
現在のトヨタ車に装着されているエンブレムは、街中などで、一日一度はどこかで目にするほどポピュラーなものとなっているが、創業時に使用されていた最初期のエンブレムは、全くデザインだった。トヨタ自動車の創業からの歩みを振り返りつつ、初期のエンブレムデザインや車種別で取り付けられていたマスコットなども見ていこう。
●写真/文:月刊自家用車編集部
総合産業のクルマ造りの発展こそが、国の近代化に必要と考えた企業理念
2025年度(2025年4月〜2026年3月)、トヨタ自動車グループの世界販売台数は、前年比2.5%増の約1128万台となり、過去最高を記録。これにより、6年連続で世界第一位を維持する見通しだ。
そんな世界的企業のトヨタの大元をたどると、明治の発明王、豊田佐吉氏が興した織機メーカーに源を発する。その長男である喜一郎氏が社内に自動車部を設置して、研究を始めたのは1933(昭和8)年のことだ。
以後、豊田家の家風は、一族以外をふくむ歴代社長に受け継がれ、トヨタウェイと呼ばれる同社のあり方を支えてきた。ひと言で言えばそれは、人も技術も自前で大事に育て、国の未来に貢献することを重んじる経営だ。
G型自動織機
豊田佐吉が生涯をかけて完成させた完全自動機機。イギリスのブラット社に技術供与するなど、トヨタグループ発展の礎になった。
クルマ造りを自前で開発。軍用トラックの製造で成長
東京帝国大学(現・東京大学)工学部を卒業した喜一郎氏は、研究用に購入した外国車を参考にしながらも、クルマ造りの技術のすべてを一から自前で開発した。安易に海外の技術を取り入れるのではなく、失敗の中から学ぶことで、時間をかけて本当の独自技術を生み出す。それが佐吉翁の遺した豊田家の流儀なのだ。
戦時中には軍用トラックの製造で成長し、戦後、本格的に乗用車の量産を志したときにも、その姿勢は変わらなかった。1955年に生み出した初代クラウンも、自前の技術による純国産乗用車であることにこだわり、ハイブリッド技術も同様に、すべてを一から作り出すことで、世界のリーダーに育てた。
無駄を徹底的に省くトヨタ生産方式の一方で、義理を欠かず絆を重んじる
世界の製造業の共通語となったカイゼンやカンバンに代表される、徹底的に無駄を省いたトヨタ生産方式もまた、そうした豊田家の家風を受け継ぐ社員の手で生み出された独自技術として、日本の躍進を支えたのだ。
一方、人を重んじる姿勢は、乾いた雑巾を絞るとたとえられる厳しいコストダウンをしながら、たんに下請けに値下げを迫るのではなく、値下げしても利益の出る方法をともに考えるというエピソードにも見て取れる。
社内はもちろん、販売会社や部品メーカーなどの冠婚葬祭、とくに葬儀には、可能な限り豊田家の人間が出席するなど、義理を欠かないのも同じ。トヨタのビジネスにかかわるすべての人々が、豊田家の家族なのだ。
同族経営と言うと、ビジネスの教科書ではネガティブに言われることが多い。しかし、豊田家の名の下に、強い絆で結ばれた人々が集うトヨタのそれは、他に類を見ない強さと優しさを実現して世界一を手にしたのである。
創業当時のエンブレムと、車種別のマスコット
最後に、創業当時のエンブレムと車種別で搭載されたマスコットを紹介していこう。トヨタのトラック第1号車となるG1に搭載された立派なマスコットは、トヨタ発祥の地にちなみ、シャチホコがモチーフとなっている。また、初の乗用車トヨダAA型に搭載されたマスコットは、つばさと「豊田」の文字を融合したデザインを採用している。
エンブレムは、写真のように青と赤を使用したカラフルなデザインで、さらに、今とは違う「TOYODA」読みとなっている。これは、創業者である豊田佐吉の苗字に由来するため「TOYODA」と表記されていた。後に濁点のない「TOYOTA」に変更される。
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