フルモデルチェンジで大注目の新型カングー試乗レポート! ディーゼルorガソリン、どっちが買いなの!?

2023/03/10 6:00
月刊自家用車編集部

●文:川島茂夫　●まとめ：月刊自家用車編集部　●写真：編集部

1 良い意味でやっぱりカングーなのだ
2 走行性と経済性で評価が分かれるか
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良い意味でやっぱりカングーなのだ

乗用車の価値感で量ると商用車は安造りのように思えるが、意外と高コスト。耐久性など諸元表に表れないヘビーデューティに関わる部分が重視されている。安っぽさは見栄えより実を取ったコスパ優先の結果。職人気質と言い換えてもいいだろう。

カングーは小型商用車として開発されたモデルであり、新型で三代目となる。初代・二代目同様に1.8ｍを超える全高がもたらすゆとりの室内高と荷室容量が特徴。室内高は1BOX型ミニバンには及ばないものの1mを超え、荷室は都市部の配送に最適化した設計。観音開きのリアゲートも健在で、ストッパーを外せば左右とも180度開く。商用の実践力なのだが、これが乗用の発想力や想像力を刺激して、レジャーの楽しさへの道標になる。フルモデルチェンジで内外装ともに乗用車っぽさを高めたが、やはりカングーはカングーなのだ。

ちなみに新型はゼン（受注生産）／クレアティフ／インテンスの3グレード構成になるが、新設定のクレアティフはバンパー等を黒色樹脂肌とした上級乗用仕様であり日本向けの専用設定になる。道具のクルマとしての純度を高めたデザインがとても印象的に思えるグレードだ。

外装に付随する装備はグレードダウンするが、基本装備内容はインテンスに準じている。ACCもLKAも標準装着。今時それらを贅沢装備とするのもナンセンス。無論、配送に限らず都市内用途限定ならば衝突回避系だけでもいいが、レジャー用途向けに選ぶなら長距離用途での運転支援機能は重要。インテンス／クレアティフは標準装備されている。利便性と乗降時の安全性で効果的なパワースライドドアがないのがちょっと気になったが、それも納得させるのがカングーのキャラでもある。

走行性と経済性で評価が分かれるか

パワートレーンは1.3Lガソリンと1.5Lディーゼルで、ともにターボ仕様で7速DCTと組み合わされている。パワースペックを比較すると最高出力ではガソリン車が、最大トルクではディーゼル車が勝り、試乗した印象もそのとおり。

どちらも過給器装備ならではの大トルクを活かし、低速から高速まで力強いドライバビリティを示し、一般用途から高速、山岳路まで癖がなく運転に余裕を与えてくれる。極低速域でのクリープ制御が弱く、駐車場等での扱いでアクセルを踏む頻度が高いのが難点だが、実用面の評価はともに優秀だ。

ただ、巡航ギアの維持力もしくは力感はディーゼルが優れ、ガソリン車のほうがダウンシフトのタイミングは早め。逆に加速時は高回転域を上手に使い伸びやかなガソリン車に対して、ディーゼル車はちょっと鈍重な印象がある。ドライブフィールの好みで選び分けてもいいが、WLTC燃費は13％ほどディーゼルが勝り、燃料単価込みなら20％以上の差が出るが、価格はガソリン車が24万円安く、経済性の点でも悩ましい。

フットワークの第一のポイントは安心感。パワートレーン同様に癖がなく扱いやすい。挙動等を意識した操舵は不要であり、コーナーの曲がり具合に合わせて舵を送り込むだけで狙いのラインをトレース。高速直進の据わりもいい。車軸周りの揺動感や段差の突き上げなどの刺激を抑えた乗り心地は商用車ベースとは思えぬほど良質であり、身体的な負担も少ない。プレミアムを感じさせるようなタイプではないが、ストレス源を上手に潰している。

実践的な優等生であってもフルモデルチェンジしたカングーに「ここが凄い！」と殊更に挙げるような部分はない。ただ走らせたりキャビンや荷室に出入りしているだけで何処かへ行って何かをしたくなるようなわくわくした気分になる。いい道具とは想像力と好奇心を刺激するものと理解させられた。

SPEC
●エンジンタイプ：ターボチャージャー付筒内直接噴直列4気筒SOHC8バルブ／●総排気量：1,460L／●最高出力：85kW(116ps)/3,750rpm／●最大トルク：270N・m(27.5kgm)/1,750rpm／●全長×全幅×全高：4,490×1,860×1,810mm／●ホイールベース：2,715mm／●タイヤサイズ：205/60R16／●価格：3,950,000円〜4,245,000円

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