
●文:松本隆一/編集部
- 1 異常事態はアル/ヴェルだけじゃない、ミニバン系のオーダーストップが止まらない
- 2 1年も受注が止まっているアルファード、再開するのは今秋と噂される一部改良後が有力
- 3 お盆明けあたりに、動きが出てきそうな兆候が……
- 4 再開しても、〝受注殺到〟→〝抽選〟の流れは避けられない
- 5 〝抽選〟の確率を上げる、4点セット(条件)とは?
- 6 一つ目は「残価クレジット」。転売ヤーの対策できることもあって、使うことを推奨される
- 7 二つ目は「アル/ヴェルからの買い替え」 転売しないお客さんと歓迎される
- 8 「メンテナンスパックの購入」と「ボディコーティング」を付けてくれるユーザーは、商売的なメリットから大歓迎
- 9 商売なのでより利益をもたらすユーザーを優先する、これは仕方ない流れ
- 10 値引きは望み薄だがリセールは絶大、売却時にモトは取れる
異常事態はアル/ヴェルだけじゃない、ミニバン系のオーダーストップが止まらない
松本 いまトヨタのミニバンがえらいことになっているね。まともに売っているのはシエンタだけだ。あとはみんなオーダーストップ(受注停止)になっちゃっている。
担当 ユーザーは〝買いたくても買えない〟セールスマンは〝売りたくても売れない〟っ状態ですね。
松本 一番の売れ筋のノア/ヴォクシーは来年初頭に予定されているマイナーチェンジまでストップするようだ。
担当 ありゃ、年内は絶望的ですか……このあいだグランエースとハイエースもストップしましたね。アルファード/ヴェルファイアはもうずーっと止まっているし……あれ? アル/ヴェルってまともに販売していた時期ってありましたか?
松本 昨年6月にフルモデルチェンジしてすぐにオーダーストップとなってしまったよ。各地のトヨタの正規ディーラーが割り当て台数分をあっという間に受注して……はい、おしまい(笑)
担当 今風にいえば、秒で終了!(笑)。なんと、アル/ヴェル、もう1年間もまともに販売してないんですね……再開はいつになるんですか?
月刊自家用車本誌でお馴染みの松本隆一氏。新車購入ひとすじ40年以上のキャリアを持つ「値引きの神様」であり、これまでに多くのユーザーの新車購入をサポートしてきている。毎週火曜日の12時~17時に(一部休みの日もあり)クルマの購入に関しての電話相談(03-5830-0267)も実施しているので、新車購入で困ったことや商談テクニックを知りたいならばなんでも相談して欲しい。(メールでの相談にも対応。https://form.run/@jikayosha03まで)
1年も受注が止まっているアルファード、再開するのは今秋と噂される一部改良後が有力
松本 アル/ヴェルは今秋、一部改良を予定していて新型の発売を機に販売を再開するっていわれている。現時点(7月中旬)でトヨタの販売店に公式コメントを求めると「再開についてはまったくわからない」ってお決まりの回答が返ってくるけど、現場のセールスマンの対応はちょっと違う……以前に比べて、あきらかに変化が出てきているよ。
担当 おっ、どんな感じですか?
松本 月刊自家用車では「X氏の値引き大作戦」って読者参加企画シリーズを連載しているよね。そのX氏のひとりが一部改良後のアル/ヴェルに狙いをつけて、交渉を開始しようとしている。で、先日、最寄りのトヨタの販売店をまわってセールスマンに購入の意思を伝えたところ、「まだなんの情報もおりてきていない」と前置きしながらも「なにかわかったらすぐに知らせる!」と、これまでに見られない積極的な対応だったそうだ。
発売直後に1年分以上の予定生産台数を売り切ってしまい、あっという間にオーダーストップになってしまった現行アルファード&ヴェルファイア。契約者への納車は順調に進んでいるようだが、それに伴い中古車市場にも多くの中古車が流れており、新車価格の1.5倍程度のプライスを掲げる個体も珍しくはないほど。
お盆明けあたりに、動きが出てきそうな兆候が……
担当 それって、過去のケースからすると「再開は近い」っていうサインでもありますよね。
松本 そこで、いつも情報を提供してくれているトヨタのセールスマンの何名かに探りを入れてみたところ、どうやら「お盆明けに動きがある」ようだ。トヨタの場合、新型発売の1か月くらい前になると先行販売を開始するケースが多い。アル/ヴェルの一部改良が9月だとすると「お盆明けに先行販売開始」というタイムスケジュールには信憑性があるね。
担当 再開となると「待ってました!」と注文が集中するでしょうね。
松本 それは間違いない。1年間もオーダーストップしていたんだから、全国に「アル/ヴェルが欲しい! 出たらすぐ買う」ってユーザーがたまりにたまっているね。
担当 ……でしょうね、わっーって殺到しますよね。
松本 しかし、トヨタのディーラーには販売できる割当台数が決められている。これを売り切ったら、その時点でオーダーストップつてことになるわけだ。
贅を尽くしたキャビン空間が楽しめることが人気を集める大きな理由。海外でも人気が高いようで、1年前の導入直後の中古車オークションでは、海外への輸出を前提とした超高価取引も珍しくなかったほど。
再開しても、〝受注殺到〟→〝抽選〟の流れは避けられない
担当 割当台数を超える購入希望者があった場合、抽選とかになるわけですか?
松本 表向きは「抽選です」っていって予約を受けるケースも多いけれど、そこはそれ、ディーラー側の事情でユーザーを〝選(よ)り分ける〟こともあるとみていい。誤解をおそれずにいわせてもらえば、既納客、つまり取引のあるユーザー、平たくいえばお得意さんを優先するってことはあると思う。したがって「トヨタ車を所有しているユーザーはそのクルマを購入したディーラーに声をかけてみる」ことをお勧めする。もっとも、だからといって確実に買えるってわけではないけどね。
担当 やっぱり複数の正規ディーラーに申し込んだほうがいいですよね。
松本 そのとおり。アル/ヴェルの購入を本気で考えているなら、いまから最寄りの経営の異なるトヨタの正規ディーラーをかたっぱしからまわって、しっかりと購入の意思を申し出ることをお勧めするね。
(トヨタの販売店は原則として都道府県単位のフランチャイズ制を採っており、トヨタ店とトヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4系列に分かれている。また、最近は前述の系列を統合して「トヨタモビリティ」の名称をつけた販売店もある。店名が違えば、経営資本が異なるため競合させることが可能)
兄弟車のヴェルファイアも人気殺到でオーダーストップが続いている。アルファードに比べるとターボ車が設定されていたり、サスチューンがスポーティ寄りだったり、走りも重視するユーザーからの人気が高い。将来的にリセールは、趣味性が高いヴェルファイアの方が強くなる可能性が高い。
〝抽選〟の確率を上げる、4点セット(条件)とは?
担当 なるほど。ところで、アル/ヴェルを確実に入手するって方法、ありませんか?
松本 絶対確実ってわけじゃないけど「かなり確率が高くなる」って条件はあるね。
担当 おおっ、それ、おしえてください。
松本 トヨタのディーラーを取材したら出てきた情報なのだけど、アル/ヴェルを入手するための〝4点セット〟ってのがあるそうだ。
担当 4点セットですか……
松本 第一に「残価クレジットの利用」だ。通常のディーラーローンでもいいけど、いま〝残クレ〟が主流で、分割払いっていうとほとんどのユーザーがこれを利用する。
(残価クレジット【略称·残クレ】=5年後(3年後の場合もある)の残価(下取り査定額)を〝先取り〟して新車を購入するシステム(オープンエンド方式)。たとえば、諸費用を含めた総額が300万円のクルマで、5年後の残価(想定される下取り額)を80万円とした場合、220万円を5年間の分割で支払う。5年後にクルマを返却してもいいし、再び残クレを組んでもいい。また、80万円を支払って買い取ることも可能)。
一つ目は「残価クレジット」。転売ヤーの対策できることもあって、使うことを推奨される
担当 現金購入じゃなくて、残クレ優先ってことですね。金利が稼げるからですか?
松本 それもあるけれど、転売を防止するって意味も大きいようだ。アル/ヴェルは中古車市場で人気がめちゃ高い。それも新車がオーダーストップとなると、新車価格を上回るプレミアム付きの高値で売買されることになる。だから、新型アル/ヴェルを買ってすぐに売却して儲けようという人も出てくる。30~40万円の上乗せは当たり前で、うまくいけば50万円を大きく上回る利益が出るってきくね。
担当 いわゆる〝転売ヤー〟ですね。ランクル300も同じことが起きていましたよね。
松本 トヨタ側は転売ヤーをこころよく思っていない。3年ほど前、ランクル300が発売されたとき、一部のディーラーでは契約の際、客から「購入してすぐに転売はしません」などと記した書類にサインをもらっていた……なんて話も伝わっているよ。でも、すぐにやめたようで、新型アル/ヴェルでは聞いたことがないね。もっとも、そのかわりというわけではないと思うけれど「残クレ優先」という、ディーラーが目立つようになってきた。
担当 転売ヤーは現金払いでしょうね。
松本 そうだね。それに残クレを利用すると、転売の際には残債を清算して所有権解除を申し出なければならない。この時点で、ディーラーは転売をキャッチできるわけだ。
担当 「転売しないでください」って頼むんですか?
松本 そんなことはいえないよね……けど、「いくらで売るつもりですか?」って聞くことはできるよね。売却価格がわかったら「うちでその値段で買い取ります」って申し出るらしい。
担当 なるほど。私だったら「ちょっとイロをつけてくれたら喜んで売ります」っていいますね(笑)。
松本 ともあれ、残クレを利用するユーザーは転売する確率は小さいっていわれてる。危ないのは現金購入ってことで、残クレ優先となるらしい。
リセールが強いことが分かっているため、残価設定率も良好。3年程度でクルマを買い替えているユーザーにとっても、アルファードの残クレはメリットが大きい購入手段といえる。ちなみに契約終了後に残価を支払えば、クルマをディーラーに引き渡す必要はない。そのまま乗り続けてもいいし、その時に買取店の相場価格が高ければ買取店に売却するのもOK。クルマの価値をしっかりと見極められるユーザーならば、躊躇することなく残クレを使っていい。
二つ目は「アル/ヴェルからの買い替え」 転売しないお客さんと歓迎される
担当 で、4点セットの二つ目は?
松本 「アル/ヴェルからの買い替え」だね。既存のユーザーなら転売なんてすることはあまりないし、なにより中古車としての価値が高いアル/ヴェルを下取りというかたちで仕入れることができるので、ディーラーにとってメリットが大きい。
担当 なるほど。じゃ、三つ目にいきましょう。
先代のアルファード&ヴェルファイアは2015年デビュー。普通のクルマなら買取金額は振るわなくなる時期だが、アル/ヴェルは別格。10万キロ近い個体でもちゃんとした値段が提示される。認定中古車としても売りやすいクルマなので、積極的に仕入れしたい思惑があって、先代オーナーは優遇されるというわけだ。
「メンテナンスパックの購入」と「ボディコーティング」を付けてくれるユーザーは、商売的なメリットから大歓迎
松本 「メンテナンスパックの購入」だ。これは定期点検費用や車検費用の先取りで、近年、ディーラーが積極的に販売を進めている商品のひとつだ。1年先、2年先、場合によっては車検費用まで新車の購入と同時に支払ってもらえるんだから、ディーラーにとってはおいしいよね。四つ目は「ボディコーティング」だ。アル/ヴェルクラスのコーテイングとなると10万円以上の値をつけていることが多い。利益率が高くて〝半分〟は儲けなんていわれている。これまたディーラーにとってはおいしい商品だ。
クルマさえ売ってればいい、というのはもはや過去の話。最近のディーラーは整備だけのお客さんも歓迎しており、新車販売の段階からメンテナンスパックを売って、しっかりと囲い込みたいという思惑がある。ちなみに一般的に勧められるメンテナンスパックの内容は、必要十分なものが揃っており、そのいずれもが特に割高ということもない。ユーザーサイドにとっても、メンテナンス費用を購入予算に繰り込むことができるので、メリットは十分にある。
担当 要するに「残クレ」「アル/ヴェルからの買い替え」「メンテナンスパック」そして「ボディコーティング」が4点セットの中身ってわけですね。
松本 そのとおり。この4点セットを付けて購入するって申し出ると、ディーラー側は優先的にアル/ヴェルを販売してくれる……っていわれているんだ。もちろん確証があるわけではないし、そんなことを公言しているディーラーはない。でも、ほとんどのセールスマンが否定はしないね。
担当 4点セットを付けて申し込むと、購入できる確率が高くなるってわけですね。
松本 そのとおりだ。「アル/ヴェルからの買い替え」って項目はユーザーが限定されるけれど、ほかの3点は選択できるから、試してみてもいいよね。
キレイな状態で乗り続けたいというならば、ボディコーティングは効果も確かでオススメできるメニューのひとつ。ただ契約時に勧められるディーラーOPのボディコーティングは価格的に高価なものもあるので、しっかりと損得勘定を考えたい。
商売なのでより利益をもたらすユーザーを優先する、これは仕方ない流れ
担当 ディーラーがそういう条件を優先するって問題ありませんか?
松本 不公平感を持つユーザーもいると思うね。でも、ディーラーの肩を持つわけじゃないけれど、商売なのでより利益をもたらすユーザーを選んで取引をするっていうのは当然といえば当然だね。問題はないと思うよ。
担当 なるほど。アル/ヴェルが優先的にまわってくるなら、試してみる価値はありますね。残クレがいやだったら、購入してからすぐに解約してもいいですよね。
松本 メンテナンスパックとボディコーティングが嫌いな人もいるかもしれないけれど、付けておいても損はないだろう。
値引きは望み薄だがリセールは絶大、売却時にモトは取れる
担当 ところで、新型アル/ヴェルって値引きは期待できますか?
松本 残念ながら望み薄だ。おそらく値引きの基本は車両本体から3~5万円、付属品割引は10%ってとこだろう。トヨタのディーラー同士の競合にもち込んで、車両本体と付属品の値引き合計が15万円程度になれば特上クラスってとこだね。
担当 厳しいですね。
松本 ただし、リセール価値がめちゃくちゃ強いので、買い替えの際に大きな恩恵が受けられる。値引きは小さくても買い得感は大きいよ。
現行型はキャビン機能の進化に加えて、走行性能や安全運転支援機能の向上も著しい。その走りは一昔前のミニバンとは比べられないほど安全かつ洗練されている。完成度の高さもあって、今後安定した車両供給が続くようになったとしても、高値安定の相場が維持されるのは間違いない。5年後、7年後に手放すときでも、下取/買取の金額は大いに期待していい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トヨタ)
アウトドアに最適化された外観 まず目を引くのは、アウトドアギアのような無骨さと機能美を感じさせるエクステリアだ。純正の商用車然とした表情は完全に姿を消し、精悍なライトカスタムやリフトアップ、アンダーガ[…]
「未来の国からやって来た」挑戦的なキャッチフレーズも話題 初代の「A20/30系セリカ」は1970年に登場しました。ちょうどこの時期は、モータリゼーション先進国の欧米に追い付けという気概で貪欲に技術を[…]
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応 オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。[…]
人気のメーカーオプションが一部グレードで標準装備化 今回の改良では、人気のメーカーオプションが一部グレードで標準装備化されることで、商品力を強化。 具体的には、Xグレードを除く全グレードにETC2.0[…]
サイドソファとスライドベッドがもたらす“ゆとりの居住空間” 「BASE CAMP Cross」のインテリアでまず印象的なのは、左側に設けられたL字型のサイドソファと、そのソファと組み合わせるように設計[…]
人気記事ランキング(全体)
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応 オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。[…]
一年中快適。冷暖房完備の“住める”軽キャンパー これまでの軽キャンパーに対する常識は、スペースや装備の制限を前提とした“妥協の産物”という印象が拭えなかった。しかしこの「TAIZA PRO」は、そんな[…]
サイドソファとスライドベッドがもたらす“ゆとりの居住空間” 「BASE CAMP Cross」のインテリアでまず印象的なのは、左側に設けられたL字型のサイドソファと、そのソファと組み合わせるように設計[…]
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]
最新の投稿記事(全体)
3年ぶりの総合優勝を目指し、3台体制で参戦 今年で30回目を迎えるAXCRは、例年の約2000kmから約2500kmへと総走行距離が延長され、競技期間も8日間に延びるなど、例年以上に過酷な設定で競われ[…]
鉄粉やドロ、油などの汚れが蓄積されがちなホイール 普段の洗車で、ある程度洗えていると思っていても、実は、汚れを見落としがちなのがホイールだ。最近は、複雑な形状のものも多く、なかなか細部まで洗浄しにくい[…]
アウトドアに最適化された外観 まず目を引くのは、アウトドアギアのような無骨さと機能美を感じさせるエクステリアだ。純正の商用車然とした表情は完全に姿を消し、精悍なライトカスタムやリフトアップ、アンダーガ[…]
「未来の国からやって来た」挑戦的なキャッチフレーズも話題 初代の「A20/30系セリカ」は1970年に登場しました。ちょうどこの時期は、モータリゼーション先進国の欧米に追い付けという気概で貪欲に技術を[…]
スノーピークが特別出展「キャンパーの食卓」も登場 スターキャンプは、1991年から続く三菱自動車が主催する名物オートキャンプイベント。これまで1万組以上の家族が参加し、自然の尊さを学びながら、家族や仲[…]
- 1
- 2