マセラティ「グランカブリオ」試乗【美しさとスリルが味わえるイタリアンラグジュアリー】│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

マセラティ「グランカブリオ」試乗【美しさとスリルが味わえるイタリアンラグジュアリー】

マセラティ「グランカブリオ」試乗【美しさとスリルが味わえるイタリアンラグジュアリー】

マセラティの優美な4座オープンカー「グランカブリオ(Gran Cabrio)」を試乗する機会を得た。どのようなクルマであったのかをレポートしよう。

●文/写真:鈴木ケンイチ

550馬力の3リッターV6ツインターボを搭載

100年を超える歴史を持つ、イタリアの高級ブランド「マセラティ」。現在の主力モデルのひとつとなるのが、4座オープンカーの「グランカブリオ(Gran Cabrio)」だ。日本でのオーダー開始は2024年5月で、7月に日本導入が開始されている。

また、クーペの「グラントゥーリズモ(Gran Turismo)」と共に、マセラティの電動化戦略を担っており、この車体でEV化された「フォルゴレ」も用意され、この先は日本導入が予告されている。ただ、現時点では日本に導入されているのは、グランカブリオもグラントゥーリズモも3リッターV6ツインターボを積む純粋なエンジン車のみになる。

今回の試乗したのは、グランカブリオに設定される上級グレードの550馬力仕様となる「トロフェオ」で価格は3120万円。ちなみにスタンダードモデルの490馬力仕様の価格は2363万円となる。

グランカブリオは、同社のラインナップにおいて、ラグジュアリーなオープンエア・モータリングを象徴するモデル。3リッターV6ツインターボを積む純粋なエンジン車のみ。4人乗りでありながら、優れた走行性能も武器とする。

古典的スポーツカーのスタイルを現代風にまとめる

グランカブリオのスタイルは、まさに流麗そのもの。ソフトトップを閉めていれば、4人乗りであるとは気づかないほど、キャビンは小さく、Aピラーよりも前は伸びやかだ。ロングノーズ&ショートデッキという、古典的なスポーツカースタイルではあるけれど、ノスタルジックではなく現代風なシルエットで、スポーツカーらしい力強さも見え隠れしている。このルックスの良さは大きな魅力だ。

伝統的なロングノーズ&ショートデッキのスタイルを現代的に昇華させた、流麗なデザインが目を引く。グラントゥーリズモと共に、マセラティの伝統的なデザインと最新のテクノロジーを融合させた、ブランドの顔とも言える存在になる。

インテリアは、ホワイトレザーを基本にカーボンとアルミマテリアルを巧みに組み合わせたもの。豪華なことは当然だけど、節度が感じられ非常に上品。多くの世界的な高級家具メーカーが存在しているイタリアらしさが感じられる上質な室内空間となっている。

ホワイトレザーを基調とし、カーボンやアルミ素材を組み合わせた洗練されたキャビン空間。エレガントでありながら機能的で、4シーターとして十分なスペースが確保される。

最新のデジタル装備とイタリアの伝統的な職人技が融合。

センターコンソールにある時計は、クラシカルなアナログの指針表示からデジタル表示まで変更することが可能と、遊び心も感じられる。

“速い”というフィーリングが心地よい

トロフェオには、マセラティが「V6ネットゥーノ」と呼ぶ最高出力550馬力の3リッターのV6ツインターボが搭載される。このパワーを8速ATと4WDシステムを介して路面に伝えることで、0-100㎞/h加速3.6秒を実現するなど、文句なしの加速力だ。

ハンドリングも鼻先の軽さが感じられるもの。全長5m近いロングノーズ車でありながらも、まるで小型車のような軽快な動きを見せることに少し驚いてしまう。ゴージャスな4人乗りのクルマだけれど、その動きはピュアスポーツそのものといっていい。

一方で、乗り心地は、30扁平という薄いフロント20インチとリヤ21インチのタイヤを履いているとしては良好だ。このあたりのバランスの良い味付けは、サスペンションが非常に良い仕事をしているのだろう。スポーティさを維持しながら、不快なゾーンに入らない、巧みな仕上がりとなっている。

最高出力550馬力を誇るV6「ネットゥーノ」エンジンを搭載。パワフルな加速力に加え、重心が低く鼻先の軽さにより、軽快なハンドリングも楽しめる。

4種類の走りの違いを生み出すVDCM

グランカブリオには、グラントゥーリズモから採用が始まった電子制御技術「車両ドメインコントロールモジュール(VDCM)」が搭載されている。ステアリングホイールの右下にあるセレクターを使うことで、「コンフォート」「GT」「スポーツ」「コルサ」の4つのドライブモードが選択可能で、具体的には、エンジンやサスペンション、パワステなどのセッティングが制御され、「応答性」「効率性」「電制」「加速」「剛性」という5項目が変化する。当然、「コンフォート」ではハンドル操作が軽く、ダンパーも緩くなる。そして「GT」から「スポーツ」、サーキット走行向けの「コルサ」という順で、どんどんスパルタンな味付けに変化してゆく。個人的には、「コンフォート」は緩すぎだったので、「GT」が最も好みな走行モードだった。

14秒で開閉するソフトトップ。4名での旅をまったく苦にしない

グランカブリオのアイデンティティは、オープンカーであることだろう。4座のカブリオレでありながらも、そのソフトトップは小さく、美しいスタイルの実現に大きく貢献している。開閉は自動で約14秒。トランクスペースの干渉は最小限に抑えられており、オープン時のトランク容量の減少もわずかだ。

面白く感じたのは、後席の上に設置するウインドウストッパーも存在だ。折り畳み式で脱着は手動とプレーンな機能装備なのだが、効き目は抜群。風の巻き込みは明らかに激減する。2人乗車でのオープン走行限定になるが、これはかなり関心させられた。

14秒で完了する電動開閉システムにより、美しいオープンエアスタイルを手軽に楽しめる。時速50km/h以下であれば走行中も開閉にも対応している。

折りたたみ式のソフトトップは、トランクスペースへの干渉を最小限に抑えるよう設計されており、4人分の十分な空間が確保される。

後席に設置可能なウインドストッパーを標準装備。これを装着することで、オープン走行時の風の巻き込みを大幅に軽減することが可能。

エレガンスと高揚感、爽快な走りの3つの贅沢が味わえる

グランカブリオは、エレガントでゴージャスなクルマ。その上で、走らせてみれば、どんな速度域でもエンジン音や振動、加速感から速さという高揚を味わることができる。そして、その上に、オープン走行という爽快さもプラスされている。エレガントさ、ゴージャスさ、そしてスリル、最後には爽快さ。これほど多くの魅力を味わえる、なんとも贅沢な1台であったのだ。

(主要諸元)
マセラティ グランカブリオ トロフェオ
寸法:全長4960×全幅1950×全高1380㎜
車両重量:1970㎏
エンジン:V6ツインターボ
総排気量:2992㏄
最高出力:404kW(550PS)/6500rpm
最大トルク:650Nm/3000rpm
トランスミッション:8AT
駆動方式:4WD
タイヤ&ホイール:前265/30R20・後295/30R21
価格:3120万円(撮影車は174万円のオプション装着済み)

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