
ルノーの主力モデルとなるコンパクトSUVの「キャプチャー」がマイナーチェンジを実施。2025年6月12日より日本での販売が開始される。新しいモデルの特徴は、どんなものなのだろうか?試乗した印象をお伝えしよう。
●文/写真:鈴木ケンイチ
ビッグマイナーで商品力を強化。国産ライバルがひしめく超激戦区に殴り込み
ルノー・キャプチャーは2013年に初代モデルが誕生し、2019年に現行の2代目モデルが登場している。全長4.3mほどのBセグメントSUVの欧州におけるパイオニア的な存在であり、2014年と2020年に欧州コンパクトSUVのナンバー1を獲得している。これまで世界市場で200万台以上を売る、ルノーの基幹モデルだ。
BセグメントのSUVは、今や日本においても人気のジャンル。このクラスには、ヒット車であるトヨタ・ヤリスクロスをはじめ、ホンダ・ヴェゼル、日産・キックス、そしてレクサス・LBXが顔を揃える。ただし、価格を考えると、日本車の中でもハイブリッドのFFモデルが420~520万円となるLBXが、リアルな比較対象となるだろう。
また、輸入車コンパクトSUVとしては、フォルクスワーゲンのT-CrossとT-Rocが販売上位に並ぶが、キャプチャーはサイズと価格帯的に、その2台の間になる。小さく安いT-Crossと、大きく高いT-Rocの間に、キャプチャーは見事に位置しているのだ。
●主要諸元(エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド)
全長×全幅×全高(mm):4240×1795×1590 ホイールベース(mm):2640 トレッド【前/後】(mm):1555/1540 最低地上高(mm):172.5 車両重量(kg):1330 パワーユニット:1330cc直列4気筒ターボ(158PS/27.5kg-m)+モーター(3.6kW/19.2Nm) ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)ディスク(R) サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーションビーム式(R)タイヤ:225/45R19
ルノーの新しいデザイン言語をもとに、スタイリングを再構成
そんなキャプチャーのマイナーチェンジの内容は、エクステリアとパワートレーン&グレード編成の一新、そして先進運転支援システムの充実がポイントになる。
デザインは「ルノーの新しいデザイン・テイストであり、モダンでアサーティブである」とルノー・ジャポンのスタッフは説明する。ちなみに“アサーティブ”とは、強い主張を持ちつつも調和を忘れない、というものだ。
ルノーの新しいデザインテイストが反映されたフロントマスクを採用し、リヤエンドにもクリアレンズ化されたLEDランプ、新デザインのリヤバンパーなどが用いられることで、モダンさが際立つスタイリングに仕立てられている。
グリルの中心には新しいデザインのルノーのロゴ(ルノーはロザンジュと呼ぶ)を据え、その左右にはポリカーボネート素材を使用したモダンなブロック模様が配されている。角ばったヘッドライトと、バンパーの上部に穿かれた開口部の組み合わせから得られる印象は、角ばったロボットのような顔つき。ユニークで強い個性を感じることができる。
パワートレーンは、1.6Lの4気筒エンジンと2つのモーターを組み合わせたルノー独自の「E-TECH」と呼ぶフルハイブリッドと、1.3Lの4気筒ターボエンジンに小さなモーターと12Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせるマイルドハイブリッドの2タイプ。どちらも駆動方式はFFのみとなる。
マイルドハイブリッドは、最高出力158ps、最大トルク270Nmを発生するシステムで、燃費は17.4km/L(WLTCモード)。トランスミッションには電子制御7速AT(7EDC)が組み合わされる。
グレード構成は3モデルとなり、上位が「エスプリアルピーヌ フルハイブリッドE-TECH」(454万9000円)、真ん中が「エスプリアルピーヌ マイルドハイブリッド」(409万円)、エントリーが「テクノ マイルドハイブリッド」(389万円)となる。
新開発ターボ搭載のMハイブリッドは、ホットハッチの面影が宿る
今回の試乗モデルは、エスプリアルピーヌのE-TECHモデルとマイルドハイブリッドモデル。どちらも「エスプリ」を名乗っており、装備は同じで、異なるのはパワートレーンだけだ。
最初に感心したのは、キャビンの質感とセンスの良さだ。青いステッチを使ったバイオスキンのシートやインテリアは、スポーティでありながらも上品さがある。ドアの内張にはムーディなアンビエントライトも仕込まれているし、10.4インチの縦型ディスプレイも見やすく扱いやすい。このカテゴリーの日本車とは一線を画すクオリティだ。しなやかな印象のデザインは、ライバルとの異なる趣がある。
インパネ中央部には新たに10.4インチ縦型タッチスクリーンの「10.4 インチ マルチメディア openR link」が装備され、最新モデルらしくCarPlay™とAndroid Auto™にワイヤレスで接続が可能。
走りの印象は、マイルドハイブリッドもフルハイブリッドも“よく走る”というもの。ただ、その2つのキャラクターはハッキリと異なっている。
1.3Lターボのマイルドハイブリッドは、とにかく俊敏。走り出した瞬間から、「クルマが軽い!キビキビ動くなあ」と思わせてくれる。19インチの225/45R19アルミホイール&ミシュラン「eプレマシー」の乗り心地はソリッドで、スピードを上げるほどに硬さが気にならなくなる。最高出力116kW(158PS)・最大トルク270Nmを7速ATのパドルシフトで操りながら、ワインディングを気持ちよく駆け上がることができる。絶対的な速さはないが、まるでホットハッチのような楽しさがある。
一方、フルハイブリッドのE-TECHは、しっとりとした落ち着きある動きが印象的。マイルドハイブリッドよりも車両重量で+90㎏の重さが良い方向に利いているのだろう。さらにモーター駆動を併用することもあり、トルクの立ち上がりが早い。街中でよく使う、ハーフスロットルの加速では、レスポンスの良さと力強さを感じさせてくれる。
ちなみに、キャプチャーのマイルドハイブリッドの116kW(158PS)やE-TECHの105kW(143PS)というスペックは、競合の中でも頭一つ抜け出たもの。兄貴分となるアルカナと同じパワートレーンを、小さな車体に載せるキャプチャーであるから、よく走ることも当然のことだろう。
オススメは、エスプリアルピーヌのMハイブリッドモデル
最上位グレードとなる「エスプリアルピーヌ フルハイブリッドE-TECH」(454万9000円)は、唯一のフルハイブリッドであることと、エスプリ専用内装、バイオスキン&ファブリックのコンビシート、そして19インチのアルミホイール&タイヤを装着しているのが特徴。
中位の「キャプチャー エスプリアルピーヌ マイルドハイブリッド」(409万円)は、パワートレーンが違うだけで、内装もホイールも上位と同じ。それでいて価格は、上位よりも45万9000円も安い。
エントリーの「キャプチャー テクノ マイルドハイブリッド」(389万円)は、シートがファブリックとなり、アルミホイール&タイヤが18インチになる。ただし、目玉の運転支援機能と10.4インチのマルチメディアディスプレイ、メーターは、上2つと変わらないにもかかわらず、価格はさらに20万円ほど安くなっている。
ざっくりいうと、パワートレーンの価格差が45万9000円で、内装&シート&ホイールの価格差が20万円という計算が成り立つ。これをふまえると、マイルドハイブリッド車の方がお買い得感が相当に高い。特にエスプリアルピーヌのマイルドハイブリッド車のオススメ度は際立っており、かなりオススメしたい一台だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
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