
トヨタが、2025年5月30日〜6月1日に開催される「ENEOS スーパー耐久シリーズ 第3戦 NAPAC富士24時間レース」において、2台の“未来燃料車”で参戦する。ひとつはバイオエタノール20%混合の「低炭素ガソリン(E20)」を使うGR86。もうひとつは液体水素を燃料にしたGRカローラだ。
●文:月刊自家用車編集部
燃料でもマルチパスウェイ戦略を!
トヨタがS耐富士24時間レースでで“液体水素”と“低炭素ガソリン”のダブル挑戦する根底にあるのは、「モビリティの未来は1つの道ではない」というトヨタのマルチパスウェイ戦略。すなわち、水素も、バイオ燃料も、電動化も、すべてが選択肢であるという思想だ。
低炭素ガソリン仕様GR86、「燃料を鍛える」戦いへ
#28 TGRR GR86 Future FR concept
28号車「TGRR GR86 Future FR concept」には、ENEOS製の低炭素ガソリン(E20)が投入される。これは、従来の化石燃料と比べてCO₂排出量を削減できる代替燃料。トウモロコシやサトウキビなどの植物由来エタノールを20%混合したもので、成長時にCO₂を吸収する“カーボンニュートラル”構造が特長だ。
スーパー耐久という過酷なレース環境を利用し、複数のE20燃料を比較・評価。エンジンや燃料系に与える影響を洗い出し、将来の市販車普及を見据えた技術フィードバックを進めていく。
32号車「TGRR GR Corolla H2 concept」は、信頼性向上で完走を目指す!
#32 TGRR GR Corolla H2 concept
2023年から液体水素を直噴エンジンに使うという世界初の試みに取り組んできた液体水素エンジンGRカローラ。昨年のS耐24時間では、連続30ラップ走行という大きな成果を挙げたが、電気系トラブルによって満足な走行時間を得られなかった。
今回は、そのリベンジ戦。32号車「 TGRR GR Corolla H2 concept」は、信頼性を高めた車両と液体水素システムで、24時間完走を狙う。目的はただの勝敗ではない。得られたすべてのデータを、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を目指し、得られたデータを開発に活かしていくという。
その液体水素エンジンGRカローラに新たに導入されるのが、ストイキ燃焼(高出力)とリーン燃焼(低燃費)を自動的に切り替える技術。ドライバーのアクセル操作に応じて空燃比を最適化し、エネルギー効率を最大化する仕組みだ。将来の市販水素車に向けた、重要なステップとなる。
さらに、これまでは外部アクチュエータで開閉していたバルブを、内部ピストン構造に刷新。これにより流路が拡大し、充填スピードは約30%向上。外部アクチュエータが不要になったことで2kgの軽量化も実現。マイナス253℃という極低温でも高い密閉性を維持し、水素が漏れ出すリスクを抑制されている。
また、主に電力供給と信号伝達のため、車両の隅々に配索されている複数の電線を束ねるワイヤーハーネスの一部を銅線からアルミに置換。従来のアルミ化の課題であった腐食には、古河電工が開発した密閉型端子「α端子」を採用することで対処。耐水性と量産性を両立させ、軽量化と信頼性を同時に実現した。
選択肢を増やすことが、カーボンニュートラルへの道
電気だけじゃない。内燃機関も進化できる。そのことをトヨタはこのS耐富士24時間レースで証明しようとしている。液体水素も低炭素ガソリンも、明日の選択肢になり得る。カーボンニュートラル社会の実現に向けて、想いをともにするENEOSと自動車メーカーのAll Japan体制で、クルマだけじゃなく燃料も鍛える挑戦が続く。
今年もやるぞ「トヨタイムズスポーツ24時間生放送」
富士スピードウェイで開催されているS耐富士24時間レースは、5月31日14:00よりYouTube「トヨタイムズスポーツ」にて生中継中だ。走り、闘い、壊れ、修理し、復活するクルマたちの24時間を見逃すな。
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