ベストバイは、フラッグシップの「SPORT RS」で決まり! トヨタ・クラウンスポーツPHEVモデル 試乗インプレッション

●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之

さらに完成された走りで、HEV車よりも総合力は一枚上手

クラウンスポーツの登場には「ゼロクラウン」以来の衝撃を受けた。クラウンでスポーティを狙うならクーペ系と思っていたが、2BOX系でのアプローチはとても新鮮。しかもサイズよりもコンパクトに見えるスタイリングにも魅力を感じる。

全長×全幅×全高は4720×1880×1570mm。ホイールベースは2770mm。クロスオーバーよりも全長は210mm、ホイールベースは80mmほど短くなっている。スタイリングの印象はフォーマルさよりもカジュアルな印象が強め。

そのクラウンスポーツの上位設定モデルとして追加されたのが「SPORT RS」だ。パワートレーンは2.5L・HEV(ハイブリッド)からPHEV(プラグインハイブリッド)に変更され、サスには電子制御ダンパーを用いるNAVI・AI-AVSを採用。さらにブレーキシステムもフロントに対向6ピストンが奢られる。もちろん、HEV車でも好評の4輪操舵システムのDRSも抜かりなく装備されるなど、モデルネームの「スポーツ」にふさわしい走りのアイテムが装着されている。

左右非対称なアンシンメトリーなインパネレイアウトも特徴のひとつ。SPORT RSは、パネルやトリムがレッド配色になるなど、スポーティイメージを強化。

クラウンクロスオーバーにも「RS」は存在しているが、パワートレーンが異なり、そのパワーフィールも対象的だ。2.4Lターボのパラレルハイブリッドを用いるクロスオーバーのRSは、ターボならではの力強さと切れ味が魅力。一方、スポーツのSPORT RSは全開加速でも騒音や加速の盛り上がり感に威圧的な部分がなく、素直さと軽快感を前面に出した特性。普通に走らせる分には上品なプレミアムモデルらしさが勝っているのだが、いざとなれば速さも楽しめるタイプに変貌する。

本革シートもサイドサポートが大きくなったスポーツシートを装着。2BOXボディでもキャビンはクラウンにふさわしい広さがあり、後席は頭上まわりも足元まわりもかなりの余裕がある。

特に印象的なのは、電動感をことさら感じさせない制御特性で、走行時のエンジン稼働頻度は高く、速度域に応じて幅広いエンジン回転域を使用するタイプ。当然、加速などでモアパワーが欲しい状況では電動アシストが介入するのだが、その介入のタイミングも制御も極めて自然なことに凄みを覚える。運転感覚はすこぶる出来の良い内燃機モデルか、と思わせるほどだ。

フットワークも洗練という言葉がしっくりとくる。スポーツモードを選択しても、サスの硬さで押さえ込むような部分はなく、ストロークと収束性で走行安定性とコントロール性を高めてくれる。ノーマルモードやエコモードではロール等の挙動が少し大きめになるが、基本的な操縦特性に大きな変化はない。路面からの細かな振動などもHEV車(SPORT Z)よりも明らかに減少しており、走りの質の面でも明確な向上ぶりを感じることができる。

トヨタのPHEVモデルとしては初となる急速充電に対応。普段の街乗りはBEV的にふるまいたいというニーズに対しても柔軟に対応できるようになった。

急速充電にも対応するなど、PHEVとしての性能向上も見どころだが、やはりHEVのSPORT Zに比べて走りのアップデートの幅が大きいことが、SPORT RSの最大の魅力。クラウンスポーツが目指す新たなプレミアムスポーツというコンセプトを、最も明確に体現したモデルであるのは間違いない。

HEV車と同様に2.5ℓ直4エンジンにリヤ側にもモーター(E-Four)を組み合わせるシリーズパラレル式だが、PHEVは駆動バッテリー容量が増加したことで駆動モーター出力を向上。システム最高出力227kW(309PS)を発揮する。

SPORT RSの価格は765万円。HEVのSPORT Zの価格は590万円。その差は175万円になるが、PHEVを搭載したことによるパワートレーンの強化や、走りの質をより高める機能装備のアップデートを考えると、価格の上がり幅は妥当と思える。現在(2月中旬)の納期は、PHEVは3~6か月が目安。HEVは3~10か月なので、PHEVの方が納期が早くなるケースもありそうだ。

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