
『東京オートサロン2025』のTOYOタイヤブースに、ひときわ異彩を放つハイパーカーがディスプレイされた。レッドブルのリバリーをまとったこの1台は、マクラーレン P1を魔改造した「マクラーレン P1 GTRX MadMac」。パワートレーンは1000psを発生するトリプルローター+ターボエンジンに換装。”マッドマイク”ことドリフトレーサーのマイケル・ウィデットが製作に関わった空前絶後のドリフトマシンだ。
●文:月刊自家用車編集部
約3億5000万円のマクラーレンP1 GTRを魔改造!
生産台数わずか375台で市販価格は約1億円というマクラーレン P1が発表されたのは2013年のこと。そのマクラーレン P1をさらにサーキット専用車としてメーカーが仕立てリリースしたのがマクラーレンP1 GTRであり、ここで紹介する「マクラーレンP1 GTRX MadMac」は、このP1 GTRをワンオフカスタムしたものだ。
P1 GTRは発表当時で30〜35台の生産台数を企図し、すでにP1を購入済みのカスタマーのみ購入権利があったというから、P1 GTRを手にするにはその車体価格約3億5000万円に加え、P1購入代金の約1億円が必要となり、合計約4億5000万円以上が必須というスーパーレアモデルである。
そんな希少車をパワートレーンまで交換してしまったP1 GTRX MadMacは、これまたニッチなドリフトマシンにカスタムされており、贅沢にもほどがあるワンオフモデルに仕上がっている。

マクラーレンのサーキット専用車・P1 GTRをベースにドリフトマシンへと魔改造された「マクラーレン P1 GTRX MadMac」。ニュージーランド出身のドリフトレーサー“マッドマイク”ことマイケル・ウィデットがプロダクトを率いたワンオフモデルだ。
ボディワークはランザンテとロケットバニーによる共同制作。ベースになったP1 GTRをさらに過激なフィニッシュへと導き、ドリフトマシンらしく走行性能を十分に担保したうえで、観客に“魅せる”ことを意識した仕上がりになっている。
マクラーレンとドリフトレーサー、そして日本との奇妙な縁
マクラーレン P1 GTRX MadMacのプロダクトは、ドリフトレーサーの“マッドマイク”ことマイケル・ウィデットが大きく関わった。
ニュージーランド出身のマイケル・ウィデットは、幼少期からレースに参加し、モトクロスに出場した際のケガも厭わぬアグレッシブな走りから「マッドマイク」のニックネームで呼ばれ、長じてはロータリーエンジン搭載車でドリフトレースに参戦して頭角を現し、現在では世界を代表するドリフトレーサーのひとりとして人気を博している。
かつてRX-7/RX-8/ロードスター/ルーチェセダンといったマツダ車ベースのドリフトマシンのみならず、ランボルギーニ ウラカンのドリフトマシンでもレースに出場しているマッドマイク。彼がステアリングを握る最新のドリフトマシンのベースがマクラーレン P1 GTRだ。
マクラーレンといえば、創始者はニュージーランド出身で1950〜60年代に活躍したF1パイロットのブルース・マクラーレンであり、マッドマックにとっては故国の大先輩に当たる。
さらに、P1 GTRX MadMacには日本と密接な縁がある。製作を担った英国のランザンテは、1995年にマクラーレンF1 GTRがルマン24時間レースで初出場/初優勝を飾った際のレーシングチームであり、このチームには日本人初のルマンウイナー・関屋正徳選手が所属。そしてスポンサーを日本の国際開発が務めていた。
ニュージーランド出身の英雄が創設したブランドと、ニュージーランド出身でマツダのロータリーエンジンを愛するドリフトレーサー、そしてルマン24時間レースを契機としたマクラーレンと日本の関係など、マクラーレン P1 GTRX MadMacにはさまざまな“縁”が結集した、じつに興味深いプロダクトになっている。
マッドマイクが用いるすべてのマシンに共通するレッドブルのリバリーが施される。リヤミッドには、オリジナルの3.8リッターV8ツインターボに換えて、Madlab製3ローター20Bターボエンジンを搭載し、ボディワークは大胆に手が加えられている。
トリプルローター+ターボは、2リッターで1000psを発揮
マクラーレン P1 GTRX MadMacが履くTOYOタイヤのPROXES R888R/R888RDも注目だ。
TOYOタイヤはD1グランプリなどドリフト競技を支えてきたタイヤメーカーであるのはもちろん、世界中の名だたるカスタムチューナーが制作するハイパーカーが、最高速度300km/hオーバーを実現するための切り札としてTOYOタイヤを採用していることは見逃せない。
ニュージーランドのハンプトンダウンズに構えるマッドマイクのワークショップ・MADLABで組み上げられたP1 GTRX MadMac。ステアリングやブレーキをチューニング&交換する過程で、マッドマイクは元々搭載されていたマクラーレン製3.8リッターV8ツインターボエンジンを、1000ps仕様の2リッタートリプルローターターボエンジンに換装。
Madlab製3ローター20Bターボエンジンは、ギアチェンジや空転をさらに容易として、ドリフトに特化したマシンへとマクラーレン P1 GTRを昇華させ、2024年のモータースポーツイベント『グッドウッドフェスティバルオブスピード』でのお披露目では、ギャラリーから大歓声を浴びている。
3ローターエンジンには、ウェイストゲート付きのギャレット製G45ツインターボを装着。マフラーはチタン製を採用する。パドルシフトはGT3スタイルのステアリングホイールに取り付けられ、改造されたゲーミングスタイルのギアシフター、油圧ハンドブレーキをインストール。
夢のハイパードリフトマシン・マクラーレン P1 GTRX MadMac
トランスミッションはマクラーレンのオリジナルシーケンシャルギアボックスを用い、ロータリーエンジンとマッチングさせるため特注のトランスファーケースを設計し作成。
さらにドリフトに必要なステアリング回転を提供するステアリングラック、特注ホイール、完全な制御を確保するカスタムしたハルテック製ECUとダッシュボードをインストールし、GT3スタイルのステアリングホイールにパドルシフトギアチェンジを取り付け、ゲーミングスタイルのギアシフター、油圧ハンドブレーキなどを装着する。
日本のボディキットデザイナーであるロケットバニーと協力して、マクラーレン P1 GTRの彫刻的なボディワークを強化および強調するなど、内外装にわたって大胆なカスタムが施された。
過去の歴史から現在に至るまで、日本とも密接な関係をもつマクラーレン P1 GTRX MadMac。日本のドリフトレースでもその勇姿をぜひ見たいものだ。
2024年に開催された英国のモータースポーツイベント「グッドウッドフェスティバルオブスピード」で実走行を披露。集まった観衆から大喝采を浴びていた。
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