「蘇るロケットマシン」電動時代でもルノーの主役を譲らない、伝説の再来「5ターボ3E」

ルノー5ターボ3E

1980年代にWRCに参戦するため生産されたホモロゲーションモデル「ルノー 5(サンク) ターボ」は、リヤミッドシップとそれに伴い拡幅されたリヤのブリスターフェンダーが特徴的なホットハッチモデル。そして40年あまりの時を経てEVモデルとして復活する「ルノー5ターボ3E」は、さしづめ現代版の5ターボだ。

●文:月刊自家用車編集部 ●写真:Renault

ラリーで大活躍し、一世を風靡したフレンチロケットがEVに

かつてWRCのホモロゲーションモデルとして生産された「ルノー5(サンク)ターボ」は、ファミリーカーの「ルノー5」をベースに魔改造を施し、1980年代のラリーシーンで活躍。リヤミッドに1.4リッター直4ターボエンジンを搭載し、クーリングのため張り出されたブリスターフェンダーによって全幅はベースモデルより200mm以上広げられ、とてもコンパクトカーベースとは思えないアグレッシブなアピアランスと戦闘力で人気を博した。

ルノー5ターボはその後、5ターボ2へと進化したが、当時エントリーしていたグループBカテゴリーの終焉とともにその役目を終え、2000年にそのスピリッツを受け継いだ「クリオ ルノースポールV6」をリリースして以降、その血統は途絶えて久しい。

そしてついにルノーは、5ターボのネーミングを与えた後継モデル「ルノー5ターボ3E」の量産予定モデルを発表。

新世代の5ターボは、パワートレーンに電気モーターを採用する現代的なモデルで、リヤアクスルに搭載されるツインモーターは合計で500bhpオーバー(約506ps超)を発生し、0-100km/h加速は3.5秒を標榜する。先代モデルと同様に後輪駆動レイアウトを採用するのは、先代の5ターボが4WD全盛時代のラリーを最後まで後輪駆動で戦った故事に由来するのだろう。

レトロフューチャリスティックなデザインの完全電動ホットハッチは、リヤのエアインレットのひとつに現代的な充電ソケットがあり、オリジナルの「ターボ」をインスパイアしたブリスターフェンダーをもつ。ルーフはカーボン製で軽量かつ高剛性、その名前と伝統にふさわしい「ポケットロケット」に仕上げられた。

1980年代に一世を風靡したルノー5ターボを現代流プロダクトにアップデートしたルノー5ターボ3E。前後フェンダーが大きく張り出したハッチバックスタイルに、リアアクスルを駆動するミッドシップ構成など、ルノーのアイコン的名車を見事に昇華している。

縦長のテールライトとそれを包み込むワイドなリアフェンダーは、まさに5ターボのイメージ。リアディフューザーも印象的な造形だ。タイヤサイズは前245/35ZR20/後275/35ZR20、ミシュランのパイロットスポーツ4Sを履いている。

2022年に発表されたドリフト仕様から、大幅にモーター出力を向上

じつは5ターボ3Eは、2022年にルノー5の50周年を記念した巨大なリヤウイングを備えるドリフト仕様のショーカーとして発表されている。その際の最高出力は280kW(約380ps)/最大トルク700Nm/最高速度200km/h/0-100km/h加速3.5秒であり、今回お披露目された量産を前提にした5ターボ3Eはモーター出力を大幅にアップした進化バージョンだ。

このドリフト仕様は、今回の量産予定モデルと異なり、わりと詳細なスペックが明らかになっている。ボディサイズは全長4006(リアウイングを含む)×全幅2020×全高1320mm、42kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、車重は980kg(+バッテリー520kg)などだ。

写真を見るかぎりシャーシ関連に大きな変更はなさそうなので、ボディサイズなどはドリフト仕様のスペックが参考になるだろう。また、完全なショーカーだったドリフト仕様に比べて、量産予定モデルは各部がストリート用にソフィスティケートされているのが見て取れる。

詳細なスペックや販売時期などは今後の発表を待たねばならないが、ストリートでその姿を見られる日が待ち遠しい。

2022年にルノー 5が50周年を迎えたことを記念して制作された、5 ターボ 3E ドリフトバージョン。巨大なリアウイングや大胆に穿たれたボンネットスクープ、全身にまとったLEDなど完全なショーカーだが、今回発表された量産予定モデルとの共通点も少なくない。

温故知新で技術をアピールするルノー

ルノーは同じフランスメーカーのシトロエンと比べ、一見すると堅実なクルマつくりを続けているように映るかもしれないが、じつはフィランテレコード2025のインスパイア元になった40CVデレコードや、エトワールフィランテなどの弾けたモデルも数多く製造している。

5ターボ3Eというスーパーホットハッチをつくったり、実験車に100年前の速度記録車をオマージュするなど、自らのレガシーを大切にして後世に伝えるべく邁進する姿は、エンスージアストならずとも好ましく思えるはずだ。

最近ではEV普及に対してさまざまな意見が交わされているが、電動化にブランドの行く末を賭けたルノーの今後に注目したい。

ルノーが20世紀に速度記録挑戦車として製造した1925年製40CVデレコード(写真中央)と、同じく1956年製エトワールフィランテ(写真右)。フィランテレコード2025のボディカラーは、40CVデレコードにインスピレーションを受けて採用したものだ。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。