vの武器のひとつ。前席シートは骨盤から腰椎まで体圧を面で受け止めるボディースタビライジング機構を備えるなど、ロングドライブの負担を軽減する工夫も盛り込まれる。

プラットフォームまわりは、お馴染みのセンタータンクレイアウトでもなく、後席機能は簡略化、さらにホンダセンシングのACCには渋滞追従機能がないなど、お手頃価格を実現するために削いだ部分はあるが、ガソリン車狙いでコンパクトSUVを探しているユーザーにとっては、価格と性能&機能のバランスがちょうどよいWR-Vは、かなり面白いモデルになりそうだ。

シート格納時には段差ができてしまうタイプだが、荷室長を長めにとることでゆとりの荷室容量を確保。荷物は相当積める。

直線基調を意識したボディラインに加え、ベルトラインも高めにデザイン。分厚いロングノーズも手伝って、サイズ以上の堂々とした風格を楽しめることも魅力のひとつ。

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