
2023年4月にインドで販売が開始され、日本でもこの秋に発売が予定されているスズキのコンパクトSUV「フロンクス」。スズキの世界戦略車として、すでに中南米や中近東、アフリカでも販売されており、現地でも好評を博しているという。ここでは新型フロンクスの魅力を、もう少し掘り下げてみてみよう。
●文:松村透
存在感抜群のクーペスタイル、このクラスではかなり希少
インドで生産されるフロンクスは、日本導入時には輸入車扱いとなる。その「輸入車」という先入観を抜きにしても、「都会的」「洗練された」といった表現を積極的に使いたくなる存在感を放つスタイリングは、垢抜けた印象を受ける。
正式発売前に、プロトモデル試乗会は実施済み。走りの面でもプレミアムさを感じるモデルに仕立てられている。
上級を意識した内外装仕立てで、新たなユーザー層の獲得を狙う「新しいコンパクトSUVの市場を切り拓く」そんな狙いを持って、この秋インドから日本国内への導入が予定されてい[…]
特にLEDライトを効果的に用いたフロントマスクなど表現などは、これまでのスズキのクルマたちとは少し異なる趣があって、存在感も抜群。コンパクトクラスのライバルたちと比べても引けを取らず、ひとクラス上以上の高級感すら感じさせてくれるのだ。
フロンクスの外観はかなり垢抜けた印象を受けるフロンクス。クーペライクなイメージが強く「洗練された」という表現を積極的に使いたくなる存在感を放っている。
フロンクスのフロントおよびリヤのアップ。LEDデイタイムランニングランプのシャープさとリヤのLEDリアコンビランプの造型はひとクラス上以上の高級感を演出しているといっていい。
日本の道路事情に合わせて、独自のセッティングが施されている点も大きな魅力
それでいてクルマの中身に関しても、かなり本格的に煮詰められていることが見逃せない。
フロンクスには骨格や主要部品を全面的に刷新した、高い剛性と軽量化を実現した新たなプラットフォーム「ハーテクト」を採用。このハーテクトは、現行スイフトやハスラーをはじめとする多くの現行モデルに採用されているプラットフォーム。走行性能に優れた影響を与えることでも知られており、当然その最新仕様が奢られているフロンクスは、走り自慢に仕上げられている。
後輪へ駆動力を伝えるドライブトレーンにも徹底した制震振動対策を施すことでノイズの発生を抑制。2WD車と同等の静粛性を手に入れている。
パワートレーンは、1.5L直列4気筒エンジンにISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を組み合わせたマイルドハイブリッドで、CVTではなく6速ATと組み合わされる。駆動方式は2WD(FF)と4WDの2種類。足まわりのセッティングは日本の道路事情に合わせたチューニングが行われており、輸入車扱いではあるものの、ほぼ日本車のような感覚で運転できる。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤがトーションビーム式。低重心のフロンクスに最適化することで、コーナリング時のロール抑制や段差乗り越えの衝撃緩和が図られている。
ボディ構造にも徹底した遮音対策を実施。雑味感が強い高周波の音を大幅に低減することで、走行ノイズも大きく抑え込んでいる。キャビンへ音の侵入を許さないことで静粛性とプレミアム感を高めている。
ACCは全車速対応型でシートヒーターも装備。立体駐車場にも収まる低めの全高も嬉しいポイント
フロンクスのボディサイズは、全長3995mm×全幅1765mm×全高1550mm。
全幅は1700mmをオーバーしているため3ナンバーとなってしまうが、全長はわずかながら4000mmを切っているため、コンパクトSUVのなかででも小柄な部類といえるだろう。
全高も立体駐車場にも収まるサイズであり、最小回転半径はクラストップレベルの4.8mを実現。さらに、ACCは全車速に対応するなど、スタイリングだけでなく、普段使いでも便利さを感じられる、いかにもスズキらしいSUVに仕立てられている。
高級感の演出にひと役買っている、ブラック&ボルドーの配色は国内仕様専用というフロンクスのキャビン。
目を惹く内装レベルの高さ、1ランク上の質感も武器のひとつ
そして目を惹いてしまうのが、内装の質感の高さ。高輝度シルバー塗装の加飾やシルバーステッチを施したレザー調&ファブリックシート表皮、レザー調ドアアームレスト表皮を採用したキャビン空間は1クラス上とも戦えるレベル。冬場にあると嬉しいシートヒーターも装備されているなど、ユーザーが求める「かゆいところに手が届く」ポイントを押さえている。
フロンクスのフロントシートおよびリヤシート。シルバーステッチを施したレザー調&ファブリックシート表皮、レザー調ドアアームレストが高級感を演出。クーペスタイルのSUVゆえ、購入検討時にはリヤシートの天井高はチェックポイントのひとつ。
あとは価格次第、「賢者の選択」となりうるか否か?
気になるフロンクスの価格は、現時点(2024年9月)ではまだ確定情報は得られていない。しかし「この価格でこの質感のクルマが買えるのか!」といった期待を抱かせるに充分な価格設定にする可能性がある。
フロンクスのメーターパネル。各種メッセージはパネル中央のモニターに表示される。スピードメーターは220km/hまで目盛られる。手前にはパドルシフトの「+」「-」の記号が見える。
SUVというと300万円オーバーの高価格帯のモデルをイメージしがちだ。だが、いまやコンパクトSUVには、トヨタ「ヤリスクロス」「ライズ」、マツダ「CX-3」、ホンダ「WR-V」、ダイハツ「ロッキー」そしてスズキ「ジムニーシエラ」などを含めると、まさに「群雄割拠」ともいえる状態。そのなかでも直接のライバルはWR-Vになるだろう。ユーザーにとっては魅力的なモデルが増えることは大いに歓迎したい。
すでに8月から全国各地のスズキディーラーや商業施設などで先行展示会が開催されている。いち早く実車をこの目で見てみたいという人はインターネットで「新型フロンクス先行展示会情報」と検索すれば、各都道府県の最新情報が掲載されている(日々更新される)ので、気になる方はチェックしてみて欲しい。
スズキにとっての自信作といえるフロンクスは、価格次第で「賢者の選択」となりうる存在だ。現在、WR-Vをはじめとする競合車の購入を検討しているとしたら、フロンクスの実車を見たり、試乗してから決断を下すことをオススメしたい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スズキ)
専用サイトを通じて最新情報は随時更新予定 「e VITARA(以下e ビターラ)」は、EVらしい洗練された先進性とSUV特有の力強さを兼ね備えたデザインが与えられた、スズキの世界戦略モデル。 今後、グ[…]
BEVになっても、実用性に優れる美点は変わらない e VITARA(以下eビターラ)は、スズキがインドで生産し日本に輸入するSUVタイプのBEV。今後、世界各地で販売が始まるなど、スズキの世界戦略車と[…]
社員食堂で提供していたインドの故郷の味を、本格カレーとして製品化 スズキは、1980年代初頭にインドとの合弁事業として「マルチ・スズキ・インディア」を設立して以来、インド市場で確固たる地位を築いている[…]
前後バンパーの形状を変更。ボディカラーは新色を含む全12色を設定 改良モデルでは、これまで愛されてきた楕円形をモチーフとしたデザインを継承しつつも、より現代的で充実感のあるエクステリアへと進化。具体的[…]
使い勝手と快適性を両立した室内空間 名前の「アーレ」はドイツ語で“すべて”を意味する言葉。その名に違わず、このモデルには、軽キャンパーに求められるほとんどすべての装備が標準で備わっている。電子レンジや[…]
最新の関連記事(SUV)
欧州仕様車には、2.5Lガソリン・Mハイブリッドを搭載 CX-5は、2012年に導入されて以来、マツダの主力商品として世界100以上の国と地域で販売され、グローバル累計販売台数は450万台以上を記録す[…]
メモリアルモデルにふさわしい、特別な内外装加飾を装着 特別仕様車「“THE 70th”」は、日本の風景との調和を意識した特別なバイトーンのボディカラー(プレシャスメタル×プレシャスホワイトパールとプレ[…]
新色2カラーの追加に加えて、安全装備を大幅に引き上げ クロストレックは、コンパクトなボディに本格的なSUV性能を兼ね備え、都会からアウトドアまで幅広く使えるクロスオーバーSUV。 今回の改良では、ボデ[…]
BEVになっても、実用性に優れる美点は変わらない e VITARA(以下eビターラ)は、スズキがインドで生産し日本に輸入するSUVタイプのBEV。今後、世界各地で販売が始まるなど、スズキの世界戦略車と[…]
人気のカントリーマンDをベースに、専用ボディーカラーを採用 2023年に登場したMINI カントリーマンは、従来のモデル名だったMINI クロスオーバーから名称を変更。MINIシリーズに共通するデザイ[…]
人気記事ランキング(全体)
奥まで届く薄型設計で内窓掃除が快適に 近年の車はフロントガラスの傾斜が鋭角になり、従来の内窓ワイパーでは掃除しづらいケースが増えている。特にプリウスなど一部車種ではダッシュボード付近に大きなモニターや[…]
ポップアップルーフがもたらす圧倒的な開放感 まず注目したいのは、ポップアップルーフによって実現した最大2000mmという室内高。この高さがあることで、室内で立ったまま着替えたり、作業したりすることがで[…]
気になっていた折りたたみ式サンシェードを購入 近年の日本の夏の暑さは尋常ではない。今年も6月から猛暑日があったり、この先が思いやられる暑さが続いている…。 この高気温のせいで、駐車中の車内の温度はかな[…]
引っ張るだけでOK、瞬時にセット完了 ロール式サンシェードの最大の魅力は、その操作の簡単さにある。取り付けは非常にシンプルで、工具も必要なくサンバイザーに専用パーツを固定するだけ。その状態でロール部分[…]
2代目ローレルは、ケンメリスカイライン(4代目)とシャシーを共有する兄弟車だった 2代目のローレルは1972年の4月に発売されました。この頃のローレルの日産内の立ち位置は“高級GT”といった感じで、ス[…]
最新の投稿記事(全体)
夏の猛暑も怖くない、ロール式サンシェードが作る快適空間 夏のドライブで誰もが感じる悩みは、車内の暑さだ。炎天下に駐車すれば、シートやダッシュボード、ハンドルが触れないほど熱くなる。さらに紫外線による内[…]
暗所の映像も鮮明に記録。2つのカメラにSTARVIS技術搭載センサーを採用 ドライブレコーダーのトップブランド、コムテックが新たにリリースした新機種、ZDR-850Rは、前後2つのカメラで全方位を記録[…]
座るだけでクールダウン 夏のドライブが快適になる最新カーシート 夏の車内は、ただでさえ暑い。長時間の運転や渋滞に巻き込まれたとき、背中やお尻の蒸れが不快感を倍増させる。そんな夏の悩みを一気に解消するの[…]
大阪の商人らしい、「商いのうまさ」で誕生したコンパーノ コンパーノは、ダイハツが戦前から築き上げてきた商用車メーカーとしての地位から、乗用車市場へと本格的に参入する転機となった記念すべきシリーズモデル[…]
タウンエースベースが生む、扱いやすさと拡張性 「Plaything Ace SP」のベース車両は、トヨタ・タウンエース。取り回しの良さと荷室の広さを両立したミドルサイズバンで、日常使いでも不便を感じに[…]
- 1
- 2