
サーキットパフォーマンスとストリートユースを高度に両立したポルシェ911シリーズの人気モデル「911 GT3」が、新機軸を満載してフルモデルチェンジ。1999年の911 GT3誕生から記念すべき25周年を迎えてリリースされた最新の911 GT3は、戦闘力重視のヴァイザッハパッケージと、よりストリート向けのツーリングパッケージを用意し、スポーツカーの最高峰にふさわしい装いを得てマーケットに投入される。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:ポルシェAG
誕生から25周年を迎え、さらなる高みに達した911の人気バージョン
世界中のスポーツカーメーカーが指針とするポルシェ 911シリーズは、1963年のデビューから60年を経た現在もデザインや基本コンセプトを継承し続け、スポーツカーの原点にして頂点のモデルだ。
誕生時のリアエンジンリアドライブ(RR)レイアウトと空冷6気筒エンジンの搭載を長らく踏襲し、現在では全輪駆動システムの追加設定と水冷エンジンへの転換など細部をアップデートしつつ、リアアクスル後方へのエンジン搭載や911独自のデザインエッセンス、2+2レイアウトといったフィロソフィーを堅持するなど、熱烈なファンを世界中に獲得し続けている。
その911シリーズは現在「カレラ」を標準グレードとして展開するが、さらなるパフォーマンスを求めるニーズに応え、1999年に高性能版の「GT3」グレードを投入。ピュアスポーツの「GT2」とは異なり、ストリートユースにも対応する911 GT3は大ヒット。以降、911シリーズのレギュラーグレードとなり、歴代911に用意されてきた。
そして今回、現行モデルに911 GT3がフルモデルチェンジして追加された。
モデル構成は「911 GT3(ヴァイザッハパッケージ)」と「911 GT3 ツーリングパッケージ」のふたつで、前者はサイドプレート付きの固定式大型リアウイングを備え、後者は911本来のスポーティかつエレガントなスタイリングを重視したアピアランスを採用する。
911シリーズきってのパフォーマンスを生む、ポルシェテクノロジーの集大成
911 GT3は、4リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載し、この極めてパワフルなエミッションコントロールシステムを採用するパワートレインは、911 GT3 RS譲りのシャープなカムシャフトを用いることで高回転域におけるダイナミックなパフォーマンスを発揮。
流量を最適化した各スロットルバルブと最適化されたオイルクーラーの恩恵により、最高出力は375kW(510ps)を発生。もっとも軽い車両構成でのパワー/ウエイトレシオはわずか3.8kg(2.8kg/ps)を計上する。
また、7速PDKと6速マニュアルトランスミッションの最終減速比は先代モデルよりも8%短縮されており、どちらのトランスミッションも911 GT3と911 GT3ツーリングパッケージの両方で選択可能。PDK仕様車の0-100km/h加速は3.4秒で最高速度は311km/hに達し、マニュアルトランスミッション仕様車は同3.9秒と313km/hを記録する。
また足まわりでは、エアロダイナミクスに優れた専用開発のティアドロップ型トレーリングアームを採用するダブルウィッシュボーンのフロントアクスルが、高速走行時にホイールアーチのダウンフォース増加とブレーキ冷却の改善に寄与。
車体の軽量化は徹底され、シルバーカラーの新型軽量アルミニウムホイールはバネ下重量を先代モデルより1.5kg以上軽減するほか、ヴァイザッハパッケージまたはライトウェイトパッケージにオプション設定されるマグネシウムホイールも9kgの軽量化を実現する。
さらに40Ahの新しいリチウムイオン軽量バッテリーは約4kgの軽量化を促すなど、新型911 GT3のもっとも軽量な構成では1,420kgの破格とも言える軽量性能を実現している。
◆911 GT3を象徴づける固定式リアウイングは今回も健在。スワンネックの支柱と両サイドに角度のついたプレートを備える。ヴァイザッハパッケージまたはライトウエイトパッケージにオプション設定されるマグネシウムホイールは、標準より9kgものバネ下重量軽減に寄与する。
◆フルデジタル式へとアップデートされた5連メーターは、コントラストの効いた配色で、レブカウンターとストップウォッチは瞬時に読み取れる。再設計されたLEDマトリックスヘッドライト(ホワイトアクセントリングをオプション装備)は、911のすべてのライト機能を兼備している。
尖ったフォルムで周囲を睥睨する「ヴァイザッハパッケージ」
911 GT3と言えば、リアエンジンカバー上に鎮座する固定式大型ウイングが代名詞的存在だが、角度のついたサイドプレートを備えるリアウイングを採用し、強力なダウンフォースと緻密なエアロダイナミクスを実現している。
同様にフロントディフューザーの輪郭変更、スポイラーリップの形状改良、アンダーボディのフィンの改良もダウンフォースに寄与しエアフローを最適化(両パッケージに共通)した。
リアアクスルのアンチロールバー/カップリングロッド/シアパネルは、ルーフ/リアウイングのサイドプレート/エクステリアミラートップシェル/ミラートライアングル/フロントエリアのエアブレードと同様にCFRP製を装備。
インテリアでは、レザーとRace-Texのトリムがレーシーな視覚効果を与え、ダッシュボード上面は初めて反射防止のRace-Texで覆わた。軽量化のためCFRP製ドアハンドルと収納ネットを施すインテリアドアパネル、さらにオプションでCFRP製ロールケージやマグネシウム軽量鍛造ホイールも用意されている。
◆ストリートよりもサーキットユースを優先したアグレッシブなエクステリアがヴァイザッハパッケージの特徴。強力なダウンフォースを生む大型リアウイングは視覚効果も絶大で、911シリーズきっての戦闘的ファルムが印象的だ。
◆新型911 GT3では可倒式バックレストとCFRP製シートシェルを備えた新しい軽量スポーツバケットシートをオプション設定。シートには胸部エアバッグを内蔵し、電動式高さ調節/手動式前後調節/3段階のシートヒーターもオプションで選択可能。ロールバーはオプション設定となり、ポルシェ デザイン製の専用クロノグラフはオーナーのみ購入できる逸品だ。
初めてリアシートシステムを用意した「ツーリングパッケージ」
パッと見はおとなしめなツーリングパッケージは、“羊の皮を被った狼”として屈指の人気を誇るが、今回始めてリアウイングを装着した通常のGT3と同時に登場した。
1973年の911 カレラ RS 2.7の装備バージョンまでさかのぼる伝統的ネーミングの「ツーリングパッケージ」は、2017年からは911 GT3の仕様として復活。新型911 GT3 ツーリングパッケージでは、リアリッドグリルに「911 GT3 touring」のロゴを配する。
時代を超越して愛される911シリーズのエレガントなライン、ティアオフエッジを備えた伸長式リアスポイラー、ガーニーフラップ、アンダーボディに適応されたフィンデザインなど、いずれも高度なエアロダイナミクスバランスに寄与している。
インテリアでは上質なレザーインテリアがクラシックでスポーティーな雰囲気を演出し、911 GT3 ツーリングパッケージとしては初めてリアシートシステムがオプション設定され、これにより日常使用可能なスポーツカーとしての性能を大幅に向上。ツーリングの名にふさわしいドライビングプレジャーをドライバーに提供する。
◆リアウイングは固定式ではなく伸長式となるツーリングパッケージ。ボディに収納されている際には911シリーズのスポーティでありながらエレガントなアピアランスを披露し、911 GT3がもつ「ストリート走行可能なレーシングカー」の性格をもっとも強く感じさせる。
◆上質なレザーインテリアが「ツーリング」の名にふさわしいインテリア。さらにストリート指向を高めるなら、スポーツバケットシートに代えてアダプティブスポーツシートプラス(電動18way調整機能付)を選択することも可能だ。
◆トランスミッションは7速PDKと6速マニュアルから選択可能。最終減速比はPDKとMTのどちらも先代モデルより8%短縮している。リアシートシステムはちょっとした荷物置き場に使え、911 GT3によるロングドライブやお泊りツーリングでは大きな効力を発揮するだろう。
■車両価格
・ポルシェ 911 GT3 2814万円
・ポルシェ 911 GT3 ツーリングパッケージ 2814万円
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