
2024年10月17日にスバルが発表したストロングハイブリッド。エンジンとモーターを効率よく使い分けるシリーズ・パラレル方式を採用した新たなハイブリッドシステムは一体どう変わったのか。ストロングハイブリッドを搭載したクロストレックに乗ることができたので、インプレッションをしていこう。
●文:川島茂夫 ●写真:澤田和久
スバルのストロングハイブリッド
スバルのHEVと言えばe-BOXERだが、従来型はレイアウトとしては本格的なパラレル式を採用するものの、内燃機車との寸法面の互換性を考慮した設計のため、性能的にはマイルドHVに近い設計だった。これに対して新型HVシステムの駆動モーター最高出力を88kWに大幅増。純電動走行域や電動駆動力を高めたストロングHV(S-HEV)として開発された。
パワースペックだけでも明らかな性能向上が見込めるが、注目はHVシステムの変更だ。新システムはトヨタの主HVシステムと同じスプリット式が導入されている。スプリット式は大きな括りではシリーズ・パラレル式に分類されるが、ホンダのe:HEVやミツビシが採用するシリーズと/パラレルの切り替え型に対して、シリーズとパラレルが融合した形で制御しているのが特徴。HVシステムでは最も効率面で有利とされている。
展示されたスバルのストロングハイブリッドシステム
また、搭載エンジンも2.5Lにグレードアップし、HEV専用設計とした。クールドEGR導入領域を高負荷域にまで拡大し、全域での燃費向上を狙っている。それにあわせて、タンクも63Lへ拡大。パワフルに走らせても燃費の悪化を最小限に留める設計と考えていいだろう。つまり、省燃費一点張りではなく、動力性能と燃費の双方を従来型から進化させたシステムと言える。
ストロングハイブリッド専用の2.5L 水平対向エンジン
舗装路から泥濘でも試乗でも高い走行性能を発揮
試乗は勾配路とタイトなコーナーで構成するショートコース。一部泥濘というのがクロストレックらしい。チェックできるポイントは限られているのだが、それでも高い実力だった。
踏み込み直後のトルクの立ち上がりが素早い。初期加速が少々誇張気味だが、その後の加速への繋がりもよく、従来のe-BOXER車の1ランク上の余裕を示す。
泥濘では泥の押し切りや、窪みからの脱出等の瞬発力で乗り越える時のコントロールがいい。トルクに余裕がある分だけアクセルの踏み込み量が少なく、精度の高いコントロールと相まって悪路走破性向上も新システムの見所のひとつだ。
パワートレーンに合わせてシャシー周りにも改良が加えられ、リアダンパーのフリクション荷重の低減やフロントサス周りのアームブッシュ特性等が見直されている。試乗コースではチェックできなかったが、安心感があり長距離走行でも疲れない操縦性や、乗り味の質感の向上が図られている。
実走燃費がどのようになるかは不明だが、動力性能に余裕を持たせた上位パワートレーンとして、S-HEVは十分な性能とドライバビリティを備えている。今回の試乗印象ではとくにSUV系との相性がよさそう。スバルのAWD車がさらに進化していく片鱗を感じた。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(スバル)
現行フォレスターが示す、スバルの現在地 スバルといえば、かつては水平対向エンジンと、それを基盤とする縦置FFをベースとしたシンメトリカルAWDという独自のハードウェア構成が最大のアイデンティティであっ[…]
スバルフォレスター価格:404万8000〜459万8000円 モデル人気を背景とした、強気な売り方を展開中。車両本体の値引きは10万円程度が大半 2025年4月にフルモデルチェンジした現行フォレスター[…]
スバル360の後継モデルとして熱い期待を受けて登場したR-2 1969年8月、てんとう虫の愛称で親しまれたスバル360の後継モデルとして登場したのが、「スバルR-2」。当時のキャッチコピーは “ハード[…]
SUBARUとSTIが共同開発した、走る愉しさを追求したコンプリートカー 今回導入される特別仕様車「STI Sport TYPE RA」は、水平対向エンジンを搭載したFRレイアウトのピュアスポーツカー[…]
BEVとしての基本性能を大きく底上げ 2021年にスバル初のグローバルバッテリーEV(BEV)として登場したソルテラは、電動駆動の利点を追求しつつ、余裕あるSUVボディや先進の安全装備機能が充実するな[…]
人気記事ランキング(全体)
冬のエアコンは“いきなり全開”が一番ムダになる理由 冬の朝は車内が冷え切り、シートもハンドルも硬く感じる。そんな状況で暖房を思い切り上げてしまうドライバーは少なくない。しかし、暖房はエンジンの排熱を利[…]
固着したネジが動かない…作業を止める小さな“壁” どれほど簡単な整備手順でも、一本のネジが固着しているだけで作業は急に難しくなる。サビが食い込み、雨ざらしのボルトが内部で膨張し、樹脂パーツとの隙間に汚[…]
わさびを主成分とした抗菌剤で、エアコン内部のニオイを抑制 エアコンフィルターに装着して除菌消臭効果を格段に向上させるという製品が、自動車部品のグローバルメーカーValeoのわさびデェールだ。この製品は[…]
予想外のトラブルに備える、小さな“安心材料” クルマに乗っていると、どれだけ用心していても避けられない出来事がある。釘を踏み抜くパンクや、走行中の異物接触、さらには路肩での急な停車など、経験した人なら[…]
一見、何に使うかわからないが、活用の幅は広いアイテム 今回紹介するのは、様々なカー用品を多数リリースするカーメイトのグッズだ。商品の写真や装着した写真だけを見ても、どうやって使用するのかわかりにくいか[…]
最新の投稿記事(全体)
目玉の「ミゼットX 大阪Ver.」には、ダイハツの地元を象徴する大阪城マークを採用 出展テーマは“わたしにダイハツメイ。小さいからこそできること。小さいことからひとつずつ。”とし、「わたしにぴったり」[…]
BEVでも「走りの楽しさ」は深化できる このモデルはマスタードライバーを務めるモリゾウ(豊田章男会長)の「クルマ屋が残していくべき技術・技能を次の世代に受け継がなければならない」という強い想いのもと、[…]
モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」を結集 今回、TGRが発表した2台のハイパースポーツは、TGRが目指している「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を深化させ、GR[…]
トヨタのレジェンドモデルが高速走行を繰り広げる! 今回発表された「GR GT」は単なる新しいスポーツカーではない。TOYOTA 2000GT、Lexus LFAと続いてきた系譜を継ぐ、トヨタの思いが込[…]
固着したネジが動かない…作業を止める小さな“壁” どれほど簡単な整備手順でも、一本のネジが固着しているだけで作業は急に難しくなる。サビが食い込み、雨ざらしのボルトが内部で膨張し、樹脂パーツとの隙間に汚[…]
- 1
- 2




















