〝速さ〟だけが高性能モデルの魅力にあらず、新世代レクサスの凄みに脱帽 「LEXUS LBX MORIZO RR」試乗レポート

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

高性能モデルの概念を変える、上質な走りに驚き

「LBX MORIZO RR」をざっくりと言ってしまうと、LBXにGRヤリスのパワーユニットを移植して誕生したモデル。そんな経緯もあって、GRヤリスの単なるボディ違いの姉妹車かと想像してしまうが、試乗してみると走りはまったく別物。MORIZO RRは“高性能”の考え方がGRヤリスとは異なることに気付かされる。

主要諸元(LBX MORIZO RR)●全長×全幅×全高(mm):4190×1840×1535 ●ホイールベース(mm):2580 ●車両重量(kg):1440  ●パワーユニット:1.6ℓ直3DOHCターボ ●最高出力:304PS/6500rpm ●最大トルク:40.8kg・m/3250~4600rpm ●トランスミッション:8速AT ●タイヤ:235/45R19 ●0−100km/h加速:5.2秒

標準系(ハイブリッド)と車体寸法を比較すると、差は全幅が+15mm、全高が−10mm。ほぼ同サイズであり、見た目の印象も大きくは変わらない。ただ、フロントバンパーサイドへの水平フィンの設置や、バンパー右内部に置かれたオイルクーラーからの排風など、空力の改善と高性能対応のための変更が施されている。

まずコーナリングの感覚からして違う。MORIZO RRは、各輪に掛かる荷重の配分や増減具合の感覚が掴みやすく、ステアリング操作の結果も予想しやすい。荷重が掛かった時にどうクルマが応えてくれるのか? と、対話にも似た想いを抱きながら走らせるのがとにかく楽しい。同じ状況をGRヤリスで走るとしたら、否応にも路面へのトラクションのかかり具合を意識したシビアな走らせ方が求められるが、MORIZO RRだとそんな窮屈な想いは無縁。国産屈指の“超高性能モデル”であることは間違いないが、そのスペックの余裕をファントゥドライブの質の向上に振り向けていることは、最速であることが求められるGRヤリスとは対象的に感じる。

国内レクサスとして初めてになるMT車も設定

また、トランスミッションに6速MTが用意されていることも嬉しいこだわり。オートマの8速ATでも、街なかやサーキットで十分な性能を感じることができるが、操ることを重視したいユーザーにとっては朗報に思えるはずだ。

1.6ℓ直3ターボエンジンはGRヤリスと同型になるが、徹底的な軽量化やトルク重視のチューニングなどで差別化。ミッション制御も変速時にエンジン回転を同調させる工夫が加えられる。GRヤリスとは違った、レクサスらしい洗練された走りを楽しむことができる。

304psの最高出力を誇るターボは、低負荷域でのコントロール性も良好で、駐車場などでの狭い場所でも取り回しも不満なし。サスもストロークを存分に使うタイプで、スポーツモデルらしい硬さは感じるが、神経に障るような突き上げ感はない。タウン&ツーリング中心でも不足ない乗り心地だ。こういった普段使いでも乗りこなせてしまうチューニングは、いかにも最近のレクサス車らしい美点のひとつ。質感もあれば同乗者に対する気遣いもある本格スポーツモデルに仕立てられている。

特別なLBXであることは間違いないが、一部の特殊なユーザー向けのモデルではないことに好感を覚える。ハイブリッド搭載の標準車以上に高価なクルマだが、多くのドライバーに高性能の頼もしさとファントゥドライブを理解してもらうために生まれたモデルなのだ。

マニアックな高性能スポーツぶりを意識させないのはインテリアも同じ。一般用途での座り心地とサポート性の両立を図った専用フロントシートや、アルミパッドを用いたペダルなどモリゾーRR専用の意匠&装備も施されているが、LBXのキャビンの雰囲気は損なっていない。

ウルトラスウェードと本革を組み合わせた豪華な内装加飾に、表皮一体発泡構造のスポーツシートやアルミペダルなどを装着。

MORIZO RRでも、オーダーメイドシステム「Bespoke Build(ビスポークビルド)」を用意。シート表皮色やシートベルト、ステッチ糸の色替えなどが豊富なバリエーションから選択可能になる。

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