約1年半ぶりの新たなラインアップとして国内フィアットブランドに追加された「600e」。ちなみにイタリア語の数字の読み方は、1=uno(ウーノ)、2=due(ドゥエ)、3=tre(トレ)、4=quattro(クアットロ)、5=cinque(チンクエ)、6=sei(セイ)……ということで600eはセイチェントイーと呼ぶのが正解だ。まあそんな豆知識はさておき、9月10日から全国のフィアット正規ディーラーで販売が始まったばかリのモデルに早速試乗してみた。タッチインプレッションを含めてリポートしたい。
●文/写真:月刊自家用車編集部
まずは「BEV」から先行導入。その価格は585万円なり
今回導入された600eは、実質的には従来の500Xの後継となる位置づけだ。そのため、カテゴリーとしては現在最も人気が高いコンパクトSUVに分類される。
また、先だって国内導入された500eと同じくBEV仕様ではあるのだけれど、こちらの600eはマイルドハイブリッド仕様が来年加わるというのが見逃せないところ。
今回のBEVモデルが585万円というところを考えれば、マイルドハイブリッド仕様はかなりお買い得なプライスで登場するんじゃないのかな? ファンからすれば今なのか? 待つべきか? 悩ましくも嬉しい悩みではある。
新世代フィアットならではのデザインセンスを、最新BEVにも注入
エクステリアはこれまでのシリーズの流れを汲んだアイコニックなデザインが特徴だ。
ボディカラーは新色の「サンセット オレンジ」「スカイ ブルー」に加え、定番人気の「ホワイト」といった3色展開。ボディ各所に施された600の文字が個性を高らかに主張し、大径18インチのダイヤモンドカットアルミホイール&215/55R18のタイヤを履く。
全体的に丸みを帯びたフォルム、CをモチーフにしたLEDデイライトやヘッドライトデザインなど、ひと目で“あの500の一味”と分かるのがいかにも、だ。フィアットならではのアプローチとその愛らしさに思わず頬が緩んでしまう。
インテリアも秀逸。アイボリーを基調にしたエコレザーのシートはFIATロゴをエンボス加工したもので、ターコイズブルーの目にも鮮やかなステッチが爽やかでスポーティ。とても軽やかな印象を受ける。このあたりの演出はさすがお洒落なイタリア車と唸らされる。
運転席は6WAYパワーシートとなっており、助手席もシートリフターを装備。タウメル式のリクライニング機構を装備しており、無段階にシート角度を調整できる。前席2座にはシートヒーターが備わるのも嬉しいところだ。丸型のメータークラスターや2スポークステアリングホイールなど、初代600を連想させるアイテムも心にくい。水平基調のインパネデザインも500eと共通ですっきりとしていて気持ちいい。
インフォテイメントも大幅強化、先進装備の充実ぶりも見どころ
また先進的なインフォテイメント面も見逃せない。Googleを活用したナビゲーションシステムを備える10.25インチタッチパネル仕様のセンターディスプレイは、高輝度かつワイド画面で運転中でもとても見やすい。ホーム画面に戻るのに下方のハードキーを押す必要があるのは少し慣れが必要だが大した問題ではないだろう。メーター内の7インチフルカラーTFT液晶モニターも各種情報を機能的に表示してくれ、ドライビングを補助してくれる使いやすいタイプ。車両周辺の安全を確認できるリアパーキングカメラや360度パーキングセンサー等も備えている。
このように各所に魅力があふれる600eだが、何といっても今回のトピックはフィアットとして下記4つの運転支援機能を始めて採用したこと。国産車オーナーの視点からすればさして珍しい機能ではないかもしれないけれど、利便性が飛躍的に高まっている点は大いに評価したいところだ。
●レーンポジションアシスト
任意の位置を設定し、ステアリングを握ることで位置を維持する機能。運転時のステアリングをサポート。LKAやACCはもちろん備えている。
●アクティブランバーサポート
運転席にシートマッサージ機能を搭載。ドライバーの疲労を軽減。このクラスでの採用はかなり珍しいのではないだろうか。
●ハンズフリーパワーリフトゲート
後部バンパー下部に足先を入れるとトランク ゲートが開く機能。閉じる時の警告音が大きめなのが特徴だ。
●キーレスエントリー(プロキシミティセンサー付)
車両周囲 1メートルから遠ざかると自動施錠、車両周囲 3メートル以内に接近すると自動解錠。鍵を操作しないでもいいのはやはり便利だ。
ラゲッジ機能はクラス平均レベルだが、ユーティリティ機能に少しクセあり
そして日常使いで気になるのがユーティリティ面だ。こちらは標準的なコンパクトSUVモデルと同等と言っていいだろう。ラゲッジ容量は通常時で360L。後席を格納すれば最大で1231Lの積載が可能だ。ちなみに後席は左右6:4分割可倒仕様で、深さは浅めながら床下収納スペースも備えており、200V 対応普通充電ケーブルなどを収納できる。
小物収納に関してはさしたる工夫は見受けられないが、前席センターコンソールにはボックス状の大型スペースを設置。スマホのワイヤレス充電機能やUSBポートなども備えており機能的には十分だ。
ただ開口部がとても大きく、スライドシャッターなどもないのが気になったが、オプションとしてカバーが設定されていると聞き安心した次第。特筆すべき点はないものの、全体としてはソツなくまとまっている印象だった。
モーター駆動がもたらすスムーズで力強い加速感!
気になる走りについてだが、新しいプラットフォームを採用したBEVモデルということもあり加減速ともにとてもスムーズ。少々荒れた路面でのハイスピード走行でも低重心ならではの落ち着きが感じられ、ロードノイズの車内への侵入もかなり抑えられていた。ステアリングの据わりも上々で、とても素直な特性を持っており、中立付近では安定志向、切り足せば思い通りのラインをトレースしてくれる。
ドライブモードはエコ、ノーマル、スポーツの3種が設定されているが、エコ以外は切り替えてもそこまでの特性の違いは感じにくい。とくにスポーツモードはアクセルレスポンスこそ向上するものの、加速自体はかなりジェントル。エコモードはアクセル操作への追従がかなり鈍されているため、逆にペダル操作が煩雑になってしまう印象だった。
個人的にはノーマルモードが使いやすかった。BEVモデルはとかく電動感の演出にこだわりがちで、出足の良さや中庸域でのピックアップなどを誇張する傾向があるが、こういったあたりを強調していないのも逆に新鮮。ガソリン車オーナーが初めて乗っても違和感はまず感じない仕立てだった。
ちなみに今回試乗した真夏日では、エコモードとスポーツモードでは残航続距離が1割強変動したことを付記しておく。
フィアットの屋台骨を支える好素材、Mハイブリッド車も含めて今後の展開が楽しみ
これからのフィアットブランドを支えていく実質的な屋台骨となるのが、この600eとマイルドハイブリッドも含めた600シリーズなのは間違いない。実力派が揃うコンパクトSUVカテゴリーにおいてもその個性を十分に主張し、実用面でも対等以上に張り合える魅力的なモデルに仕上がっていることを確認できたのは嬉しい限りだ。
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