交通事故はさまざまな要因によって発生しますが、なかでも歩行者の信号無視によるクルマとの衝突事故は、死亡事故につながる重大な問題となっています。歩行者と自動車の交通事故では、自動車側のほうが過失割合が高いのが一般的ですが、歩行者の信号無視が原因で発生した事故でも、クルマに過失はあるのでしょうか?
●文:月刊自家用車編集部(ピーコックブルー)
歩行者が信号無視した場合は、“一方的にクルマ側が悪い”とはならない
そもそも交通事故における過失割合は、事故の原因となった各当事者の責任の重さを数値化したもの。
たとえば歩行者が信号無視をして交通事故に遭った場合、完全に無過失と見なされることは稀だそうです。
道路交通法第7条では、「道路を通行する歩行者等または車両等は、信号機の表示する信号または警察官等の手信号等(前条第一項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない」と定められており、たとえ交通弱者の歩行者であっても、違反をすれば2万円以下の罰金または科料に処される可能性があります。
また過去の事例では、歩行者とバイクの衝突事故が発生した際、事故原因が歩行者の信号無視によるものと判断され、歩行者が重過失傷害罪/重過失致死罪で書類送検されたケースも報告されています。
したがって、歩行者の信号無視が原因で発生した事故では、歩行者にも一定の過失が認められることが一般的です。
具体的には、歩行者が赤信号で道路を横断し、その際に自動車と衝突した場合の過失割合は、自動車:歩行者=30:70とのこと。
過失割合は、事故が発生したときの具体的な状況に応じて異なりますが、歩行者が信号無視をした事実が明確であれば、通常は歩行者側に大きな過失が課されます。
万が一の備えとして、ドライブレコーダーの装着は極めて効果的
ただ、事故に遭った歩行者が幼児/身体障がい者だった場合、過失割合は40:60や50:50になるケースもあると言われています。
また、自動車側にも安全運転義務違反などの過失がある場合は、事故発生時の過失割合が調整されることがあるそうです。
例として、自動車が時速15km以上30km未満の速度超過をしていた場合、自動車側の過失割合は10%程度加算されるとも言われています。
時速30km以上の速度超過をしていた場合の過失はより重く、20%程度加算されるとのことなので、ドライバーは常に危険を想定しながら運転をしなくてはならず、歩行者の予想外の行動にも対応できるような心構えが必要と言えそうです。
とはいえ、歩行者の急な飛び出しや信号無視に対応するのは困難です。
自分は悪くないと思えるような状況であっても、自動車側には一定の過失が認められてしまいます。
また、歩行者側から安全運転義務違反を主張されるケースもあるため、ドライバーは事故回避の困難さを証明することが重要です。
事故発生時、歩行者が赤信号を無視していたか/自動車側は速度超過していなかったか/適切にブレーキを踏めていたか/目撃者がいたかなど、これらの情報を伝えることができれば、正当性を主張できる可能性が高いようです。
証明にはドライブレコーダーの映像が有効なので、もしもの事態に備えてクルマに装備しておくとよいでしょう。
速度を出さない安全運転を心がける、これに勝る対処法はなし
もちろん事故の当事者にならないことが一番望ましいですが、不測の事態にも落ち着いて対処できるよう、日頃から備えておくことも大切なポイント。
上記のように、歩行者の信号無視が原因で発生した交通事故では、歩行者のほうが過失割合が高く設定されているのが一般的です。
しかし、事故発生時の状況によって歩行者側/自動車側両方の過失割合が増減することもあるため、一概に歩行者の過失が高くなるとは限りません。
万が一そのような状況で事故が発生してしまった場合は、安全運転義務を遵守しており、事故の回避が困難であったことを証明しましょう。
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