【ディーラー生情報】ホンダN-BOX vs スズキ スペーシア:軽自動車No.1をめぐる“激アツ”バトルが勃発!!

ホンダN-BOX vs スズキ スペーシア

ホンダのN-BOXとスズキのスペーシアは、2023年ともにフルモデルチェンジしたが、スペーシアの大躍進の影響で、これまでにない“競った戦い”が繰り広げられている。2024年秋も、アウトドア仕様の「N-BOX JOY(ジョイ)」と「スペーシアギア」を同時期に投入するなど、お互い引くに引けない状況、これまで以上に熾烈な争いを繰り広げるのは間違いなさそうだ。当然、販売の最前線となるディーラーレベルでも、この秋の主役はこの2台とヒートアップ中。ディーラー取材で判明した最新情報をお届けしよう。

●文:松本隆一(月刊自家用車編集部)

月刊自家用車本誌でお馴染みの松本隆一氏。新車購入ひとすじ40年以上のキャリアを持つ“値引きの神様”であり、これまでに多くのユーザーの新車購入をサポートしている。クルマの購入に関しての電話相談も実施しているので、新車購入で困ったことや商談テクニックを知りたいならばなんでも相談してほしい(相談日時は本サイトにて確認を)。※WEB相談フォームはこちら

スーパーハイト軽ワゴンで勃発した“ホンダ vs スズキ”の1位争いに注目が集まっている

――新車の納期の遅れ、近頃はどうなってますか?

松本:かなり改善されてきたね。日産とかマツダは1か月で納車OKのモデルが多く、ほぼ通常ペースに戻っている。トヨタはあいかわらず2~3か月は当たり前、下手すりゃ半年待ちって感じだけど、これも「9月以降は増産によって納期のスピードを上げてくる」との情報が流れている。理由は「円高によって海外輸出優先の方針を変更して国内に回そう」ってことだそうだけど、はっきりしたことはわからない。

――おっ、今回は「トヨタの納期が早くなる!」つて話題ですか?

松本:いや、その話は現時点ではまだ情報が足りていないので、次回にしよう。今回はこの企画では初めての軽自動車に焦点を当てようじゃないか。

――なるほど、で、テーマはなんですか?

松本:ズバリ、「N-BOX対スペーシア」の熾烈な争いをとり上げよう。

――おおっ“仁義なき戦い”! 生々しくてゾクゾクするじゃないですか(笑)

左がスズキ・スペーシア(カスタム)、右がホンダ・N-BOX(カスタム)。ともに2023年にフルモデルチェンジを実施したが、現行世代はスペーシアの装備機能が高まったことで販売も絶好調、もはやN-BOXがスーパーハイト軽ワゴンの絶対王者とは言えない状況になりつつある。

松本:N-BOXやスペーシアみたいなタイプを“スーパーハイト軽ワゴン”っていうけれど、これらは軽自動車といっても値段は150万円を軽く超えて、中心は200万円超だ。オプションを“盛り盛り”で購入するユーザーも多いので、メーカー/ディーラーにとっては儲けがめちゃ大きい

――100万円前後のアルトとかミライースを2台売るより、スーパーハイトを1台売るほうが“おいしい”って感じでしょうね。

松本:その通り。で、スーパーハイト軽ワゴンで一番販売台数が多いクルマといえば?

――ホンダのN-BOX! 

松本:正解。まあ、N-BOXはスーパーハイト軽ワゴンって括らなくても、軽自動車のナンバー1、ひいては普通車も含めた車名別販売台数ランキングのトップに座ることが多いけどね。

――まさに“ベストセラーカー”ですね。

2023年10月に発売された現行N-BOX(3代目)。標準車はシンプルな造形美を基本としたエクステリアを採用することで、従来以上にファミリーユーザーの獲得を意識したモデルに仕立てられている。

インパネまわりもグレージュを基調とした明るいカラーを採用し、ぬくもりのあるコルクのような質感のインパネトレーなどと合わせることで、自宅のリビングのような室内空間に仕立てている。

高い室内高を活かした広々としたキャビンスペースの魅力も健在。撮影車は内装加飾が強化された中間グレードのN-BOXファッションスタイルのFF仕様。価格は174万7900円。

後席格納機能には床面チップアップなども備わるなど、抜群のユーティリティ機能も健在。安定した走りのみならず、実用性の高さも高く評価されている。

現行N-BOXの標準車は、ターボの設定はなくNA車のみというのが少し残念なところ。街なかではそれほど気にならないが、高速長距離だとターボならではの力感の余裕が欲しくなってしまう。

2024年5月に、スズキ スペーシアが月間販売ランキングの首位を奪還

松本:N-BOXは軽自動車の月間販売ランキングの首位をずっと続けていたけれど、2024年の前半に異変が起きたんだ。2023年末にスズキが投入してきた新型スペーシアによって、5月はその座を奪われてしまった。

――(資料を見ながら)5月はスペーシアが1万5160台で1位ですね。N-BOXは1万4582台…(電卓をたたいて)…その差はわずか578台

松本:翌月の6月はN-BOXが1万6803台、スペーシアが1万2425台。4378台もの大差をつけて、N-BOXが圧勝している

――ホンダ、がんばりました! でも、ちょっとムキになってませんか(笑)

松本:知らんよ(笑)。ついでに前月の4月をみると、N-BOXが1万4947台、スペーシアが1万2532台で、その差は2415台だ。

――7月はN-BOXは1万6500台、8月は1万4441台、一方、スペーシアは1万3073台、1万1166台なんで、スペーシアが首位を獲ったのは5月だけってことですね。

松本:ホンダの販売関係者にいわせると「5月はスズキさんが『1か月だけでもいいからN-BOXを止めろ』って仕掛けた結果だ」ってことらしい。要するに「届け出台数を意図的に5月に集中させて、N-BOXの連続首位を止めた」って言いたいわけだ。

――そうなんですか?

松本:知らんよ…まあ、業界の噂話ってことで(笑)… でも、たしかに“連続1位”ってのは宣伝効果が大きい。

――そうですね。ユーザーには“売れてるクルマはいいクルマ”って印象を持たせますよね。連続1位って、宣伝費に換算するといくらぐらいですかね?

松本:知らんよ(笑)… そうね…、億単位の効果があるとみていいんじゃないか。

――一度でも首位を滑っちゃうと“愛されて連続1位”みたいなキャッチフレーズが使えなくなっちゃいますよね。5月の失敗を肝に銘じたのか、その後、N-BOXは気を引き締めて首位を続けていますね。

現行スペーシアは、N-BOXのフルモデルチェンジに遅れること1か月、2023年11月に発売開始。キャビン機能や運転支援機能のブラッシュアップにより、先代よりも魅力がアップしている。

エクステリアは頑丈で大容量のコンテナをモチーフ、インテリアは水平基調と立体感を組み合わせた上質な空間をイメージしてデザインされる。機能性と居心地の良さを意識したパッケージだ。

格納時のフラット床面構造に加え、後席には簡易的なオットマンとしても活用できるマルチユースフラップを備えるなど、使いやすいアレンジ機能がプラスすることで、さまざまなライフシーンで活躍できそう。

スペーシアも標準車にはターボは設定されていないが、こちらは小型モーターが組み合わされるマイルドハイブリッド仕様になる。またデュアルセンサーブレーキサポートIIが標準装備されたことで、運転支援機能が強化されたことも人気を集める理由になっている。

6月以降はN-BOXが1位に返り咲いたが、その台数差はかなり縮まっていて…

松本:ところが、再び危うくなってきている。

――N-BOXは7月が前年比7.9%ダウン、8月が14.1%ダウンですが、スペーシアは33.3%アップ、27.3%アップと、好調ですね。このままスズキが勢いをつけて、再び首位を奪うってことですか?

松本:いや、勢いだけじゃひっくり返すのはむずかしい。ここで“新たな武器”が登場する。9月20日に追加された「スペーシアギア」がそれだ。

――スズキのWebサイトじゃ、1か月も前から、派手なティザー(予告)キャンペーンを展開していましたし、売る気満々じゃないですか。

松本:ここ数年、軽自動車を車中泊などのアウトドアに使うユーザーが増えているけど、スペーシアギアはまさにこうしたニーズに合わせている。スズキのディーラーでは「ギアの加入で再びN-BOXを首位の座から落とせる」と自信満々だね。

スペーシアギア(右)は、SUVライクな雰囲気をプラスした、先代でも人気を集めていた定番モデル。標準仕様のスペーシアとドレスアップ仕様のカスタムとはキャラは異なるが、基本的なキャビンレイアウトや安全運転支援機能などは同じ。またスペーシアで設定されていなかったターボ車も選べるなど、スペーシア選びの選択肢が広がることになる。

話題のスペーシアギアで首位奪還を狙うスズキ。ホンダもN-BOX JOYを投入することで対抗

――ホンダ、ヤバイじゃないですか。

松本:いやいや、手をこまねいてみているなんてことはないよ。スペーシアギアの発売にタイミングを合わせて、キャラが被っている「N-BOX JOY(ジョイ)」を9月26日に投入してくる。スズキ側も“首位獲り”にやる気満々だけど、ホンダ側も「連続首位を死守せよ」って檄を飛ばしているそうだ。

――まさに「目には目を、歯には歯を」のガチンコ対決じゃないですか! でも、N-BOXって、スペーシアに比べると、ちょっと設定価格が高いような気がしますね。

スペーシアギアの登場に合わせるように、N-BOXもJOY(ジョイ)を投入する。こちらもターボ車を設定するなど、パワートレーン視点でも選択肢を拡大。親しみやすさの魅力に加えて、動力性能の余裕をプラスすることが可能だ。

1位を守る(奪う)ためには、もうお互い仁義なき戦い(値引き勝負)をするしかない

松本:たしかに、比べるとそんな印象を持つユーザーは多いだろう。そこでホンダ側は“値引きでカバー”戦術を採ってくるとみていい。実際、2023年末、新型スペーシアが発売されたのをきっかけに、N-BOXの値引き条件は緩む傾向が出てきている。

――具体的にはどんな感じですか?

松本:N-BOXの値引きの基本は5万円程度に設定しているディーラーがほとんどだ。もっとも、セールスマンに本音を訊くと「この程度の値引きで買ってもらえるとはまったく思っていない」そうだ。実際は10万円前後を出してくるケースが目立つ。

――10万円ですか…ここからが勝負(笑)ですよね。

松本:ここからは攻め方しだいだね。タントやルークスをぶつけても反応は鈍いけれど、相手がスペーシアとなると、ホンダ側は本気になってくる。正直、付属品をたっぷり付けたら15万円引きでももの足りない。ズバリ、20万円超を目指したいところだ。

――軽自動車で20万円オーバーとなると、気持ちがググッと動きますよね。スペーシアはどうですか?

松本:おとなしく商談すると「新型なのであまり値引きできません」なんていって、7~8万円引きでストップしてくるケースが目立つね。でも、相手かN-BOXとなると、とたんに「負けてなるか!」と上乗せしてくる。これまた付属品の値引きを含めて20万円オーバーが狙えるだろう。それに買い得なのはN-BOXとスペーシアだけじゃないよ。タント/ルークス/eKスペース/デリカミニといったクルマも競合交渉を仕掛ければ、“値引きで勝負”に出てくることは間違いない。

――この秋はバリエーションが拡大されるN-BOXとスペーシアが台風の目になるでしょうから、つまり、軽スーパーハイトワゴンがまさに“買い頃、たたき頃!”ってわけですね。

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