「助手席」がVIP席。「一人のため」に設計された、究極のショーファーカー【トヨタの最上位ブランド「センチュリー」誕生】│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

「助手席」がVIP席。「一人のため」に設計された、究極のショーファーカー【トヨタの最上位ブランド「センチュリー」誕生】

「助手席」がVIP席。「一人のため」に設計された、究極のショーファーカー【トヨタの最上位ブランド「センチュリー」誕生】

ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)では、センチュリーがレクサス、GRに続くトヨタ第4の独立ブランドとして正式に披露された。その象徴として、既成概念を打ち破るクーペボディのコンセプトモデルがお披露目されたほか、会場には歴代センチュリーも展示。新たな「次の100年」への挑戦を宣言したセンチュリー、その動きを解説する。

●文:川島茂夫

「一人のため」に設計された、新時代の「ショーファードリブン」

「センチュリーはトヨタ車じゃないから」とは、随分と昔にトヨタの開発者から聞いた言葉だ。その後も同様の話はたびたび耳にする。つまりセンチュリーは、昔からトヨタ社内では、最上級の独立したブランドとして扱われている。

今回のJMS2025では、社内の認識だけでなく、対外的にもセンチュリーを独立したブランド、すなわちレクサス、GRに続く第四のブランドとして披露された。レクサスの上位に位置する、文字通りトヨタの最上位ブランドの誕生だ。

TMS2025のトヨタブースには、最新のセンチュリークーペのほか、歴代センチュリーも展示。センチュリーがトヨタの最上位ブランドとして活動することを明らかにした。

その象徴として開発されたコンセプトモデルが、今回公開されたセンチュリー(クーペ)だ。見てわかるようにクーペボディだが、スライドドアが与えられるなど、ショーファードリブンとしての役割も与えられている。

赤く輝くクーペボディは、伝統的なショーファーカーの既成概念を打ち破り、最低地上高を高めたSUV的なパッケージングを採用。

ボディ左側にはスライド式の観音開きドア(前後)が与えられ、VIPが優雅に乗降できる「一人のためのショーファーカー」という新機軸が与えられる。

ほかにも最低地上高を高くしたSUV的なパッケージングも採用すれば、ドアパネル直前まで床面が続くミニバン的な要素もあったりする。乗用車を評価する既存のモノサシをあてて簡単に理解できるクルマではない、常識外といってもいいだろう。

この伝統を継承しながらも既成概念を打ち崩すという、一見では矛盾するように思える手法は、すでにクラウンでその整合性を証明している。今回の衝撃はクラウン以上だが、センチュリークーペは、最も保守性の強いショーファーカーにおいて、多様化する生活や価値感の中に伝統を織り込む困難な挑戦のひとつの回答といえるだろう。

クーペフォルムで、オーナーやVIPはどこに座る?という率直な回答に関しては、助手席というのが答えだろう。ただ助手席という言い方は、主従関係で矛盾が生じるので、オーナー席とかVIP席と呼ぶべきかもしれない。

VIPの立ち振る舞いが優雅に映る、両スライドドア式を採用

ドアタイプは右1ドア/左2ドアの3ドア構成。左側ドアは、前後に分割スライドする観音開きタイプになる。この方式は、ドアが乗降時の脚捌きと干渉しないこともメリットだ。さらに開閉と同期して出し入れされるオートステップが装備されるため、高い床面地上高でも自然な姿勢で乗降することができる。立ち振る舞いが優雅に映るのも、ショーファーカーでは大切なことだろう。

シート配列は右が前後2席、左1席の3席。右後席はエマージェンシー用といった設計で、実質2シーターと考えたほうがいいだろう。

コックピットとVIP席(助手席)は琴線を思わせる光のシェードで分離される。御簾に喩える程の隔絶感はないが、VIPのためのパーソナルスペースらしく仕立てられている。

ドライバーズコックピットとは琴線を思わせる光のシェードで分離され、手前にはドアパネル直前まで床面が続くミニバン的な要素も採用。シート回転機構もあって、高い床面高でも自然な姿勢での乗降を可能としている。

VIP席前には大型ディスプレイが配置。この専用モニターでスケジュール確認などができ、ドライバーと空間を分けつつも必要な情報を得られる設計になる。

インパネ上面にはツイータースピーカーを配置。金属の輝きと赤い照明によりラグジュアリーな空間のアクセントも兼ねる。

助手席前は広々としたフットレストが配置され、一人のVIPが足をゆったりと伸ばせるよう設計。床面には上質なカーペットが敷かれ、長時間の移動でも最上のくつろぎを提供する。

ひとりのための「贅沢」を味わえる、最上級のもてなし

ただ、コックピットがドライバーにとって退屈なスペースという訳ではない。航空機を思わせるU字型ステアリングとコラム部に集中配置された多重情報表示パネルは、近未来的なスポーツカーを思わせ、VIP席と分離させた空間設定もあって、フォーミュラーカーのようなモノポスト的な印象も感じる。

航空機を思わせるU字型ステアリングと集中配置された多重情報表示パネルが特徴。

左側のVIP席(助手席)とは、琴線を模した光のシェードで分離され、ドライバーが集中できるコクピット感の演出も加えられる。

走行ハードウェア関連は正式発表されていないので推測の域を出ないが、プロポーションや床面高の設定などを考慮するならセダンタイプではなくSUVタイプの走行ハードウェアをベースにしている可能性が高い。

SUVタイプはV6の3.5Lを核としたスプリット式ハイブリッドシステムに、大容量バッテリーを加えたPHEVを採用する。駆動方式は前後にeアクスルを配したE-Fourになる。

ひとりの乗客だけをもてなすショーファーカーに、どれだけの需要があるかは見当が及ばないのだが、最上の乗用車の一つの回答としてとても興味深く、同時に大きな衝撃を受けた。クルマの楽しみ方に新たな提案を出し続ける、トヨタの頂点ブランドらしい一台だ。

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