
ここで紹介する3台の軽自動車は、カテゴリーとしては4ナンバーの“商用車”を名乗るが、その中身を吟味していくと5ナンバーの乗用車モデルにはない独自の魅力を持っている。手頃な価格帯で実用的に使えるクルマを探しているならば、ぜひとも覚えておきたいモデルだ。
●解説:川島茂夫/編集部
新世代の商用軽モデルは、レジャーユースでも活躍可能
商用車は“ビジネス向け”のモデル。この認識は決して間違いではないが、少し視点を変えると、趣味の道具を運ぶレジャーモデルとして、面白いクルマを見つけることができる。
なかでも注目したいのが軽自動車だ。自分に必要な機能を見極め、かつコスパを求めていくならば、見逃してはもったいないモデルを見つけることができる。その代表例といえるモデルが、ダイハツ・アトレー(ハイゼット)、スズキ・スペーシアベース、ホンダ・N-VANの3モデルだ。
ダイハツ・アトレー【全グレード、ターボ採用の上級モデル。独立荷台のデッキバンも注目すべき1台】
価格帯:156万2000~206万8000円。撮影車はデッキバン。
アトレーは、ハイゼットのワゴンバリエーションとして誕生した歴史があり、5ナンバーモデルとして長らく販売されていたが、2021年に登場した現行モデルは、商用車仕様の4ナンバーモデルのみのラインナップになっている。2WDの駆動方式にFRを採用したことや、長くフラットな荷室スペースが確保されていることからも分かるように、働くクルマ志向を意識した設計思想に変化はない。
ビジネス需要に特化したハイゼットに対して、豪華仕様のアトレーという関係は、現行世代でも同じ。商用車のポテンシャルをレジャー用途向けに仕立て直したモデルというのがしっくりくる。実際、アトレーは全グレードに64馬力のターボエンジンを採用しており、動力性能面もクラストップ級。内装まわりもかなり乗用車ライクで、前席に関しては乗用車とほぼ同じといって良いほど。レジャー用途に特化したキャビンを備えていたウェイクの後継にも位置付けられる内容を持つ。荷台を後部端に独立して設置したミニトラックともいうべき「デッキバン」が選べることも、アトレーを語る上で外せない特徴だ。
スズキ・スペーシアベース【小物収納や多目的デッキボードなど、レジャーユースを意識した装備が目白押し】
価格帯は139万4800~166万7600円。撮影車はXF。
スペーシアベースは、車名のとおりにスーパーハイト軽ワゴンのスペーシアを4ナンバー化したモデルで、こちらも商用車らしさを感じるのは簡素な後席設計くらい。商用車化にあたり後席位置の変更と荷室容量の拡大などの設計変更がされているが、その他にもレジャー用途での使い勝手を高めるために、小物収納や多用途デッキボードなどの機能が加えられている。実態としてはスペーシアの商用仕様というよりも、2名乗車を基準にしたレジャーワゴンとして開発されたモデルだ。
アトレーやN-VANにはターボ車が用意されているに対して、スペーシアベースはNA車のみというのがウィークポイント。上級グレードの「XF」には全車速追従型のACCが装着されるが、高速走行時の余力感は少し心もとない。レジャー用途を売りにするモデルだけに、NA車のみというのはもったいなく思える。
ホンダ・N-VAN【低床構造がもたらす広々とした荷室空間。良質なフットワーク性能も見どころ】
価格帯:133万7600~195万9100円。撮影車は+スタイルファン。
N-VANは、ホンダが展開するNシリーズの商用車として開発されたモデル。N-BOXやN-WGNと同じく、Nシリーズのプラットフォームを採用。センタータンクレイアウトによる低床設計がもたらした広々フラットなキャビンスペースがセールスポイントで、レジャー用途向けに、+スタイルファンというグレードも用意され、64馬力のターボ車もラインナップされている。
Nシリーズに共通したフットワークの良さを持つことも見どころのひとつ。N-BOXほどの安定感とゆとりがある走りとまではいえないが、街なかでも高速道路でも商用車とは思えぬほどしっかりとした走りを体感できる。
左がN-VAN、右がN-BOX。助手席側がピラーレス構造となるN-VANは開口部が圧倒的に広いことが確認できる。
価格的なメリットよりも、荷室まわりのアレンジ性の高さが大きなアドバンテージ
3モデルに共通する特徴として、運転支援機能の充実も見逃せない。N-VANは全グレードに、アトレーとスペーシアベースは上級グレードに限定されるが、いずれも全車速型ACCを採用している。ACCは高速長距離走行での運転ストレス軽減効果が大きいため、レジャー用途を考えれば、ぜったい欲しい装備のひとつだ。
気になる価格に関しては、同水準のスーパーハイト軽より少しだけ安め。軽自動車税も乗用車よりも安い(年額で5800円弱)。ただ、任意保険は保険会社によっては年齢制限の特約が制限される場合もあるため、コスト面で圧倒的にオトクとまでは言いにくい。コスパはレジャー用途での実用性で取り戻すくらいに考えたほうがいいだろう
走りを含めた総合性能は、乗り心地を中心に乗用車モデルに及ばない部分があるが、後席&荷室をシンプルに使い倒すことができることは、商用系モデルの大きな強み。キャンピングカービルダーが販売する軽キャンパーモデルは価格的に厳しい、もしくは好みじゃないというユーザーにとって、優れた基本設計に車中泊やベースキャンプ機能などの実用性を盛り込んだ3モデルは買い得と言える。軽自動車だから、商用車だから、という偏見を外して見てみることをオススメしたい。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(軽自動車)
天然木×三河家具職人による機能的で温もりのある内装が『ちょいCam』の魅力 『ちょいCam』は、愛知県豊田市の(株)ルートが手がける軽キャンピングカー。内装に天然木を使用し、三河家具職人による丁寧な仕[…]
フィッシングショー大阪の会場で見かけたユニークなモデル 毎年、多くの釣り人で賑わうイベント、フィッシングショー大阪。最新の釣り具の展示、発表や、プロアングラー(プロの釣り人)によるセミナーなどが行われ[…]
天然木だぞ…ボックスの使い方で色々な表情を見せるダイハツ・アトレー ベースになっているのはダイハツのアトレー。軽自動車にもかかわらず荷室が広いのが特徴で、カスタムの幅も広い。 まず車内をみて思うのが「[…]
マツダ スクラムベースの軽キャンパー マイクロバカンチェス(リンエイ) ベースとなる車両はマツダのスクラム。軽自動車ながら広い室内空間が魅力の車だ。シンプルな外観は街乗りにも最適で、普段使いからアウト[…]
軽自動車でも豪華で個性的なクルマが求められた時代。それを象徴するモデルとして誕生 1980年代の軽自動車市場は、1979年デビューのスズキ アルトなどの経済的な商用車がリードした。しかし、1989年に[…]
人気記事ランキング(全体)
ショックレスリングとは? 一般の金属とは異なる原子の規則相と不規則相が存在する“特殊制振合金”を採用した金属製のリングで、シート取付ボルトやサスペンションアッパーマウントのボルトに挟み込むだけで、効果[…]
見た目は普通でも中身はスペシャル、あえて別ネームで差別化 「トヨタ・1600GT」は、1967年に発売されたトヨタのスポーツクーペです。 もしこの段階で名称をWEBで検索してその画像を見たとしたら、「[…]
軽自動車でも『車中泊』は『快適』にできます。ベース車両はスズキのエブリイ。 エブリイの最大の強みは、その広い荷室空間にある。軽自動車でありながら広い荷室空間は、後部座席を畳めば大人が横になれるほどのス[…]
ベース車両はホンダのフリード ベースとなる車両はホンダのフリード。街乗りでも違和感がない上に、広い車内スペースを持つことで、アウトドアでも大活躍する、ホンダの人気のモデルだ。全長は4265mmとコンパ[…]
ベース車両はトヨタのハイエース 圧倒的な耐久性と広い荷室を備えた日本を代表する車種の1つ、トヨタ・ハイエース。ビジネスユースからアウトドア、さらにはキャンピングカーのベース車両としても高い人気を誇る。[…]
最新の投稿記事(全体)
プロトタイプといいつつも、スガタカタチはほぼ完成形 このたびインテリアやメカニズムが公開された次期プレリュードは、“プロトタイプ”こそ取れないものの、そのスガタカタチはどうみても製品仕様に限りなく近い[…]
パーキングメーターの時間を超過した…いったいどうなる? ゲート式駐車場/クイック式駐車場など、一口に駐車場といってもその形態は多種多様。都市部の大通りに設置されていることの多い「パーキングメーター」も[…]
ベース車両はトヨタのハイエース 圧倒的な耐久性と広い荷室を備えた日本を代表する車種の1つ、トヨタ・ハイエース。ビジネスユースからアウトドア、さらにはキャンピングカーのベース車両としても高い人気を誇る。[…]
軽自動車でも『車中泊』は『快適』にできます。ベース車両はスズキのエブリイ。 エブリイの最大の強みは、その広い荷室空間にある。軽自動車でありながら広い荷室空間は、後部座席を畳めば大人が横になれるほどのス[…]
見た目は普通でも中身はスペシャル、あえて別ネームで差別化 「トヨタ・1600GT」は、1967年に発売されたトヨタのスポーツクーペです。 もしこの段階で名称をWEBで検索してその画像を見たとしたら、「[…]
- 1
- 2