
●文:山本シンヤ ●写真:LEXUS
オフの世界でもプレミアムを貪欲に追求。発売は2024年度中を予定
レクサスは現在、大自然と共生しながらアウトドアライフスタイルを彩るクルマの楽しさと、様々な体験を提供する「OVERTRAIL PROJECT」を推進しているが、その中核となるのが、3代目にして日本初導入となる「GX」である。2024年度中に発売と公言するが、それに先駆け左ハンドルの北米仕様・3グレードにアメリカ・アリゾナで試乗してきた。
チーフエンジニアの塚崎公治氏は「レクサス本格オフローダーの“ど真ん中”を開発した」と語るが、そのイメージリーダーとなるのがオフロード性能をより高めた「GX550“オーバートレイル”」だ。
撮影車はGX550“オーバートレイル”。精悍な面構えや直線基調のスクエアなスタイリングは、これまでのレクサス車とは違った新鮮な魅力でいっぱい。全長☓全幅☓全高は、4950☓1980☓1865mm(プロトタイプの数値)。ホイールベースは2850mm。ホイールは18インチを装着。
エクステリアはエッジの効いたスクエアフォルムながら、レクサスの品を損なうことなく“ワイルド”、“ゴツさ”を持ったデザインに加えて、20㎜ワイド化されたトレッド&フェンダーエクステンション、18インチの専用タイヤ(TOYOオープンカントリー)の装着で、よりワイルドな印象。
パワートレーンはLX譲りのV6-3.5L直噴ツインターボ(415PS/650Nm)+10速ATだが、小型タービン&専用制御によりレスポンス重視の特性に。シャシー系は基本素性に優れるGA-Lプラットフォーム+強化されたボディの組み合わせに加えて、専用セットのAVS、LX譲りのEPS、ランクルGRスポーツ譲りのE-KDSS(前後スタビライザーを電子制御)と、トヨタ/レクサスの本格オフローダーに与えられた武器をフル装着する。
コンソール中央部に14インチのタッチディスプレイを配置。ダッシュボードは低く、フラットな形状を採用することで、十分な視認性も確保、道具として使いやすさを盛り込んだ機能的なレイアウトを採用する。派手な加飾は控えめだが、使われている素材そのものは上質。所有欲を巧みにくすぐる魅力も健在だ。
撮影車両は2列シート仕様。2列目シートはキャプテンシートとベンチシートが選択できるが、こちらはベンチシート仕様となる。十分な前後カップルディスタンスも確保されるなど、快適に移動できる道具車としても優れた性能が与えられている。
オフ重視のモデルと思いきや、オンロードでもレクサスの魅力がいっぱい
まずはオンロードの走行からスタートしたが、ここでの素直な印象は「本当にオフロード性能を高めた仕様なの?」だった。ステア系は雑味のない滑らかでスッキリとしたフィール、ボディオンフレームとは思えない下屋と上屋の一体感と正確な応答、クルマが軽く/小さく感じるロールが抑えられた軽やかな身のこなし、オフロードタイヤとは思えない乗り心地の良さと静粛性の高さなど、いわゆる都会派クロスオーバーよりも“都会派”の走りを見せる。
パワートレーンは発進時のみトーイングを考慮したルーズなAT制御だが、それ以外はどの回転域でもドライバーの意思に忠実な加速を見せる。ドライブモードセレクトをスポーツS/スポーツS+を選択すると前後スピーカーからV8を彷彿させるサウンドが。音質/アクセル操作/回転数とのリンクもバッチリで、思わずニンマリ。
ラダーフレーム車ゆえにオンロードは苦手気味と思いきや、AVSサスペンションや前後電動式スタビライザーの装着、E-KDSSなどの最新制御機能を搭載したことで、優れた操縦安定性を実現。さらに徹底した防音性能の追求もあって、室内はとても静かな空間だ。
路面を選ばぬ比類なき走破性能。その走りは、まさに本格オフローダー
続いてオフロードを走る。コースはモーグルや急斜面、ぬかるみなどが設けられた“意地悪”ステージだ。驚きのオンロード性能から走行前は「岡サーファーだったどうしよう?」と心配したが、取り越し苦労だった。
GA-Fプラットフォームの基本素性(剛性/重量バランス/低重心/ホイールアーティキュレーション)に加えて、E-KDSSによる接地性の高さ、クロールコントロールによる巧みなブレーキ/アクセル制御、胸部の左右の揺れをいなす専用シート、視界の良さ(無駄な突起がないフロントウィンドウ、ウエストラインが低いサイドウィンドウ、ドアミラーの位置・サイズ)、車両感覚がつかみやすいボンネット形状、更にステアリング切れ角の大きさなどの相乗効果により、モーグルや30度を超える斜面、急こう配と言ったドライバーの技量が求められる過酷なシーンであっても、「僕って、運転上手?」と錯覚するくらい、「安心」、「楽」、「快適」に走行できてしまった。
GA-Fプラットフォームを採用したことで、先代に比べてシャシーの基本性能も大幅に向上。優れたトルク特性を持つ3.5LのV6ガソリンターボ(V35A-ATS型)を採用したことで、低速域から高速域までドライバーの意思を忠実に体現してくれる。
あまりに簡単に走れてしまったので、走行後に自分の足で同じコースを歩いてみたのだが、「こんな所を走っていたんだ」と愕然……。逆を言うと、GXに乗ると過酷な道が過酷に感じられない事が、ウィークポイントなのかもしれない(笑)。
このようにオンロードではボディオンフレーム構造を忘れる走り、オフロードでは期待以上の走破性と、レクサスが初代LSから掲げる「二律創生」、「YETの思想」が直感的にわかりやすく表現されたモデルだと感じた。
モーターと減速機を用いた電動パワーステアリングを採用したことで、路面からのキックバックも低減。オフローダーとして緻密に設計された車体ジオメトリーや、柔軟な加減速コントロールが可能なパワートレーン、強力な運転支援機能を採用したことで、多くのドライバーにとって理想のオフローダーになってくれるだろう。
その後、オンロードで他の2つのグレードにも試乗。
AVS+22インチタイヤ(ダンロップ)仕様の「GX550“ラグジュアリー”」はFスポーツと言ってもいいレスポンシブでシャキッとしたハンドリングが特徴。乗り心地はアメリカの荒れた舗装路面ではヒョコヒョコした動きが気になったものの、60-70㎞/hくらいから22インチタイヤを感じさせないフラット感とLXに匹敵する動的質感を備える。都市部メインで使う人なら満足度は高い。
GX550“ラグジュアリー”は、アルミホイールが22インチとなるなど、ドレスアップ的な魅力をプラスした仕様。
メカニカルダンパー+20インチタイヤ(ヨコハマ)仕様の「GX550“プレミアム”」はGXの基本素性をピュアに味わえるグレードで、ハンドリングと乗り心地(大きな入力以外)のバランスの良さや路面感受性の高さはGXベスト。肩肘張らない感じはGR86の17インチ仕様やマツダ・ロードスターのSグレードと同じ匂いがした。
新世代レクサスは「電動化」、「知能化」、「多様化」が3つの柱となっているが、中でも多様性はライフスタイルの変化により、これまでの常識とは異なるにニーズが求められている。GXは泥んこからホテルエントランスまでカバーできるマルチパフォーマンスにより、これまでのレクサスとは違う世界感や個性がプラスされた一台と言えるだろう。
2024年中に発売予定と言われる日本仕様の価格やグレード展開は未定ながらも、ディーラーには数多くの問い合わせが来ているそうだ。ヒットは間違いなさそうだ。
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