
「車内収納は、完成されすぎていると逆に使いにくい」──そんな違和感に正面から向き合ったのが、ワークヴォックスが立ち上げた新ブランド「tac・luc(タックラック)」だ。用途を決め打ちしない“余白”の発想で、仕事・遊び・日常を1台で成立させる車載ハンギングシステムとして誕生した。25mmピッチによる高い互換性と、自動車専用設計のタフさを両立しながら、使い方はユーザーに委ねる。その思想は、いまのクルマの使われ方にどんな変化をもたらすのか。
●文:月刊自家用車編集部
「完成形」を押し付けない車内収納という発想
車内収納といえば、最初から用途が決められた完成品が主流だ。だが、ライフスタイルが多様化した今、その「完成度の高さ」が足かせになる場面も増えている。ワークヴォックスが発表した「tac・luc」は、あえて作り込みすぎないことを選んだ車載モジュールシステムだ。
用途を固定しないことで、使い方そのものが時間とともに育っていく。その余白こそが、このシステムの核にある。仕事の日も、遊びの日も、日常の買い物も。同じ車内空間を柔軟に使い続けるための土台として設計されている。
デザインはウッドとブラックスチールを基調にした、控えめでタフな佇まい。商用車にも乗用車にも違和感なく馴染むよう意識されており、車内を“作業場”にも“居場所”にも変えられる懐の深さがある。
25mmピッチが生む、想像以上の拡張性
tac・lucの大きな特徴が、25mmピッチで設計されたハンギングシステムだ。この規格により、専用アクセサリーだけでなく、市販の有孔ボード用パーツや100円ショップの収納用品まで流用できる。
専用品に縛られないという自由度は、ユーザーの工夫次第で車内の表情を大きく変える。ガジェット収納から日用品の整理まで、既存アイテムを活かしながら組み替えられる点は、長く使うほど価値が増していく要素だ。
収納を「増やす」よりも、「組み替える」発想。これは単なる便利装備ではなく、車内との付き合い方そのものを変える提案と言える。
走行中でも安心できる、自動車専用の強度設計
自由度が高い一方で、不安になりがちなのが走行中の安定性だ。tac・lucはその点も妥協していない。走行時の振動や荷重を前提とした強度解析を行い、一般的な壁掛けボードとは明確に一線を画す構造を採用している。
揺れやズレを抑え、重いギアでも安心して固定できるのは、自動車用途に特化しているからこそだ。
点検や整備を妨げないボルトオン構造も、実用面で見逃せない。必要なときに外せるという当たり前をきちんと守っている点に、現場目線の設計思想がにじむ。
独自形状が生む、レイアウトの自由度
tac・lucには、実用新案を取得した独自の「+〇穴(米型穴)」が採用されている。十字穴と丸穴を組み合わせたこの形状により、上下左右あらゆる方向への配置が可能になる。
長尺物を横向きに固定したり、細かい位置調整を行ったりと、従来のボードでは難しかったレイアウトも現実的だ。ミリ単位で配置を追い込める自由度は、収納を“作業”ではなく“編集”に近い感覚へと変えてくれる。
素材が語る、車内空間としての質感
素材選びにも、tac・lucらしさが表れている。スチール部分はキズに強いサテンブラック塗装。ウッドには天然木突板のオイル仕上げを採用し、無機質になりがちな車内に温かみを加えている。さらに、重歩行用フロア材を使うことで、道具としての耐久性も確保した。
「荷室」だった空間が、少しずつ「居場所」に変わっていく。その変化を自然に受け入れられる質感が、このシステムにはある。
暮らし・遊び・働くを1台で成立させる
tac・lucは、特定の使い方を想定しないからこそ、幅広いシーンに対応する。日常では、ペット用品や車中泊グッズを整理する機能的なインテリアとして機能する。週末には、自転車やキャンプギアを壁面に固定し、積載性と安全性を両立する装備へと変わる。
仕事では、25mmピッチを活かした簡易デスクやガジェット収納として活躍する。車内が即席オフィスになる感覚は、移動時間の価値を確実に変えてくる。
「今日は、どう使う?」が生まれる車内へ
tac・lucは完成品ではない。使い方を決めるのは、あくまでユーザー自身だ。今日は仕事仕様、明日は遊び仕様。その切り替えを前提にした余白があるからこそ、家族や仲間との会話も自然と生まれる。
車内をどう使うかを考える時間そのものが、クルマとの関係を少し豊かにする。そんな価値を、このシステムは静かに提案している。
対応車種と今後の展開
現在、エブリィバンやハイゼットカーゴ、N-VAN、eN-VAN、カングー、ジムニーノマドなどに対応。今後はタウンエースやアトレー、フォレスター、ランクル250、デリカD:5などへも展開予定だ。商用車から乗用車まで、特定の車種に縛られない思想として広がっていく。
また、専用アクセサリーの拡充や、販売店向けのカラーオーダー対応など、システムとして育てていく構想も描かれている。
イベント展示で実物を体感できる
tac・lucは、ジャパンキャンピングカーショー2026で実車展示が行われる。会場では、エブリィやハイゼットカーゴ、クリッパーに装着された状態を見ることができ、仕事・趣味・日常を想定した異なるレイアウトが用意される予定だ。
思想だけでなく、実際の使い勝手を確かめられる貴重な機会になりそうだ。
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