
スポーツトラックは走破性能も売りのひとつだが、久々の国内復帰となった新型トライトンは、最新メカニズムが惜しみなく注がれたこともあって、本領発揮のオフロードはもちろん、オンロードでも侮れない走りが楽しめる。抜群の積載性能もあって、アウトドアユースの道具車として、魅力的なモデルに仕上がっていたのだ。
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
スポーツトラックの裾野を広げてきた、パイオニアの一台
ピックアップトラックは日本では「働くクルマ」のイメージが強いが、北米ではアウトドアで活躍する「レジャーカー」としてのイメージが強い。実際、土木や農水産業の現場での資材運搬に使われるほどの積載能力は、大きなアウトドアレジャーの用品も難なく運ぶことができるし、石だらけの河原や荒れ地を走破できる悪路対応力の高さも、アウトドアレジャーで頼もしい。
今回発売されるトライトンは、原点となるコルトトラック(1966年デビュー)から、これまで幾たびかの車名変更を経ているが、トヨタ・ハイラックスや日産・ダットサントラックと並び、日本のピックアップカテゴリーを支えてきたモデルだ。
ただ、コルトトラックからトライトンに繋がる長い系譜の中でも、今回導入された新型は少しキャラが異なっている。先代トライトンも後期モデル以降は、フロントマスクを三菱SUVに共通するテイストで仕立てていたが、新型はその雰囲気をさらに強化。頑強なボディパーツを積極的に魅せることで、よりオフローダーの雰囲気を濃くしたスタイルを採用している。純正スタイルのままでも、すでにカスタマイズ仕様に思えるほどだ。
実際、公式ホームページでは、商用車ではなく、SUVカテゴリーに分類されている。アウトランダーPHEVやエクリプスクロスと並べても違和感はなく、最高のオフロード性能が与えられた本格クロカンモデルとみなされている。
前後シートを備えるダブルキャブボディを採用したのは、レジャーユースを狙っていきたいという意向によるもの。上位グレードのGSRは、純正スタイルのままでもカスタマイズモデルに見えるほど。
実用車ベースで加飾はほどほどだが、むしろ無理をしていないことが好印象
トライトンのキャビンは4ドアの5座仕様。ピックアップとしては後席のゆとりも確保したダブルキャブと言われるキャビン形式だ。ただ、その本質は荷台に荷物を積載して運搬を行うための車両であり、車体寸法に比べるとキャビンサイズは小さい。
後端まで高い室内高を与えたキャビンデザインや室内幅の余裕により一定の実用性を確保しているが、室内長はコンパクト2BOXと大差ない。ただ、後席の造りや着座姿勢は長時間乗車も考慮されたもので、実際に座った時の収まりは悪くない。寸法的な余裕が少ないわりに居心地は良好だ。
内装デザインは、目につきにくい部分を中心に“働くクルマ”を意識させる部分もあるが、インパネやトリムまわりにほどよい加飾を施すことで質感と機能感を上手に演出している。ことさらプレミアム路線を追求していないことも、トライトンのキャラには似合い。シート座面の高さや、アップライト気味の運転感覚はいかにもトラック的だが、これもトライトンの個性のひとつといえる。
キャビンまわりの細部の造形や加飾は「働くクルマ」を意識させる部分もあるが、トリムや使用頻度の高いスイッチ類はミドルクラス相応な仕上がり。変に華美になっていないことも、このクルマのキャラには似合っている。
大柄な男性の4名乗車ともなるとレッグスペースは心もとなくなるが、長時間乗車にも一定上の対応力を持つ。後席まわりの仕立てや加飾は前席と大きな違いはなく、少し小振りながらもシートの座り心地も良好だ。
荷台の奥行きは約160cm。アウトドアのレジャー用品を積むレベルなら大型SUV以上の積載性と利便性を持つ。社外用品も豊富で、アウトドアの楽しみ方に合わせたカスタマイズも楽しみのひとつになっている。
侮れないオンロードの走り、ハンドリングの良さに驚き
ラダーフレームにリヤリーフリジッドサスを用いたシャシーは、悪路踏破性を追求しながらも、オンロードでの運転しやすさも考慮した設計。リヤサスは柔らかめに設定されたこともあって、トラックというよりオフローダーに近いサスチューニングだ。
オフロードでは、長いストロークを活かした接地性の高さと、センターデフロック機構付きフルタイム4WD、さらに悪路用に設定された電子制御の駆動力分配などが相まって、ハードなトライアルセクションはもちろん、緩めの泥濘なども難なくこなしていく。試乗コースの大半は4Hモードとトラクションコントロールだけで走破できてしまったほど。悪路走破性は国産車全体の中でもトップ級なのは間違いない。
2.5ℓ4気筒のディーゼルターボの最高出力は204psだが、最大トルクは47.9kg-mに達する。許容回転数は4000回転に設定されており、乗用車系ディーゼル車に比べると高回転の伸びやかさに欠ける。ただ、低回転域から太く安定したトルクは扱いやすい。2.1t前後の車両重量にも不足を感じさないパワースペックだ。
そして少し驚いてしまったのが、オンロードの走りだ。リーフリジッドながら車軸周りの揺動が少なく、ライントレース性に優れたハンドリングが印象的で、さらに2.4Lディーゼルターボと6速ATのマッチングも良く、速度コントロールも容易。本格オフローダーに不慣れなドライバーにとっても、馴染みやすい運転感覚を持っている。路面あたりも上手な処理も含めて、開発陣がオンロードの走りも相当煮詰めてきたことを実感させられた。
大柄な車体サイズや少し強気な価格設定もあって、万人にオススメできるクルマではないが、パジェロ無き時代の三菱オフローダーの新たなフラッグシップと考えれば、性能面で不満は感じない。アウトドアの相棒として十分すぎる実力を備えている。
ゆったりと動くラダー車特有の癖はあるものの、車体挙動そのものは安定感に富んでいる。オンロードを得意とまではいえないが、NV性能の追求もあって、キャビン快適性もなかなか良好。
パワートレーン | グレード【トランスミッション】 | 価格【4WD】 |
2439cc直列4気筒ディーゼルターボ 204PS/47.9kg・m | GLS【6速AT】 | 498万800円 |
GSR【6速AT】 | 540万1000円 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(三菱)
スターキャンプに新型デリカミニの特設会場が登場! 三菱自動車が主催する夏の一大キャンプイベント「Star Camp2025in朝霧高原」が今年も9/6(土)〜9/8(日)の2日間、富士山の麓、朝霧高原[…]
後退時の踏み間違い衝突防止アシスト機能も強化 今回の改良では、センターコンソールをより高級感のあるデザインへ刷新し、コンソールボックス上部の肘置きスペースを拡大することで、ゆったりとした着座姿勢を実現[…]
アウトランダーPHEVをベースにした新提案 「E:POP(イーポップ)」は、三菱アウトランダーPHEVをベースに開発されたキャンピングカー。SUVとしての走破性やPHEVの電源性能を備えつつ、ポップア[…]
EV走行とハイブリッド走行を両立 搭載される大容量リチウムイオンバッテリーは、街中の移動をガソリンを使わずにこなすことが可能。バッテリーを使い切った後は、2.4Lエンジンによる発電で走行を継続でき、ロ[…]
唯一無二の魅力をさらに磨いて、機能も大幅アップデート! デリカミニは、2023年5月に「eKクロススペース」の実質的な後継モデルとして誕生した、SUVルックが特徴の軽スーパーハイトワゴンだ。今回のモデ[…]
最新の関連記事(SUV)
「ピュア ポジティブ」が体現する、新しいフォルクスワーゲン 「ID.クロス コンセプト」は、人気の「T-クロス」クラスに属する電動コンパクトSUVとして、その手頃な価格帯が注目を集める。デザイン責任者[…]
グロッシーブラックのアクセントで存在感をプラス 今回導入される「XC60 Ultra B5 AWD Dark Edition」は、今年6月に内外装がリフレッシュされた最新のXC60マイルドハイブリッド[…]
55年の歴史に敬意を表した特別なレンジローバー 1970年の誕生以来、レンジローバーは「ラグジュアリーSUV」という新しいカテゴリーを創造し、そのセグメントを常に牽引してきたモデル。 快適な乗り心地と[…]
ボディカラー:MANUFAKTURカラハリゴールドマグノ(マット) 通常モデルでも人気のマットカラーを4色展開 今回導入される「Mercedes-AMG G 63 Black Accent Editi[…]
艶やかなグロッシーブラックのエクステリアパーツを採用 特別仕様車「XC40 Dark Edition」は、フロントグリルをはじめとする各所にグロッシーブラックのエクステリアパーツを採用し、スポーティな[…]
人気記事ランキング(全体)
見た目では用途がわかりにくい、意外性のあるカー用品 世の中には多種多様のカー用品があり、奇抜なものから思わずおっと唸ってしまうようなアイテムがたくさんある。カー用品のお店やECサイトでカーグッズを探っ[…]
コンパクトに収まるベース仕様 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。標準設定としてベッドマット、カロッツェリアの楽ナビ、そして諸費用を含む構成になっている。軽キャンピングカーを求める人に[…]
大人が手にする秘密基地 N-VAN コンポの最大の魅力は、まるで子供の頃に夢見た秘密基地を現実にしたような空間にある。助手席側の大開口部とフラットな床が生み出す自由度は抜群で、サイドオーニングを展開す[…]
全方位型のツインタイプの小型ファン 先日、ヘッドレストに装着するタイプの扇風機を愛車に導入したのだが、ファンとしてはオーソドックスな丸型タイプの扇風機も使う機会があったので、便利そうな2種を紹介してい[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
最新の投稿記事(全体)
車内を快適に! カーエアコンの正しい使い方とは? 車内を快適な温度に保つために必要な、カーエアコンの正しい使い方を4つのポイントから見ていこう。 まずひとつ目のポイントは、カーエアコンの起動タイミング[…]
初期型 NA6CE(1989年) 未知の需要に果敢に挑戦して大ヒットを記録 初代ロードスターこと、「ユーノス・ロードスター(NA系)」が発売されたのは1989年です。年号が昭和から平成に切り替わった年[…]
より精悍な佇まいが楽しめる、新たなパッケージオプション「M Sport Package Pro」 今回、X5とX6に追加される「M Sport Package Pro」は、Mハイグロス・シャドー・ライ[…]
豪華な装備で魅せるEクラスの最高峰 E 53は、 3.0 リッター直列 6 気筒ターボエンジンと電動モーターを組み合わせたシステムトータル出力 585PS(430kW)を発揮するプラグインハイブリッド[…]
見た目では用途がわかりにくい、意外性のあるカー用品 世の中には多種多様のカー用品があり、奇抜なものから思わずおっと唸ってしまうようなアイテムがたくさんある。カー用品のお店やECサイトでカーグッズを探っ[…]
- 1
- 2