現代であればホンダ N-BOXや、トヨタ プリウス、アルファードあたり。日本にはその年代ごとに、「どこに行っても見かけるクルマ」が存在している。月間数千台〜は売れているであろう国民車や、皆が欲しがる人気車たち。それはある意味、その時代を映す鏡のような存在かもしれない。今回は1990年代に照準を合わせ、平成の当時よく見かけた”トレンディ”な国産5モデルを見ていこう。
●文:松村 透/月刊自家用車編集部
1:ニッサン プリメーラ[P10]
- デビュー:1990年2月
“プリメーラ”といえばこのモデルを思い浮かべる人の多いのではないだろうか。かつて「技術の日産」と謳われた同社が、1990年代のうちに運動性能において世界一になることを目指すべく掲げられた「901運動」。
その一環として誕生したモデルのひとつが、初代プリメーラだ。フロントサスペンションにマルチリンク式をしたほか、欧州車を意識したシャーシ、そして高い実用性。全高が低く抑えられた4ドアハードトップ全盛期にあって、プリメーラは腰高にすら映ったものだ。
しかし、このクルマのハンドリングに舌を巻いたクルマ好きも少なくなかった。当時、結婚して子どもが生まれ、独身時代に心血を注いだクーペやスポーツカーを泣く泣く手放したお父さんたちの、傷を癒した(?)存在であったことは確かだ。
2:スバル レガシィツーリングワゴン[BG]
- デビュー:1993年10月
まさにレガシィの人気を不動のものにした立役者といえるクルマが、1993年10月にデビューした[BG系/2代目]だろう。レガシィツーリングワゴンに乗ってスキー場に行くのが当時”トレンディ”だったのだ。
水平対向4気筒ターボ、排気量2リッターの名機”EJ20型”エンジンを搭載したトップグレード”2.0GT系”が、300万円近い車両本体価格でありながら飛ぶように売れた。
また、4速ATのほかに5速MT仕様も用意されるなど、国産ステーションワゴンの頂点に君臨したレガシィツーリングワゴンは当時の若者の憧れの存在でもあった。
水平対向エンジン特有の排気音をより強調した社外マフラーに交換するなど、スポーツワゴンとしても人気を博した。
3:ホンダ アコードワゴン[CE/CF]
- デビュー:1994年3月
1993年9月にアコードセダンがフルモデルチェンジしてから遅れることおよそ半年。アコードワゴンも2代目へとフルモデルチェンジした。
アメリカ生産のいわゆる”逆輸入車”であったが、右ハンドル仕様として輸入された。エンジンは直列4気筒、排気量2.2リッター、駆動方式はFFのみといったシンプルな構成ながら、200万円台で購入できるスタイリッシュなワゴンとして人気を博した。
このアコードワゴンが現行モデルであった1990年代半ばといえば、空前の円高が続いた時代でもある。アメリカから左ハンドル仕様のアコードワゴンが数多く並行輸入され、当時の若者はバフ仕上げのアルミホイールを装着してガラス面にミラーフィルムを施工するなど、カスタムカーのベース車としても人気があった。
4:トヨタ カルディナ[T190]
- デビュー:1992年11月
ステーションワゴンブームの火付け役となった、スバル レガシィツーリングワゴン(BF型/初代)のライバルとして、トヨタが10代目コロナをベースに開発したのがカルディナ[T190系/初代]だ。
その後、3代・15年にわたってレガシィツーリングワゴンを強く意識した、カルディナのモデルライフがスタートすることとなる。ちなみに実質的にはカリーナ サーフの後継モデルにあたる。
エンジンは直列4気筒のみで、排気量は1.8リッターおよび2リッターの2本立て。駆動方式はFFとフルタイム4WD。10代目コロナをベースにしただけあり、当時クラストップレベルの室内空間は伊達ではなかった。
後に大型のグラスルーフを採用したセミハイルーフのスカイキャノピー仕様も追加された。
5:ミツビシ ディアマンテ[F10/20]
- デビュー:1990年5月
「あのクルマとは違う。ファースト・ミディアムカー宣言」の強烈なキャッチコピーとともにデビューしたのが、ミツビシ[ディアマンテ(F10/20系/初代)]だ。「あのクルマ」が何であるかは明言されていないが、トヨタ マークII 3兄弟を強く意識したものであることは間違いないだろう。
デビュー時はまだまだ憧れの存在であり、高級車の代名詞でもあった”3ナンバー車”が200万円代前半から購入できるにもかかわらず、高級感のある内外装や、堂々たるデザインで人気を博した。
とくに、街中にあふれかえっていた「あのクルマ」ことマークII 3兄弟とは違うクルマに乗りたいと願う層にジャストフィットした。
エンジンは、2リッター、2.5リッター、3リッターのV型6気筒エンジンが用意され、駆動方式もFFと4WDを選ぶことができた。
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