この冬、新車購入を考えているならば、勝負は年明けの1月がベスト。特に1月第一週の「初売り」セールは、良い条件が出る可能性が高く、積極的にディーラーを訪れるべきなのだ。月刊自家用車でお馴染みの「値引きの神様」松本隆一が「初売り」での商談のやり方を解説します。
●文:松本隆一
理想は年内に1回目の商談、そして年明けに一気に決めるやり方
松本 いま新車市場では、1年で一番の〝最大の売り込みキャンペーン〟が始まっている。
ーー歳末商戦ってやつですか?
松本 いやいや〝初売り〟の話だ。以前は新車ディーラー(販売店)も〝歳末大売出し〟みたいなキャンペーンを仕掛けてきたが、最近は流行らない。新車ディーラーに話を聞くと「歳末というと〝残り物を売る〟みたいなイメージがあるので、新車という商品にはそぐわない。それより〝初売り〟のほうが新鮮でインパクトは強く、ユーザーを惹きつけることができる」そうだ。
ーーでも、12月から〝初売りセール〟ってやるわけにはいかんでしょ?
松本 それが近頃はやるんだなあ。12月から堂々と「初売り先取りキャンペーン」とか「新春プレ商談会」なんて、はでなノボリを立てて賑々しくフェアを開催しているよ。最近はメーカー主導によって全国規模で仕掛けてくるところも目立つね。
ーーいつからですか? その傾向は。
松本 10年くらい前から新車ディーラーは〝初売り重視〟に動いてきたね。むかしは4月から翌年3月までの「年間決算」を重視していたから、3月末日の年度末にこだわっていたけど、最近は毎年2~3月に登録が集中することが関係各所から嫌がられているらしく、それなら売り込みの時期を繰り上げて、買う気満タンのユーザーを取り込もうということで、新年早々の初売りがクローズアップされているのよ。
ーーなるほど。登録を4月以降に繰り越すって手があるけれど、これはやりたくないことですよね。その年度の販売実績が減っちゃいますからね。だから、売り込みを早く仕掛けて登録を繰り上げようって作戦に出てきたわけですね。
松本 その通り。以前は「1月は初売り」「2~3月は年度末」とキャンペーンをふたつにはっきりわけていたけれど、最近は「初売り」を明らかに重視していて、実質的に12月からスタートしている、っていってもいいかも知れない。新車納期の不透明感が払拭されないこともあって、ディーラーには「なるべく早く決めてもらわないと決算の実績に間に合わない」って意識があるからね。
ーーとなると、ユーザーも早めに仕掛けたほうがいいかもしれませんね。
松本 そうなんだよ。いま新車を考えているならば、なんとか正月休み前のディーラーに出向いて商談を開始。年明けの初売りで一気に契約するって戦術がいい。
1月4日と5日は、クルマが安く狙える勝負の日
ーー具体的なスケジュールを教えてください。
松本 じゃ、ズバリいこう。来年(2025年)の新車ディーラーの初売りフェアは全国的に1月4~5日(土・日)と11~13日(土・日・祭日)だ。ここを狙う。
ーー正月の休み明け早々には決着をつけちゃうわけですね。
松本 その通り。ディーラーにはフェア期間中に契約台数を1台でも多く取りたいって思惑があるから、値引き条件が緩くなることは間違いない。さらに付属品を〇万円分プレゼントなんて特典をつけてくることも多い。さらになんちゃら招待券とかクーポン券とか、レトルト食品詰め合わせとか、いろいろなお年玉がもらえる(笑)。
ーーかつては「現金つかみ取り」なんて露骨なこと、やってたとこもありましたね(笑)。
松本 こうした特典はほとんどの場合、原則、契約者に限定されるから、ユーザーとしては初売りフェアで注文書にサインするようにもっていきたいわけだ。
候補車が多く、すべて試乗したいと思っているなら、この週末(12月21~22日)に最初の商談をもってくるといい。ここでは候補車のチェックと試乗を中心におこなって、下取り車があれば査定してもらう。本格的な値引き交渉は控えめにして、軽く見積もりを出してもらうくらいにしておくほうがいいだろう。ただし、次の3点はしっかり伝えておくこと。
1つ目が「クルマを買うことは間違いない」
2つ目が「こちらのクルマは本命だ」
3つ目が「でも、ほかにも有力候補があって迷っている」
ーーいつも松本さんがいっている交渉開始の〝3点セット〟ですね。これで、セールスマンにはホット客(買う意思の強い客)であることをしっかりアピールすることができますね。
松本 さらに「家族はライバル車を推している」「私はこちらのクルマが最有力だ」「初売りには決めるつもりだ」といった情報も伝えておくといい。
ーーしっかり〝前振り〟をしておくわけですね。
年内の契約を迫られても、初売りはもっといい条件になる可能性が高い
松本 かりに年末休みまでの1週間に「年内に契約してくれたら特別な条件が出せます」なんていってきたとしても、
「年内には決められません。初売りで契約するつもりです。財布を握っているのは妻なので勝手に決めることはできないんですよ。ところで、その〝年内だけの特別条件〟だけど、年が明けてもセールスさんの力でなんとかしてくれるって期待してます」とかいっておけばいい。
そして年明けの4~5日の初売りでディーラーを訪れる。こんどはライバルの支払い条件などを伝えて本格的な値引き交渉に入るわけだ。
たとえば、アクアが本命だったら、フィットやノートとの競合を伝えて、
「妻が推しているホンダ(日産)はいきなり〇万円引きで、支払い総額は〇〇万円を出してきました。決めるといえばさらに上乗せがありそうです。アクアとは〇万円以上の差がついているので、トヨタは旗色が悪いですよ」
なんていうと効果的だね。
ーーそういわれれば「うちも頑張ります!」ってことになりますよね。でも、セールスマンから、「じゃ、いますぐ決めてください。特別な条件が出せます」なんて攻め込まれたら、どうしますか?
松本 条件に納得できるならば、それで決めていい。納得できないなら第2ラウンドとなる11日からの3連休で再勝負するべきだな。
ーーいずれにせよ、契約交渉でははっきりと希望の支払い総額を伝えて「OKならこの場で決めます!」とやるわけですね。
松本 前述のアクアだったら、ここで経営資本の異なるトヨタどうしの争いを明らかにして〝値引きで勝負〟をかけるといいだろう。たとえば、
「ホンダ派の妻をなんとか説得してアクアにすることにしました。ただし、別のトヨタがかなりの好条件を出してくれていて『初売りフェアならご希望に添えると思います』みたいなことをいってきています。でも、支払い条件だけで決めるつもりはありません。クルマは買ってからの付き合いも大切なので、担当セールスさんの人柄や営業所の雰囲気も重要な要素になります。今回、複数のトヨタのディーラーをまわったけれど、正直、こちらで買いたいと思っています。新年早々、気分よく契約したいと思っているので、へたな駆け引きはしたくありません。これ以上、他社と競合させるつもりはないので、思い切った条件を出してください。納得のいく条件を出してくれたら、この場でサインします」
なんてやるといいね。
ーーう~ん……そんな風に迫られたら、初売りでテンションがあがっているセールスマンはイチコロですね(笑)。
松本 とはいえ「納期をできるだけ早くしたい」という人には1月4~5日に契約することをオススメする。原則、納期は先着順なので、契約が急増する初売り第2ラウンドとなる11日からの3連休になると、納車が遅れてしまうからね。ともあれ、このところ新車販売がいまひとつなので、新車ディーラーはいつになく初売りに気合を入れているよ。
ーー来年の初売りは間違いなく割安な購入ができるチャンスなんですね。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(イベント)
「Modulo 30th Anniversary」と銘打ったコンテンツが目白押し 「Modulo THANKS DAY 2025」は、ホンダアクセスが手掛ける純正カスタマイズブランド“Modulo”の[…]
今年は31台のクルマがノミネートされ、投票で今年の顔となるイヤーカーが選ばれる 「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は、日本のモータリゼーションの発展と、コンシューマーへの最新モデルおよび最新技術の周知を目[…]
オーテックオーナーが一同に会する名物イベント 11月16日(土曜)に開催された「AOG(AUTECH OWNERS GROUP)湘南里帰りミーティング2024」は、2004年にメーカー主催によるオーナ[…]
往年のNISMOモデルがデモ走行を実施。歴代のレーシングカーが揃い踏み 今回で25回目となる今年の「NISMO Festival」では、今年で40周年を迎えたNISMOブランドを記念した特別企画を実施[…]
最新の保健福祉・介護・リハビリの最新情報が発信される、業界注目の名物イベント 「H.C.R.」は、そもそも何のことでしょう? まずは聞きなれない方も多いと思うので、そのあたりの基礎知識からおさらいさせ[…]
人気記事ランキング(全体)
なぜ消えた?排気温センサー激減のナゾ 排気温度センサーは、触媒の温度を検知し、触媒が危険な高温に達したときに排気温度警告灯を点灯させるためのセンサーだ。このセンサーは、いつのまにか触媒マフラーから消滅[…]
東洋工業(マツダ)は、戦後復興に貢献した3輪トラックのトップメーカーだった プロ野球チーム広島東洋カープは、かつて野武士集団にも形容された個性的なこの市民球団の歩みは、長く球団オーナーを務める松田家が[…]
日本車が手本とした、美を優先する伊デザイン。その代表が117クーペ 日本において、商品のデザインが売れ行きを大きく左右することに最初に気づいたのは、松下電器器具製作所(後の松下電器産業、現パナソニック[…]
+ネジはナメやすい!確実に外すためには…? 数あるハンドツールの中で、ドライバーはもっとも使用頻度が高い物の一つにあげられる。 ところが、意外に正しい使い方をしている人は少ない。ネジを緩めたり締めたり[…]
ある日突然点灯したマークに困惑…。なにコレ? いつもの見慣れた、マイカーのインパネ(インストルメントパネル)に、突然、見慣れぬマークが点灯…。 「ん? 何だこの表示は…? 変なところ触っちゃったかな…[…]
最新の投稿記事(全体)
オーテックの独自チューニングが注がれた、純正カスタマイズモデル 今回導入されるノート オーラ「AUTECH SPORTS SPEC」は、「AUTECH」シリーズとして、ハンドリングや加速感をチューニン[…]
フロントとリヤに床下ブレースを採用することで、ねじり剛性を強化 レクサスのスポーツモデル「LC」は、2017年の発売以降、基本性能の改良を重ねながら進化を続けている、フラッグシップスポーツに相当するモ[…]
理想は年内に1回目の商談、そして年明けに一気に決めるやり方 松本 いま新車市場では、1年で一番の〝最大の売り込みキャンペーン〟が始まっている。 ーー歳末商戦ってやつですか? 松本 いやいや〝初売り〟の[…]
低燃費性能や省資源化といったサステナブル性能も追求 2024年2月に発売された「REGNO GR-XⅢ」(レグノ ジーアール・クロススリー)は、深みを増した空間品質と磨き抜かれた走行性能に加え、低燃費[…]
2026年からグローバル市場への投入を予定しているEV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」 ホンダは2024年1月の「CES 2024」においてHonda 0シリーズと、その開発アプローチである「Thi[…]
- 1
- 2