現代であればホンダ N-BOXや、トヨタ プリウス、アルファードあたり。日本にはその年代ごとに、「どこに行っても見かけるクルマ」が存在している。月間数千台〜は売れているであろう国民車や、皆が欲しがる人気車たち。それはある意味、その時代を映す鏡のような存在かもしれない。今回は1980年代に照準を合わせ、当時よく見かけた国産5モデルを見ていこう。
●文:松村 透/月刊自家用車編集部
1:トヨタ マークII/チェイサー/クレスタ[X70]
- デビュー:1984年8月
ボディカラーは”スーパーホワイト”ほぼ一択”だ。ワインレッドの内装に、柔らかなシート表皮。どこか昭和のスナックを思い起こさせるような、懐かしい上質さがそこにはある。
そしてハードトップ、デジタルメーター、直列6気筒エンジン…。ハイソカーブームのど真ん中にいたのが”ナナイチ”こと、トヨタ マークII 3兄弟。つまりマークII/チェイサー/クレスタだ。
このマークII 3兄弟に、”GT TWIN turbo(GTツインターボ)”を設定。高級セダンに当時国内初となるツインカムツインターボエンジン”1G-GTEU”を搭載。最高出力185psを発揮するハイパワーセダンとして、新たな魅力を切り拓いた。
4速ATだけでなく、5速MTが用意されるなど、後の”ツアラー”シリーズの原点ともいえるだろう。
2:ニッサン セドリック/グロリア シーマ[Y31]
- デビュー:1988年1月
3ナンバー専用ボディ、3リッターV6エンジンという「高級車であること」を前面にアピールし、華々しくデビューしたのが”ワイサンイチシーマ”こと、初代シーマだ。プラットフォームは、車名に冠するセドリック/グロリアと共通で、4ドアハードトップとなる。
時はバブル経済、華やかなりし時代まっただ中。シーマはデビューしてから1年で約3万6千台以上も売れた。その結果、当時「シーマ現象」という、デビュー年の流行語大賞における”流行語部門・銅賞”を獲得するほどの高い注目度であった。
あぶない刑事の劇用車としておなじみの”レパード(F31型)”の後期モデルにも搭載された”VG30DET”エンジンを積んだワイサンイチシーマは、最高出力255psのパワーを活かしてリヤをグッと沈ませ、猛然と加速する姿が印象的であった(NAエンジン仕様も用意された)。
3:ホンダ プレリュード[BA4/5/7]
- デビュー:1987年4月
”デートカー”として一世を風靡した先代モデルのフォルムを活かしつつ、キープコンセプトで誕生した3代目プレリュード。リトラクタブルヘッドライトを持つスタイリッシュな外観は、5ナンバー枠に収まっているのが不思議なほど存在感がある。
また、基本はキープコンセプトながらも、メカニズム的には量産車として世界初となる4WS(ホンダ4輪操舵システム)や、サスペンションに4輪ダブルウィッシュボーンを採用するなど「攻め」の部分があったことも、強調しておきたい。
当時、一部の若い男性にとって「サンルーフ付きのプレリュードを所有している」ことは一種のステータスシンボルであり、女性をデートに誘う上で有効な”アピールポイント”であったことだろう。
4:マツダ ファミリア[BD]
- デビュー:1980年6月
「赤いファミリア」とくれば、1980年にデビューした5代目ファミリアを思い出す人も多いことだろう。当時、販売が低迷していたマツダにとって救世主といえるほど、売れに売れたモデルであった。
月間登録台数が、絶対的王者トヨタ カローラを抑えて1位になったことも、1度や2度ではなかったほどだ。奇しくも、同年からスタートした日本カー・オブ・ザ・イヤーの記念すべき第1回目受賞車がこのクルマである。
3ドア/5ドアハッチバックのイメージが強いが、4ドアセダンも追加されている。当時「陸(おか)サーファー」と呼ばれるほど流行した、ルーフキャリアにサーフボードを載せて走るスタイルが”ナウイ”時代だったのだ。
5:ミツビシ ギャラン[E30]
- デビュー:1987年10月
歴代ギャランを語るうえで外せないのが、1987年にデビューした6代目[E30]系だろう。6代目ギャランのトップモデルである”VR-4”は、当時直列4気筒エンジンとしては最強のスペックを誇る205psを発生(最終的には240psまで進化)。
このメカニズムが、後にランサーエボリューションシリーズへと受け継がれていくのだ。また、マイナーチェンジを機に追加された”ギャランAMG”の存在も見逃せない。ホイールまでもがブラックアウトされた外観、内外にさりげなく配された”AMG”のロゴ、AMGによって手が入れられたエンジン…。
こんなスペシャルモデルがカタログモデルとして販売されていたのだから、今からすると驚かされる。
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