巧みなシャシーセッティングで、コスパ良く格上の走りを実現! トヨタ・ヤリスクロス GRスポーツ(ハイブリッド)試乗リポート

●文:川島茂夫

TOYOTA
ヤリスクロス GRスポーツ
車両価格:275万円(ハイブリッド車)

ヤリスクロスは、ヤリスをベースに開発されたクロスオーバーSUVだが、車高と最低地上高を高めることで悪路走破性能が強化されたというよりも、後席の居住性や荷室容量を改善し実用性能を高めたアップデートモデルと考えた方がしっくりとくる。

GRスポーツは、専用グリルやバンパーフォグベゼルを装着することでフロントまわりのイメージも差別化。駆動方式はFF車のみの設定。

ヤリスのスポーティイメージはそのままに後席スペースを上手に拡大。GRスポーツは内装パネル加飾やシートも専用タイプとなる。

ただ、ヤリス比で100kg以上重くなった車両重量や重心が高くなった影響もあって、スポーティな走りを売りとしているヤリスと比べると、走りのテイストはマイルドにも感じる。ファミリーユーザーにとっては、「これで良い」となるだろうが、ヤリスの良質な走りを期待するユーザーからすれば、少し物足りないとも感じてしまうだろう。

そんな薄味になってしまったスポーティ志向を上手にカバーしてくれるのが「GRスポーツ」だ。重さや重心の高さを意識させない走りに変貌しているのが印象的だ。

GRスポーツは、専用グリルやバンパーフォグベゼルなどを装着することでエクステリアイメージも差別化されている。



標準車と大きく違うのはシャシー周りの設計。GRスポーツはブッシュの変更やフロア強化など細かく手が加えられ、さらにスプリング/ダンパーも専用になっている。今回試乗したのはハイブリッド車のGRスポーツだが、標準車に比べると高速時や坂路など負荷のかかる状況での安定性やコントロール性が向上しており、ステアリングの操縦感覚も切れ味や軽快感が増した印象。操舵初期の回頭反応や旋回力の立ち上がりも素早い。

なお動力性能もハイブリッド車はアクセルを踏み増した時のレスポンスが良くなっている。この違いは制御系のチューニングによるものだが、ここの工夫もSUVの重量ハンデを感じにくくさせている理由といえる。

ハイブリッド車のパワースペックは標準車と同じ(1.5Lハイブリッド 91PS/12.2kg・m【エンジン】+59kW/141Nm【モーター】)だが、駆動伝達系にGRのチューニングが注がれたことで、アクセル入力の応答性などが高まっている。

ハイブリッド車、ガソリン車ともにGRスポーツを選ぶことができるが、ともに駆動方式は2WD(FF)に限定。SUVとしてはかなり割り切ったオンロード寄りの設定だ。価格はガソリン車で236万7000円、ハイブリッド車で275万円。最上級のZではなくGをベースとしているため、カスタム内容の割には価格も抑えられている。「ヤリスの走りは気に入ったが実用性能が不満」というユーザーにとって、見逃せない1台だ。

ヤリスクロスのGRスポーツは、最上級グレードのZではなくGをベースにカスタマイズされているので、比較的安価な価格ということも魅力。


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