
雨の日の運転は視界が悪くなるだけでなく、路面も滑りやすくなるため、晴れた日よりも事故のリスクが高まります。とくに注意したいのが、夜間に発生しやすい、歩行者や自転車が消えてしまう“蒸発現象(グレア現象)”。この現象はいったいどんなメカニズムで発生するのでしょうか?
●文:ピーコックブルー(月刊自家用車編集部)
“蒸発現象(グレア現象)”とは? どういった危険性がある?
“蒸発現象(グレア現象)”とは、夜間走行の際、自分のクルマと対向車のヘッドライトの光が重なった時に、両車の間にいる歩行者や自転車が光に溶け込むように消えて見えなくなってしまう現象です。良く晴れた日などに、トンネルの出口付近で眩しさで前を走るクルマが急に消えてしまう、というのも同じ現象です。ちなみにこれとは逆に、明るい場所から暗いトンネルなどに入った時、一瞬視界が暗くなります。これは“溶け込み現象”といって、蒸発現象と同じで目の錯覚が引き起こす現象です。この現象によって、横断歩道などを渡っている歩行者に気づくのが遅れて、重大な事故を引き起こしてしまうことも少なくありません。
これが雨の日ともなると、その危険性はさらに高まります。濡れた路面やフロントウインドウについた雨粒などの乱反射によって視界が悪化する上に、対向車のヘッドライトの蒸発現象により、歩行者などへの認知力が極端に悪くなってしまいます。さらに雨天時は路面が滑りやすくなり、突然の障害物や人影を発見してブレーキをかけても制動距離が延びてしまうため、最悪の場合は歩行者や自転車と衝突してしまう危険性があるわけです。
蒸発現象による交通事故を防ぐにはどうすればいいの?
蒸発現象は対面からくる強い光に紛れてモノが見えなくなってしまう現象です。ゆえに、まったく発生させないようにすることは不可能にしても、この現象が生じた際に事故を起こさないようにすることは可能です。
ありきたりのことではありますが、交通事故を未然に防ぐためには、安全運転を心がけることがなにより大切です。雨天時はふだんよりもスピードを落とし、前方の状況をより注意深く観察しましょう。クルマの速度を抑えることで、突然の障害物や歩行者を発見した際の対応時間を確保できます。
見えない場合は、そこに何かあると仮定して運転することが必要
歩行者側からすると、当然クルマが近づいてくることはわかっていますから、そのクルマのドライバーから自分が認知されていない、なんて想像もしていないことです。ゆえに、クルマは停まってくれると思いがちです。また、雨の日は傘をさしていたり、フードをかぶっていたりすることで、周囲の状況把握がふだんよりも困難です。「雨だから歩行者はいないだろう」というドライバーの考えと、「歩行者優先だから大丈夫だろう」という歩行者の考えが、重大な事故の発生リスクを大幅に高めてしまいます。交通安全は、道路を利用するすべての人々の協力によって実現されるものであり、蒸発現象の危険性を広く認識して、互いに配慮し合うことがなによりも大切です。
常にフロントウインドウの汚れや油膜を取っておくことが大事!
ふだんから準備しておきたいことは、極力視界をクリアにしておくことです。フロントウインドウに汚れや油膜が付着していると、昼間はあまり気づかなくても夜間走行になると油膜などに光が乱反射してギラギラ感を引き起こします。この油膜を除去するだけでも、蒸発現象を最小限に抑えることが可能です。とくに雨の日は顕著に差が出るので、こまめにウインドウはクリアにしておきたいものです。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(クルマ雑学)
リアサスは、固定式リーフスプリングからコイルスプリングへ進化していった 長い間、リアの車軸は固定式で、それをリーフスプリングで支えていた。コイルスプリングが実用化されると、一部の高級車でそれを使うもの[…]
馬車の時代から採用されていたサスペンション サスペンションを日本語にした懸架装置という言葉が長く使われていた。その名のとおり、初期のサスペンションは車輪を車体から吊すものととらえられていたのだ。 サス[…]
初期のCVTは、駆動プーリーのみで変速比幅は狭かった ベルトやチェーンで動力を伝達する方法は古くから行われていた。この方式で変速までも行おうと考案されたのがCVTだ。 オランダのDAF社は1959年、[…]
1速からはじまった変速機 世界で初めてガソリンエンジンを搭載した自動車はベンツの3輪車で、次いでダイムラーが4輪車を送り出した。ベンツのエンジンは985㏄で最高出力は0.88ps/400回転と非力なも[…]
トーイングトラクター TOYOTA L&F 2TD-25:小さくても超ヘビー! 重い理由はボディの鉄板にあり 旅客機に積み込まれる手荷物の入ったコンテナを運ぶ。これも空港での重要な仕事のひとつ[…]
人気記事ランキング(全体)
前輪ディスクブレーキ装備やトレッド拡大で、高速走行に対応 オーナーカー時代に向けて提案したスタイリングが時代を先取りしすぎたのか、世間の無理解と保守性に翻弄されてしまった4代目クラウン(MS60系)。[…]
一年中快適。冷暖房完備の“住める”軽キャンパー これまでの軽キャンパーに対する常識は、スペースや装備の制限を前提とした“妥協の産物”という印象が拭えなかった。しかしこの「TAIZA PRO」は、そんな[…]
サイドソファとスライドベッドがもたらす“ゆとりの居住空間” 「BASE CAMP Cross」のインテリアでまず印象的なのは、左側に設けられたL字型のサイドソファと、そのソファと組み合わせるように設計[…]
ベッド展開不要の快適な生活空間 全長5380mm、全幅1880mm、全高2380mmという大型バンコンでありながら、その中身は大人二人、あるいは二人+ペットでの旅にフォーカスされている。7名乗車・大人[…]
デッドスペースにジャストフィット! 車内の温度較差を解消! 暑いシーズンのドライブは、車内の環境がシビアになりがち。炎天下に駐車後に乗り込む際や、夏場の渋滞中など、クーラーだけではなかなか車内温度が下[…]
最新の投稿記事(全体)
鉄粉やドロ、油などの汚れが蓄積されがちなホイール 普段の洗車で、ある程度洗えていると思っていても、実は、汚れを見落としがちなのがホイールだ。最近は、複雑な形状のものも多く、なかなか細部まで洗浄しにくい[…]
アウトドアに最適化された外観 まず目を引くのは、アウトドアギアのような無骨さと機能美を感じさせるエクステリアだ。純正の商用車然とした表情は完全に姿を消し、精悍なライトカスタムやリフトアップ、アンダーガ[…]
「未来の国からやって来た」挑戦的なキャッチフレーズも話題 初代の「A20/30系セリカ」は1970年に登場しました。ちょうどこの時期は、モータリゼーション先進国の欧米に追い付けという気概で貪欲に技術を[…]
スノーピークが特別出展「キャンパーの食卓」も登場 スターキャンプは、1991年から続く三菱自動車が主催する名物オートキャンプイベント。これまで1万組以上の家族が参加し、自然の尊さを学びながら、家族や仲[…]
人気の「AMGライン」や全モデルに本革シートを標準装備化 各モデルに追加された「Urban Stars」は、人気の「AMGライン」や全モデルに本革シートを標準装備化することで、スポーティで上質さを強め[…]