
7月17日に東京・渋谷で自動車メーカーのスズキが技術戦略説明会を開催した。モノづくりへの姿勢を始め、これからの世界規模での環境対策やさまざまな商品展開に関わる技術展示がされており、とても興味深い内容になっていた。ここでは今後のパワートレーン展開を中心に触れていきたい。
●文:月刊自家用車編集部
展示された新ハイブリッドシステム
スズキは日本国内では現在、エンジン側にモーターを配置するベルト駆動システムのISG(Integrated Starter Generator)を多くの車種に搭載している。2010年に誕生したアイドルストップ、2012年からのエネチャージが進化した形態だが、これは分類でいえば12V仕様のマイルドハイブリッド。電動による走行アシストはあくまでも補助的な範囲にとどまり、高速走行時や高負荷時にはその効果をあまり期待できないものだ。
しかし、今回展示された新しいハイブリッドシステムはこれまでとは大きく異なるものだった。エンジンとトランスミッションの間に挟まる形となるコンパクトな電動システムは、電動主体の走行も可能なストロングハイブリッドを視野に入れたもの。その名称も次世代ハイブリッド「スーパーエネチャージ」だ。
スイフトの Z12型1.2Lエンジンに「スーパーエネチャージ」を組み合わせた次世代ハイブリッドシステム。
既に欧州モデルでは導入されている48V仕様のマイルドハイブリッドシステムと同様に駆動は48Vで行われるが、ベルト駆動から機械的なギヤ駆動システムとすることで回生エネルギー取得量の大幅な向上が期待できる。また、小型車が多いスズキにとってエンジンルーム内でいかにスペースを取らないかも重要課題。それに応えるため、モーター内蔵モジュールの寸法は現状他社比の半分という、世界最薄設計を目指しているという。今回展示されていたのは、最新のスイフトに搭載されているZ12型1.2LエンジンとCVTユニットの間に電動ユニットを挟み込んだ仕様だったが、説明されなければ分からないほどに薄型のものだった。まだ開発途中のため、仕様は未確定とのことだったが、当面のところ冷却は自然空冷になりそうだ。
また、組み合わせるエンジンとトランスミッションの種類が多いこともとてもユニークな点だ。先述した通り、今回の展示は1.2Lエンジン+CVTだったが、これは1.5Lや660cc、またATやMTとの組み合わせも自在にできるという。欧州を始め、インドやアジア圏など幅広い仕向け地に最適化した仕様を作れるのが大きなメリットだ。もちろん、電動システムと切り離せない駆動用バッテリーの仕様もさまざまなものに対応する。マイルドハイブリッドで十分ならば、現状と変わらない助手席下のコンパクトなバッテリーサイズ、ストロングハイブリッドが必要ならさらに大きなバッテリーを搭載……といった具合だ。
スズキのクルマ作りの根幹となる「小・少・軽・短・美」は、小さくて軽いクルマであれば、走行時はもちろんのこと、製造時やその後のリサイクルの面まで含めて非常に合理的だ。必要とされるものは不足なく、過剰は不要というミニマリスト的な考え方は今の時代にピッタリなのは間違いない。
「小・少・軽・短・美」をコンセプトに開発された新型e-アクスル
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スズキ)
社員食堂で提供していたインドの故郷の味を、本格カレーとして製品化 スズキは、1980年代初頭にインドとの合弁事業として「マルチ・スズキ・インディア」を設立して以来、インド市場で確固たる地位を築いている[…]
前後バンパーの形状を変更。ボディカラーは新色を含む全12色を設定 改良モデルでは、これまで愛されてきた楕円形をモチーフとしたデザインを継承しつつも、より現代的で充実感のあるエクステリアへと進化。具体的[…]
使い勝手と快適性を両立した室内空間 名前の「アーレ」はドイツ語で“すべて”を意味する言葉。その名に違わず、このモデルには、軽キャンパーに求められるほとんどすべての装備が標準で備わっている。電子レンジや[…]
エブリイ“ワゴン”をベースにしたことで得た快適性 RS1+のベースとなるのは、スズキ・エブリイワゴン。同じくATV群馬が展開する「RS1」がバン仕様であるのに対し、RS1+は乗用モデルならではの快適性[…]
3つのルーフシェルフで居室スペースを損なわずに収納力アップ! 軽バンがベース車の軽キャンパーは就寝定員2名というのが一般的。手軽に車中泊が楽しめるキャンピングカーとして人気だが、釣りなど趣味をともなう[…]
人気記事ランキング(全体)
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
快適性を追求した軽キャンの完成形 「ミニチュアクルーズ ATRAI」は、岡モータースが長年にわたり築き上げてきた軽キャンパー製作のノウハウを、現行アトレーのボディに惜しみなく注ぎ込んだ一台である。全長[…]
最新版CarPlay・Android Autoに対応するワイヤレスアダプター スマホと連携して、様々なサービスを使用できるディスプレイオーディオ、接続には大きく分けて、ケーブルを利用する場合とワイヤレ[…]
濡れ物・汚れ物も気にしない。唯一無二の「防水マルチルーム」 イゾラ最大の特徴とも言えるのが、車両後部に備えられた「防水マルチルーム」だ。これはレクビィ独自の装備であり、実用新案登録もされている。アウト[…]
最新の投稿記事(全体)
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
最新改良で新しい外装塗料を採用。美しさと耐久性が向上している 5月に実施された一部改良(7月より改良モデルは発売)では、外装の美しさと耐久性を向上させつつ、原材料費の高騰に対応した価格改定を実施。この[…]
最新改良で2WDモデルを廃止。全車4WDモデルのみのラインナップへ 2024年11月に実施した最新改良では、従来はメーカーオプションだった機能の一部グレードで標準装備化が図られた。 具体的には、Xグレ[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]
- 1
- 2