
暑さが厳しくなると、クルマのエアコンを使用する機会が増えてきます。特に真夏の炎天下では、車内を快適な温度に保つために、エアコンはフル稼働を強いられることになるでしょう。しかし、エアコンの使用すると燃費に悪影響が出てきます。最近はガソリン価格も高騰しているため、燃料代の負担もバカにできません。快適な車内温度を維持しながら、燃費への影響を最小限に抑えるには、どのようなドライブをすればいいのでしょうか?
●文:月刊自家用車編集部(ピーコックブルー)
真夏のドライブは、エアコンの影響で燃料消費量は12%ほど悪化する
環境省によると、エアコンを使用するとエンジンに追加の負荷がかかり、結果として燃料消費量が12%程度は悪化するそうです。
エアコンのコンプレッサーが、燃費を悪化させる犯人
エアコンを構成する部品は、主にコンプレッサー/コンデンサー/エキスパンションバルブ/エバポレーター/レシーバードライヤーの5つ。これらの部品が連動することで、車内の温度を調整します。
そして車内の空気を冷やすために「冷媒」と呼ばれる特殊な液体が必要。この冷媒がエアコンシステム内の5つの部品を循環することで、高圧から低圧、または低圧から高圧に変化。その過程に熱が吸収/放出され、その仕組を上手に利用することで冷たい空気が吹き出してきます。
その循環の過程の中で問題になるのがコンプレッサーです。
冷媒を圧縮することで気体(空気)の温度を変化させる役割を持ちますが、このコンプレッサーが作動する時にエンジンに負荷がかかってしまいます。当然、その分だけガソリンを多く使うことになりますので、燃費が悪化してしまいます。
どうしても夏場はエアコンがフル回転になるわけですから、それだけエンジンに負担をかける=ガソリンをたくさん使うことになるのです。
設定温度を上げても、燃費改善の影響は限定的
そこで気に留めたいのが、エアコンの適切な温度設定について。
燃費を気にするあまり、暑さを我慢してエアコンの設定温度を高めにしてしまうユーザーも少なくないのですが、これは実は得策とは言えません。
家庭用エアコンは設定温度を下げるほど電力消費が増えていきますが、クルマのエアコンは全く別の仕組みで動作しています。
クルマのエアコンは、コンデンサーで高温高圧の液状の冷媒を冷却(熱交換)することで低温化を図り(この段階では高圧の液状のまま)、その後にレシーバードライヤーとエキスパンションバルブを介する過程で低温低圧の霧状に変化させる。その霧状となった冷媒をエバポレーダーで循環する際に室内の空気を冷却(ここで吹き出し口から冷えた空気が吹き出す)、霧状の冷媒をコンプッサーで高圧化して液状に変化させ、再びコンデンサーに戻る仕組みになる。
そのため、設定温度が低すぎても高すぎても、コンプレッサーは稼働するので、燃費への影響はさほど変わりません。
エアコンの設定温度は25℃が推奨、吹き出し口の角度も重要
自動車総合部品メーカーのカルソニックカンセイ株式会社によると、エアコンの温度設定は、日本車では「25℃」、欧州車では「22℃」が推奨されています。
個人の体調や好みによって最適な温度設定は変動するでしょうが、基本的には推奨温度を中心に考えるのがいいです。
意外と効果的なのが、エアコン吹き出し口の角度。熱が籠りやすい後部座席に冷風を効果的に供給したい場合は、中央にあるベント吹出口を後席に向けるのが最適だとされています。
車両の左右にもベント吹出口がありますが、サイドウィンドウガラスに接しながら流れていくため、風温が高くなり効率が落ちてしまうそうです。
こうしたエアコンの仕組みを理解することで、真夏の快適なドライブを楽しめるでしょう。
なお、燃費を気にするあまり、エアコンの使用を極端に控えることは安全面からNGです。
エアコンの仕組みを理解し、適切な使用方法を知ることで燃費を抑えられます。燃費と快適性、そして安全性のバランスを考慮しながら、賢くエアコンを活用してください。
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