スライドドアを持つワゴンRスマイルが登場したことで、スズキは売れ線のハイト&スーパーハイト軽ワゴンに合計4つのモデルをラインナップすることになった。軽自動車はスズキが得意としているジャンルだが、選ぶ立場からすると4つのモデルの選び分けに悩んでいるユーザーも多いはずだろう。今回はおのおのモデルの特徴を解説してみたい。
●文/自家用車編集部(ハラ)
売れ筋のハイト&スーパーハイトワゴンに、4つのモデルを用意
大人4名が無理なく乗れて、後席を格納すれば十分な荷室スペースも確保できる。幅広いシーンで便利に使えるハイト&スーパーハイトの軽自動車は、メーカー各社が力を入れていることもあってご自慢モデルが揃っている。スズキはハイトワゴンにワゴンRとワゴンRスマイル、ハスラーを、スーパーハイトワゴンにはスペーシアをラインナップしているが、いずれも堅調な実績を積み重ねている。
4つのモデルのうち、最もベーシックな存在になるのはワゴンRだ。
現行型は2017年2月にデビュー。歴代モデルから受け継ぐ実用性に磨きをかけながら、スズキ軽として初めてマイルドハイブリッド(ISG)車も設定。走りの余裕が強化されていることが強みだ。
そのワゴンRをベースにSUVテイストを注入し開発したモデルが2019年に発売されたハスラーだ。
爆発的な大ヒットを記録した先代ほどの勢いはないが、走りやキャビンの質感、安全&運転支援機能を大幅に強化。ラフな路面を問題にしない走破性も併せ持つなど、SUV的な使い方ができる個性派としても根強い人気を集めている。
そしてスズキの軽自動車として最も売れているのが、スーパーハイトワゴンのスペーシアになる。
全高1785mmのハイルーフが生み出す室内高の余裕もあって、使い勝手の良さはハイトワゴンを上回る。2017年12月にデビューした現行型はその強みに加えて、走行性能と安全関連機能を強化することで、スズキの軽ナンバー1モデルの地位を不動のものとしている。
そしてこの秋に登場した最新モデルのワゴンRスマイルは、スライドドアを武器にするハイトワゴン。モデル名こそワゴンRの名を冠するが、ボディ設計としてはスペーシアのロールーフ仕様というのが近い。他の3モデルはターボ車も選べるが、スマイルはNAエンジン車のみの設定。タウンユースを主戦場に開発されたモデルということも個性の一つになっている。
室内のゆとりはスペーシアが一歩リード。使い勝手はいずれも良好
4モデルの売りになるキャビンスペースは、室内寸法の数値は微妙に異なるが、いずれも軽自動車としては最大級の広さを持つ。中でもスペーシアは室内高も高く、開放感という意味では最も快適なモデルといえる。
実用性を大きく左右する荷室機能に関しては、トランク容量などは異なるが、いずれも後席シートの格納時は床面がフラットになり、前倒式の助手席バックレスト機能で長物荷物にも対応できるなど、実生活で便利に使いたおせる設計が採用されている。ちなみにハスラーは防汚床面の採用で汚れ物に強さを持つなど独自の工夫も盛り込まれている。
マイルドハイブリッド車のラインナップを強化中
そして走行性能の違いも見逃せないポイント。各モデルごとに明確な目的を持ってパワートレーンが設定されている。
ワゴンRはNAエンジン+マイルドハイブリッド車、NAエンジン車の2タイプに加えて、カスタムグレードのワゴンRスティングレーにはNAエンジン+マイルドハイブリッド車、ターボエンジン+マイルドハイブリッド車の2タイプを用意している。ワゴンRは日常生活で便利な実用車、ワゴンRスティングレーはスペシャリティモデルという位置付けになる。比較する4モデルの中では最もモデルライフが長いモデルとなるが、昨年夏の改良時にエンジンとCVTの改良が実施され、走行性能の強化が図られている。
スペーシアも、標準グレードのスペーシアとカスタムグレードのスペーシアカスタムを選べて、エンジンラインナップもNAエンジン車、NAエンジン+マイルドハイブリッド車、ターボエンジン+マイルドハイブリッド車の3タイプが組み合わされ。2020年8月のマイナーチェンジ時に運転支援機能も追加されたことで、高速長距離適性が高まったこともポイントの一つだ。
ハスラーもNAエンジン車とターボ車が選べるが、いずれもマイルドハイブリッドと組み合わされることが特徴。さらに4WD車には雪道で安定した走りを実現するスノーモードや、スリップを防止するグリップコントロール、急坂を降りる際に自動的に車速を約7km/hにコントロールするヒルディセントコントロールなど、SUVらしい機能も備わっている。
最後発となるワゴンRスマイルは、NAエンジン+マイルドハイブリッド車、NAエンジン車の2タイプのみのラインナップ。他モデルでは用意されるターボ車が設定されていないのは、市街地向けというキャラによるところが大きい。フットワークはなかなか良いだけに、ターボ車が選べないのはかなり残念だ。
価格のバランスの良さは、どのモデルにも共通する強み
ワゴンR
価格帯:109万8900〜177万6500円
スペーシア
価格帯:138万500〜195万9100円
ハスラー
価格帯:136万5100〜174万6800円
ワゴンRスマイル
価格帯:129万6900〜171万6000円
4つのモデルを価格で見比べるとスペーシアは少し割高だが、便利に使い倒せるスーパーハイトワゴンとしては標準的な価格設定といえる。
いずれのモデルも「人」と「荷物」の移動を意識した実用車であるが、「人」寄りの設計といえるのがハイトワゴンのワゴンRとワゴンRスマイルだ。十分な広さと使いやすいキャビンと荷室を持つことに加えて、最新モデルに必須の安全機能も一通り揃えている。安価な設定された価格も経済性を問われる軽自動車として申し分がない。両モデルとも主力となるのはNAエンジン+マイルドハイブリッド車になるが、ワゴンRは動力性能に余裕が生まれるターボ車も選択することが可能だ。
スペーシアは弱点らしき弱点がない万能モデル
ハスラーはカジュアルな内外装の仕立てもあって、遊びに特化した趣味モデルとみられる向きもあるが、ワゴンRをベースとしていることもあってユーティリティ面にも優れている。オンロードの走りも最新パワートレーンに加えて、シャシー関連も「ハーテクト」の最新仕様を採用。スズキの軽自動車としてはトップクラスの実力を持つ。
スーパーハイトワゴンのスペーシアは、優れたユーティリティに加えてスペースのゆとりも向上。絶対的な重心は高くなるが、出来の良いハーテクトシャシーの恩恵もあって、見た目からは想像できないほど安定した走りを披露してくれる。ボディタイプもスペシャリティキャラのスペーシアカスタムに加えて、アウトドアティストを強めたスペーシアギアも選ぶことができる。
1台でなんでもこないしたいと考えるユーザーにとっては、同等グレード同士で比べると割高になってしまうが、引き出しが多いスペーシアがベストバイの有力候補になる可能性が高い。デビュー当初は宿命のライバルになるホンダ・N-BOXに対して運転支援機能の面で弱みがあったが、2020年夏の一部改良でACCを含めた支援機能が強化されたことでその問題も克服。性能とコスパの良さが秀でている。
ハスラーもスペーシアに勝るとも劣らない魅力を持つモデル。個性的な内外装の仕立てもあって乗る人を選ぶ向きもあるが、オン/オフを問わずに使える走行性能と実用性の高さはハスラーならではのものといっていい。
ワゴンRとワゴンRスマイルは、ヒンジドアか、スライドドアか、の違いはあるが、街中で手軽に乗れる実用性の高さと経済性を武器としている点は同じ。スペシャリティのワゴンRスティングレーを除けば、価格帯もかなり近いため迷うユーザーも多いだろうが、メカニズムやシャシー関連の設計年次はワゴンRスマイルの方が新しい。さらにワゴンRには設定のないACC装着車を選ぶことができるなど、ターボ車は選べないものの、走りの質感はワゴンRスマイルがやや優位ともいえる。
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