【知らなきゃ損!】明日は我が身!? 水没車のギモン解消│月刊自家用車WEB - 厳選クルマ情報

【知らなきゃ損!】明日は我が身!? 水没車のギモン解消

ゲリラ豪雨や線状降水帯といった単語が身近になってしまった日本列島。水に浸かったクルマをニュース映像などで見ることも珍しくないが、あのクルマたちはどうなっちゃうの? 乗り続けられるの? 保険は下りるの? 売却は可能? そんな疑問を徹底調査してみた。

●文:月刊自家用車編集部

そもそも水没車とは?

〈水没車の定義〉

水没車とは、洪水や高潮、集中豪雨などによって、車内や車両内部が浸水した車を指します。一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)によると、室内フロア以上に浸水した車や、浸水の痕跡によって商品価値の下落が見込まれる車は、査定上「冠水車」として扱われます。

ただし、「水没車」という言葉に全国共通の法律上の定義があるわけではありません。実際の査定では、浸水した高さだけでなく、水の種類、浸水時間、車両の損傷状況、修理の有無などを総合的に確認します。タイヤやホイールが一時的に水に浸かっただけで、車内や重要部品に浸水していない場合は、一般に冠水車とは扱われません。

〈実際、どのような被害を受けた車が該当するのか〉

JAAIの査定基準で確認対象となる浸水の痕跡には、次のようなものがあります。

  • シートのスライドレールやスプリング、取り付けボルト、ペダル類のブラケット、ステアリングポスト付近、センターコンソールの取り付けボルト、ドアトリムの金属部分、シートベルトの取り付け部、フロア、ワイヤーハーネスのコネクターなどに、通常使用では生じにくいサビや腐食がある。
  • 車内に乾いた泥や砂のような汚れ、シミ、浸水跡がある。また、カビ臭や泥の臭いがする。エアコン使用時に異臭が出る場合も注意が必要。
  • シートの下やカーペットの裏側、スペアタイヤ収納部など、目立ちにくい場所に泥や水分の痕跡がある。
  • 電装品の誤作動、警告灯の点灯、パワーウインドーや集中ドアロックの不具合などがある。

日本自動車査定協会(JAAI)も、冠水車の確認では車内の汚れや臭い、金属部品のサビ、電装品の状態などを確認するとしています。ヘッドライト内部の水滴は浸水の手掛かりになることがありますが、温度差による結露でも発生します。水滴だけで水没車と断定せず、ほかの痕跡と併せて確認する必要があります。

水没車として扱われる基準

〈浸水レベルの目安〉

水没車の査定では、車内のどの高さまで浸水したかが重要な判断材料になります。ただし、JAAIの査定基準における区分や減点率は、基準の改定時期、車種、査定主体などによって異なる場合があります。以下は一般的な浸水レベルの目安であり、すべての車に一律に適用される数値ではありません。

  • フロアパネル付近までの浸水
    • 車内の床面やカーペット付近まで水が達した状態です。カーペットの下にある配線や制御装置などが影響を受けることがあり、浸水後に時間が経過してから不具合が発生する場合もあります。
  • シートクッション付近までの浸水
    • シートの座面付近まで水が達した状態です。シート下の電装部品や配線、内装材などへの影響が大きくなり、腐食や異臭、電装系統の不具合が発生するリスクも高まります。
  • ダッシュボード付近までの浸水
    • ダッシュボードやインストルメントパネル付近まで水が達した状態です。多数の制御装置や配線が浸水している可能性があり、修理費用が高額になることがあります。再利用できる部品の有無などを確認し、車両としてではなく部品や資源としての価値を中心に評価される場合もあります。

浸水深が深くなるほど、エンジン、トランスミッション、制御装置、エアバッグ関連部品などへの被害が広がる可能性があります。一方、エンジン停止や車両が浮く水深は、車種、流速、路面状況、車両重量などによって異なります。「30cmで必ずエンジンが停止する」「50cmで必ず車が浮く」と一律に判断することはできません。

JAF(日本自動車連盟)は、冠水・浸水した道路への進入は危険であり、車が動かなくなった場合は無理にエンジンを始動せず、避難や救援要請を優先するよう案内しています。冠水した道路には進入しないでください。

〈フレームやエンジン、車内の被害状況による基準〉

水没車は浸水した深さだけでなく、電気系統、エンジン、トランスミッション、車体や足回り、車内のカビ・異臭などの状態を含めて評価されます。JAFによると、浸水した車を無理に始動すると、エンジン内部に入った水によって故障するおそれがあります。エンジンが始動しても、内部に水が入った状態で再始動すると、ウォーターハンマーなどによってエンジンが損傷する可能性があるため、販売店や整備工場に点検を依頼しましょう。

ハイブリッド車や電気自動車は、高電圧バッテリーや高電圧配線が浸水している可能性があります。国土交通省は、浸水・冠水した電気自動車やハイブリッド車について、感電や発煙・発火の危険があるため、むやみに触れたり移動させたりしないよう注意喚起しています。専門知識のない人が高電圧部品を確認するのは避けてください。

浸水直後に異常がなくても、乾燥後や時間の経過後に腐食や電装系の不具合が現れることがあります。

〈淡水・塩水による違い〉

淡水による浸水でも、泥や異物の侵入、カビ、異臭、電装部品の腐食などが起こります。日本自動車査定協会(JAAI)の査定でも、浸水した水の種類は車両状態を判断する要素の一つです。

海水や高潮による塩水は、塩分や異物が残りやすく、金属部品や電気部品の腐食が進みやすいため、淡水より被害が深刻化しやすい傾向があります。国土交通省も、浸水車両では電気系統などから発煙・発火する可能性があるとして、専門家による確認を求めています。

水没車と自動車保険

〈水没被害時の保険利用〉

台風、洪水、高潮などによる水没は、契約している車両保険の補償対象となる場合があります。一般社団法人日本損害保険協会によると、車両保険では台風や洪水などの水災による車両損害が補償される場合があります。ただし、補償の対象や支払額は、車両保険の種類、免責金額、保険金額、契約条件によって異なります。

土砂崩れについても補償対象となる場合がありますが、原因や契約内容によって判断が分かれるため、保険会社への確認が必要です。

自賠責保険は、交通事故による他人の生命・身体への損害を補償する保険です。国土交通省によると、自賠責保険は自動車事故の被害者救済を目的とする制度であり、自分の車の水没による車両損害は原則として補償対象ではありません。

〈保険適用条件と注意点〉

日本損害保険協会によると、車両保険で水没被害が補償された場合、一般に「水災」は1等級ダウン事故として扱われ、翌年度以降の保険料が上がることがあります。ただし、保険会社や契約内容によって取扱いが異なるため、保険証券や約款を確認してください。

車両が修理不能と判断される全損には、修理費が車両保険金額を上回る「経済的全損」や、損傷が大きく修理できない「物理的全損」などがあります。全損時に車両の所有権が保険会社へ移るかどうかは、保険契約や保険会社の手続きによって異なります。保険金の支払いだけで所有権が必ず移転するわけではないため、契約時・事故受付時に確認しましょう。

JAFや国土交通省は、水没した車を無理に始動すると故障や発火につながるおそれがあるとして注意を呼びかけています。安全な場所へ避難したうえで、保険会社やロードサービス、整備工場に連絡し、専門家の指示を受けてください。

水没車のゆくえは? 買い取ってもらえる?

〈買取業者の水没車対応〉

軽度の浸水で走行可能な車は、一般の中古車買取店やディーラーで買取・下取りの対象になる場合があります。一方、水没歴のある車は将来的な故障リスクや再販時の説明義務などがあるため、査定額が大きく下がったり、買取や下取りを断られたりすることもあります。

JAAIの査定基準でも、冠水による商品価値の下落は査定に反映されます。水没車や廃車を専門に扱う買取業者には、海外販路、部品の再利用、資源としてのリサイクルなどの仕組みを持つ業者があります。そのため、エンジンが始動しない車や損傷の大きい車でも、車両や部品、資源としての価値が残っていれば買い取られる可能性があります。

ただし、レッカー代や各種手数料が差し引かれることもあります。国民生活センターも中古車の売却契約をめぐるトラブルについて注意を呼びかけているため、契約前に買取額だけでなく、引き取り費用、キャンセル料、名義変更の手続きなどを確認しましょう。

〈一般的な買取価格の目安〉

水没車の買取価格は、浸水した高さ、水の種類、浸水時間、車種、年式、走行距離、修理状態、エンジンや電装部品の状態、業者の販路によって大きく変わります。軽度の浸水で市場価値の高い車は一定の価格が付く場合がありますが、損傷が大きい車では数万円程度、または部品・資源としての評価にとどまることもあります。

一方、人気車種であっても、100万円を超えるような高額査定が常に期待できるわけではありません。JAAIも、車両の状態や損傷状況を踏まえて査定する考え方を示しており、車種名だけで価格を判断することはできません。

相場を確認する際は、インターネット上の一律の金額だけで判断せず、車両の状態を正確に伝えたうえで複数の専門業者に査定を依頼することが大切です。

〈水没しても高値の車種はコレだ!〉

水没車でも、もともとの中古車相場が高く、海外需要や部品需要が強い車種は、ほかの車より高く評価される可能性があります。代表例としては、トヨタ ランドクルーザー、トヨタ ハイエース、トヨタ アルファード・ヴェルファイア、トヨタ プリウス、スズキ ジムニーなどが挙げられます。

ただし、これらの車種でも高値が保証されるわけではありません。JAAIの査定でも、車種だけでなく車両の損傷状態や商品価値への影響が重視されます。海水に浸かった車、ダッシュボード付近まで浸水した車、火災や重大な電装系の損傷がある車は、査定額が大きく下がる可能性があります。

車種だけで判断せず、浸水した水の種類と高さ、浸水時間、エンジンや高電圧部品の状態、修理内容を確認し、複数の専門業者に査定を依頼しましょう。

水没車の価格と相場

<水没車は不動産の事故物件と同じ?>

水没車は、将来的な故障リスクや修理履歴がある点で、不動産における事故物件と比較されることがあります。ただし、国土交通省が定める不動産の告知に関するガイドラインは車には適用されず、両者は制度や告知の仕組みが異なります。法的に同じものではありません。

水没歴のある車を販売する場合、販売業者は車両の状態や修復歴など、購入判断に重要な情報を適切に説明する必要があります。一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)も、中古車販売では車両状態や保証内容の確認が重要だと案内しています。購入者は、契約書や車両状態説明書に冠水歴・修理歴の記載があるか確認しましょう。

〈水没車は安く買える?〉

JAAIの査定基準には、浸水の程度に応じた減点の考え方がありますが、適用される減点率や区分は改定や査定条件によって異なります。そのため、「フロアまでなら一律何%」「シート付近なら一律何%」と断定することはできません。

実際の買取価格・販売価格は、車種、年式、走行距離、損傷の程度、修理内容、保証の有無、販売業者の販路などによって決まります。相場より大幅に安く見えても、修理費や将来の故障リスクまで含めると、必ずしも割安とは限りません。

〈ズバリ! 安くても水没車を買ってはいけない!〉

水没車は購入価格が安くても、内部の腐食や電装系の不具合、修理費用の増加、再販時の価値低下といったリスクがあります。特にハイブリッド車や電気自動車は、高電圧バッテリーや関連部品の状態を専門家が確認しているかが重要です。国土交通省も、浸水した電動車の取り扱いについて感電や発火の危険性を示しています。

水没歴が判明している車を購入する場合は、浸水の高さや水の種類、修理内容、交換部品、保証範囲、販売後の故障時の費用負担を確認してください。十分な点検記録や保証がなく、販売価格の安さだけを強調している車は、一般の購入者にはおすすめできません。リスクを正確に把握できない場合は、購入を避けるのが無難です。

<販売前に水没した場合はどうなる? 売りに出るの?>

登録前の新車が水没被害を受けた場合、損傷した状態のまま通常の新車として販売することはできません。修理して販売する場合でも、被害の内容や修理状況を適切に説明し、通常の新車と誤認させない対応が必要です。消費者庁は、商品の品質や内容について実際よりも著しく良いと誤認させる表示を禁止しています。水没歴を隠して新車同様と表示する行為は、表示内容によっては問題となる可能性があります。

損傷の程度によっては、解体、部品取り、資源としてのリサイクルなどに回されます。「登録前」であることだけを理由に、必ず新車として扱われるわけではありません。購入を検討する際は、新車保証の適用、修理歴・冠水歴の開示、販売形態、契約内容を確認しましょう。

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