
ボルボで最も小さなEVである「EX30」に新グレードが導入され、これまでのモノグレードから一気に5グレード編成に拡大した。今回はその中でも最も注目を集めているフラッグシップの「クロスカントリー」に試乗。
●文/写真:鈴木ケンイチ ●写真:月刊自家用車編集部
ラインナップを大幅拡充
「EX30」は2023年11月に日本に導入されたボルボ最小の新世代モデルEVだ。サスティナブルであることをテーマに、ボディのアルミニウムや鉄、プラスチックだけでなく内装材などにも、リサイクル素材を積極的に採用。ボルボとして最小のカーボンフットプリントを実現するほか、クリーンでスタイリッシュな内外装デザインも高く評価されている。
操作系は徹底的に物理スイッチが排除されていて、オーディオスピーカーをサウンドバーに集約することで、ドアからスピーカーを排除しているのもユニークな点。
最初に導入されたのは、後輪1モーター仕様のみ。バッテリー容量69kWh、モーター出力200kW(272PS)の「EX30 Ultra Single Motor Extended Rang」(559万円)が導入されていた。
そんな「EX30」だが、この8月からは、1モーターの「Plus」グレードが2つ、上位設定となる2モーター仕様(4WD)が2グレード追加された。その2モーター仕様のうち、最上位モデルとなるのが、本国スウェーデンで発表されてまもない「クロスカントリー」だ。
今回のラインナップ強化により、「EX30」は、エントリーからミドル、上位まで5グレードを擁するワイドラインナップを実現。価格帯でいえば479万円から649万円まで幅広いレンジから選ぶことができる。
「EX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performance」(649万円)
最上位となる「クロスカントリー」グレード。専用のエクステリアとサスペンションを採用している。4WDで航続距離は500km。
「クロスカントリー」はSUVテイストを高めた最上位モデル
今回試乗した「EX30クロスカントリー」は、SUVテイストを高めたモデル。マットブラックの前後パネルとホイールアーチエクステンション、20mm高められた最低地上高、専用サスペンション、専用19インチホイールなどが採用されている。
スウェーデン最高峰となるケブネカイセ山脈をモチーフにしたデザインがフロントのマットブラックパネルに刻まれるなど、随所に北欧の雄大な自然を感じさせるユニークなデザインが散りばめられることも見どころのひとつ。
インテリア&機能も、シートの座面の20mm拡大や、回生ブレーキの効き目の増加(フリー、弱め、強めの3段階を選べる)、インフォテイメント系へのクアルコム・スナップドラゴンの採用など、今回の新グレード導入に合わせて、いくつかの改良が施されている。
なかでも注目したいのは安全性能で、クルマの前部両サイドのミリ波レーダーと、ドライバーモニタリング・システムを追加。「EX30」は小さなモデルではあるが、このあたりのコダワリぶりはさすがボルボと唸らされる。
スタイリッシュでも、実用的なインテリア
運転席に座ったときに最初に感じたのは、物理スイッチをミニマムにしたスタイリッシュなインテリアでありながらも、「意外と実用性が高いな」ということだ。
運転席と助手席の間にあるドリンクホルダーは引き出し式で、必要ないときは収納もできる。スマートフォンを置くためのセンター部の収納も大きく、ドアポケットもしっかりと使える。室内側のドアノブは輪のようになっており、操作もしやすい。斬新なデザインを注ぎつつも、日常域での使い勝手もしっかりと考えられている。
また、スマートフォン感覚で付き合えるインフォテインメントシステムの出来の良さも好印象。ディスプレイに表示される文字や数字は小さめだが、出来の良い音声入力やGoogle機能のおかげもあって、使いたい機能に簡単にアクセスすることができる。音声だけでナビの操作もしっかりとこなしてくれる。
無駄のないすっきりとしたインテリアはボルボならでは。シンプルな中にも最新機能が盛り込まれている。
特徴的な角マル四角のステアリングだが、操作性はとても良好。センターコンソールに配された縦長のインフォテイメントパネルも使いやすい。
サウンドバーに集約されたハーマン&カードンのオーディオシステムを搭載。透明感の高い音質が楽しめる。
収納も可能なドリンクホルダー。スタイリッシュでありながら実用性も高い。
大きななガラスルーフでのため、車内にいながら自然を満喫できるのも魅力。光を積極的に採り入れる工夫は北欧ならでは。
ゆったりとしたハンドリング感覚
まず走ってみて感じたのは静粛性の高さ。静音対策の恩恵もあってか、インバーターが発する高周波が上手に抑え込まれている。ハンドルの手応えも軽く、そしていい意味での遊びがある。
足回りはしっかり感が強く、あまりロールしないタイプ。ただ、「クロスカントリー」は、他グレードよりも、柔らかめのサスペンション設定とエアボリュームの大きなタイヤを履いているためか、ゴツゴツとした嫌な硬さは感じない。“しっかり&ゆったり”と表現するような乗り心地だ。
そんなおおらかなセッテイングに比べると、対象的に思えるのが加速性能。フロント115kW(156PS)とリヤ200kW(272PS)の2モーターをフルに働かせれば、0-100km/h加速は3.7秒。実際、アクセルを深く踏み込めば、驚くほどの加速力を味わうことができる。バッテリーのおかげで重心が低く足回りもしっかりしているため不安感は皆無。ちなみに1モーター仕様だと0-100km/h加速は5.3~5.7秒だというから、その違いは明らかだ。
今回の試乗で印象に残ったのは、とてもゆったりとした気分になれたこと。スタイリッシュで高品位なインテリアはさすがボルボ!というものだし、航続距離や加速力も優秀だ。もちろんボルボらしい高い安全性も確保されている。おしゃれで高性能なEVが欲しいというユーザーには、ぴったりな1台だろう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ボルボ)
タフな外観とサステナブルな内装 今回導入されるEX30 Cross Countryは、EX30の都市部での快適な走行性能や機能性をそのままに、ボルボのCross Countryの伝統を引き継ぎ、キャン[…]
ボルボの主力モデルがビッグマイナーを実施 ボルボのミッドサイズSUV「XC60」は、これまで世界で150万台以上を販売してきた、ボルボの屋台骨を支えるモデル。現行モデルは2017年に日本に導入され、日[…]
センターディスプレイのグラフィックを最新インターフェイスに刷新 ボルボV60シリーズは、2024年には日本国内で約2200台が販売されるなど、XC40、XC60に次ぐ人気を持つエステートモデル。特に日[…]
11.2インチ画面とSnapdragon搭載で、UX機能が大きく進化 今回の改良モデルでは、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上や内外装のリフレッシュ、快適性・安全性・環境性能の改善が図られている。[…]
デビューから9年、毎年国内でも約1000台ペースで売れ続けている、ボルボのベストセラーモデル ボルボXC90は、ボルボラインナップの頂点となる3列シートの7人乗りのラージSUV。トップモデルの価格は1[…]
最新の関連記事(ニュース)
世界最大級の水素工場が、再生可能エネルギー世界をバックアップ 2020年、福島県浪江町に誕生した「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」。約18万㎡の広大な敷地に設置された20MWの太陽光発電[…]
音も排気もないキッチンカーが示す、未来のレストランのかたち 真夏の日差しがアスファルトを照りつける中、福島県・郡山市の街中で一角だけ風がスッと通り抜けるような爽やかな空気に包まれた空間があった。 そこ[…]
邪魔をしないコンパクトなカメラで死角を消しさる優れモノ 「車種別サイドカメラキット」は、クルマの左サイドの死角をモニターに映し出すことで、ドライバーが普段見えない範囲を視覚で確認させてくれるユーティリ[…]
数々の注目パーツを実際に試せる!「ジムニーフェア 2025」 9月20日(土)~21日(日)の2日間「ジムニーフェア 2025」がイエローハット新山下店で開催される。スズキ・ジムニー用に工夫が凝らされ[…]
移動の楽しさを追求した、免許不要の新モビリティ 「e-SNEAKER」は、「すべての人が自由に移動できる社会」を目指し開発された歩行領域モビリティ。近年、地方を中心に交通機関の減便や免許返納者の増加が[…]
人気記事ランキング(全体)
夏に強く、冬に優しい! 快適環境を作り出す設備がフル標準装備 今回紹介する軽キャンパーは、福岡県柳川市でキャンピングカーの製作や販売をしているカーショップ スリーセブンのアトレー パーム。同車の2代目[…]
防音断熱や車内クーラーなど車中泊仕様の基本装備が充実! RVビッグフットは埼玉県東松山市と北海道函館市に店舗を構えるキャンピングカー専門店で、自社開発のキャンピングカーのラインナップも充実。 バンコン[…]
移動の楽しさを追求した、免許不要の新モビリティ 「e-SNEAKER」は、「すべての人が自由に移動できる社会」を目指し開発された歩行領域モビリティ。近年、地方を中心に交通機関の減便や免許返納者の増加が[…]
圧倒的な高性能ぶりでライバルを圧倒したN360だが、当時の世評は世知辛くて…… 1967年春にホンダが発売した軽自動車のN360は、レースでの活躍ですでに世界に名を轟かせていた同社の2輪車用をベースと[…]
軽バンベースのキャンパーとは一味違う本格的な軽キャブコン モーニングワン キャンパー ジャストを販売するのは神奈川県愛甲郡愛川町にある新相武株式会社。トラック架装を得意とし、一方でキャンプ場の運営にも[…]
最新の投稿記事(全体)
世界最大級の水素工場が、再生可能エネルギー世界をバックアップ 2020年、福島県浪江町に誕生した「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」。約18万㎡の広大な敷地に設置された20MWの太陽光発電[…]
邪魔をしないコンパクトなカメラで死角を消しさる優れモノ 「車種別サイドカメラキット」は、クルマの左サイドの死角をモニターに映し出すことで、ドライバーが普段見えない範囲を視覚で確認させてくれるユーティリ[…]
音も排気もないキッチンカーが示す、未来のレストランのかたち 真夏の日差しがアスファルトを照りつける中、福島県・郡山市の街中で一角だけ風がスッと通り抜けるような爽やかな空気に包まれた空間があった。 そこ[…]
ラインナップを大幅拡充 「EX30」は2023年11月に日本に導入されたボルボ最小の新世代モデルEVだ。サスティナブルであることをテーマに、ボディのアルミニウムや鉄、プラスチックだけでなく内装材などに[…]
コンパクトでもパワフル!車好きに嬉しい電動エアダスター2タイプ登場 車の手入れや掃除を快適にしてくれる、新しいツールが登場した。エレコムが新発売した「電動エアダスター」は、コンパクトサイズながら驚くほ[…]
- 1
- 2