
●文/写真:松永和浩(月刊自家用車編集部)
12月5日に発表されたTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の「GR GT」
12月5日にTGRが発表したフラッグシップスポーツカー「GR GT」。これはTGRが目指している「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」をより深く結実させ、GR GTは「公道を走るレーシングカー」として、GR GT3は「レースで勝ちたいと願うすべてのカスタマー」に向けたモデルとして開発が進められている、とされています。
GR GT
トヨタでは初めてとなる総アルミの骨格に載せられるV型8気筒4リッターツインターボエンジンのハイブリッドシステムなパワーユニット(PU)。そのPUパワーを全てカーボン製トルクチューブでドライバーの後方に配置されるトランスアクスルに伝えます。
GR GT系の総アルミ骨格
あえてエンジンと変速機類を分離し、変速機類をトランスアクスルに内包することによりドライバーの位置が重心になるような設計をしています。軽量化と低重心のためにカーボンや樹脂をふんだんに使った外板など、スゴイと頷ける作りはもはや荘厳と言えるものかもしれません。
しかし、世界に目を向ければGR GTよりエンジンパワーの激しいクルマもあれば、金額的に億をはるかに超えるクルマも存在します。そんなクルマたちの中にあって、なぜTGR GR GTが凄いと言われるのか?そこを深堀してみましょう。
レーシングカーと同時発表された「GR GT」
そもそもGR GTは12月5日にいきなり発表されたわけではなく、2022年の東京オートサロンでそのコンセプトモデルが展示されていました。それは「GR GT3 CONCEPT」という名称のレーシングカーとして当時のTGRブースの中央に展示されていました。全く新規の車両がレーシングカーとして展示されてのは珍しいことですが、むしろその部分が重要でした。これはFIA GT3というカテゴリーのレーシングカーのコンセプトモデルで、そのため名称にGT3とついているわけですが、当時の技術説明員の方に伺った話をまとめると「ニュルブルクリンク24時間レースやスパ・フランコルシャン24時間レース、日本のSUPER GTのGT300クラスや富士24時間レースなどのスーパー耐久ST-Xクラスで勝つためのマシン」として企画されているコンセプトとのことです。
GR GT3 CONCEPT
これらのレースは他に仕事を持ちながらアマチュアとしてレースに参加する所謂ジェントルマンドライバーが出場できる最高峰のレースと言われており、このレースの中でトヨタ車、TGR、レクサスのGT3マシンがチャンピオンを獲ったことがあるレースはありません。つまりチャンピオンを獲ることが出来るGT3マシンをTGRが総力を挙げて開発し、そのマシンがレースに出ることが出来る条件(ホモロゲーション)をクリアするために市販車も開発するというのがコンセプトとして掲げられていました。
そのコンセプトが評価されたようで、東京オートサロンの出展車両から投票でグランプリを決める東京国際カスタムカーコンテストでコンセプトカー部門の優秀賞を受賞しています。
東京国際カスタムカーコンテスト2022 コンセプトカー部門優秀賞を受賞した際に佐藤恒治TGRプレジデント(当時、現トヨタ自動車社長)共に撮影
このコンセプトをそのまま継続して開発したからこそ、「GR GT」は「GR GT3」というレーシングカーと同時発表となったのです。
「GR GT」のスゴさは「GR GT3」にあり
TGRは「GR GT3」の開発になりふり構っている場合ではなく、アグレッシブすぎる手法で開発がされていたようです。豊田章男会長のプライベートなレーシングチームであるROOKIE Racingではスーパー耐久シリーズに参戦するためにトヨタ車やレクサスではなくメルセデスベンツのAMG GT3を2023シーズン向けに導入しています。当時の導入理由は「今まで『もっといいクルマづくり』という狙いを中心として戦ってきましたが、今度は『勝つ』ために、コンペティションのなかに真剣に身を置くことで、ROOKIE Racingとして新しい景色を見たいということです」としています。スポンサーの一つでありROOKIE Racingのパートナーともなっている香港湾仔の中升集団が車両を購入しROOKIE Racingが運用するということにはなっていましたが、2023年、2024年と世界のGT3カテゴリーで最強のポジションとなっていたAMG GT3のデータが「GR GT3」の開発に生かされていることは間違いありません。また、スーパー耐久ではこのROOKIE RacingのAMG GT3をドライブするドライバーの中にSUPER GTのGT300クラスでAMG GT3によって何度もチャンピオンに輝いた片岡龍也選手が加わっており、「GR GT3」の開発ドライバーにも名を連ねていることから、AMG GT3をだいぶ意識してデータを収集していたことも容易に想像が出来ます。
中升 ROOKIE AMG GT3
フロントエンジンのための長いボンネット、車体後方に寄せられたドライバーの位置に来る重心などディメンションにはAMG GT3共通する意匠が多数あります。原設計の段階から多数のシミュレートを重ね来た上でのディメンションに、その形に添うカタチでの目標設定であるAMG GT3。そしてその目標を凌駕することが出来たであろうという現在に発表されたのが「GR GT3」であり「GR GT」と言えるでしょう。
中升 ROOKIE AMG GT3
市販車とともにレーシングバージョンがあるモデルを見ると、どうしても市販車ベースありきと捉えがちですがこの「GR GT」の場合は、「GR GT3」を勝てるマシンとして開発しその市販バージョンとしてあるのが「GR GT」なのだ、と考えればわかりやすいと思います。
GR GT3とGR GT
「GR GT3」の当面の目標はニュルブルクリンク24時間レースでの総合優勝だと思われます。それを達成し2連覇、3連覇とすることで「GR GT」も伝説となっていくことでしょう。そうなれば「GR GT」と「GR GT3」のスゴさ、それはすなわち「強さ」となっていくことでしょう。純粋なガソリンエンジンとして有終の美を飾る存在となるかもしれません。
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