
●まとめ:月刊自家用車編集部
国産黎明期の「売れるクルマ」の条件は、頑丈であること
スバル360の登場で、軽乗用車は庶民のマイカー候補として熱い視線を浴びるようになり、1960年代になると、マツダやスズキ、三菱などが続々と新型軽乗用車を投入しました。
とはいえ当時の軽乗用車は、高速道路では普通車より低い制限速度にも到達できない半人前の性能です。
本当は小型車以上の自家用車が欲しいけれど手が届かない人々が、仕方なく(しかしかなりの無理をして)軽乗用車を買っていました。
では、小型車以上のクルマは誰が買っていたのかというと、個人ユーザーはいわゆる富裕層。今なら1000万円ぐらいする高級輸入車に乗っているような人たちです。
そしてもうひとつのボリュームユーザーがタクシー業界でした。当然、国内の自動車メーカーはその両者の顧客を意識してクルマを開発しました。
日産はオースチンで学んだクルマ作りを活かしながら、日本の悪路でも壊れない頑丈なダットサンを1955年の110型、1957年の210型へと進化させます。
1958年に出走車の半分しか完走できない過酷なオーストラリア一周ラリーで見事クラス優勝を勝ち取ると、たちまち“技術の日産”の名声が轟いたのです。
海外ラリーの勝利で株価まで上がったその理由は、それほど丈夫なクルマなら、タクシー業界御用達になるだろうと思われたから。
実際、ダットサンはたちまち小型クラスのタクシーの定番になりました。対するトヨタのクラウンも頑丈な作りで中型クラスを制し、以後長らくタクシーの主役となります。
一方、立川飛行機出身者たちが興した、たま自動車も、旧中島飛行機が分割された後の一社である富士精密工業と1954年に合併してプリンス自動車となり、1957年には、先進的な設計の初代スカイラインを生み出しました。
1957年「Prince Skyline1500 Deluxe」
しかし、クラスとしてはクラウンのガチンコライバルとなるこちらは、あまりタクシーには使われていません。
トヨタが全国のディーラー網をすでに構築していて、酷使に耐えるサービス体制も確立していたのに対して、航空機エンジニアが開発したプリンスは性能は高いものの、メカニズムが繊細すぎるしディーラー網の整備も十分でなく、タクシーのタフな使い方には向かないと考えられたのでしょう。
クルマという商品を売るためには、ただいいものを作ればいいというものではなく、ユーザーとの接点となるディーラーのきめ細かな設置や充実したサービス体制の構築など、ものづくり以外の部分も大切なのです。
※本稿は、内外出版社発行「教養としてのニッポン自動車産業史」を再構成したものです。
内外出版社「教養としてのニッポン自動車産業史」紹介サイト→https://jikayosha.jp/2025/10/31/281683/
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