![「ファンでも意外と知らない」少し長めの正式な車名。よろしくメカドックに登場して人気が再燃。旧車界隈でも再評価が高まるホンダのクルマを紹介。[ホンダ CR-X]](https://jikayosha.jp/main/wp-content/uploads/2025/05/ae46b1f460ee46f789c27b264a6cb421.jpg)
1980年代のホンダといえば…、人によって印象に残っている事柄はいろいろあると思いますが、歴史に燦然と輝く大きな出来事は「ホンダ・F1の栄光」でしょう。1983年に15年ぶりとなるF1への参戦を開始。早くも翌年には初勝利を獲得し、1986年のコンストラクターズタイトルを皮切りに怒濤の快進撃となったのは今でも記憶にしっかり残っています。その快進撃は日本にも多くのファンを生み、現在まで続く「エンジンのホンダ」というイメージを強く残しました。そして市販車に目を向けると、F1への参戦を再開した1983年に登場して、ホンダのスポーツイメージを高めるのにひと役買ったのが「バラードスポーツCR-X」です。ここではその初代「CR-X」について少し話していきましょう。
●文:往機人(月刊自家用車編集部)
若いユーザー層がターゲット。ベルノ店の主力モデルとして登場
「CR-X」という車種名を聞いたことがあるという人は多いと思いますが、初代「CR-X」のフルネームが「バラードスポーツ CR-X」だということは、ホンダ車のファンでも意外と少ないのではないでしょうか。
その名前の通り、初代「CR-X」は2代目「バラード」の派生車種です。
ではその「バラード」という車種はどんな存在でしょう?
「バラード」は、3代目シビックの姉妹車として、1983年に誕生しました。
当時のホンダは、他のメーカー同様に販売チャンネルを増やして新規顧客の掘り起こしを企んでいました。
その一環として誕生したのが「ベルノ店」です。
「ベルノ店」はバブル景気で資金力が上がった若いユーザー層に訴求するスポーティイメージをウリにしていました。
その「ベルノ店」で初めて販売した大衆ファミリーカーが「バラード」です。
初代は4ドアセダンのみでしたが、2代目になると車種展開の拡充を図り、3ドアハッチバックの「CR-X」が追加されました。それが初代の「バラードスポーツ CR-X」です。
初代バラード。1980年式バラード 1500 FXE
2代目「バラード」では「CR-i」や「CR-M」など「CR」で始まるグレード名が使われていて、そのホットハッチ版に「CR-X」の名称が与えられました。
1983年式バラード CR-M
同時期に海外で販売された同モデルは「CIVIC CRX」という名称で、日本では登録商標の関係で間にハイフンが入ったようです。
余談ですが、この時期の「バラード」の高性能グレードには「CR-Z」の名が与えられていて、後に独立の車種名として再採用されました。
1983年式バラード スポーツ CR-X
1983年式バラード スポーツ CR-X
1983年式バラード スポーツ CR-X
注目はエンジンだけにあらず。柔らか素材の樹脂ボディも先駆的だった
確かにこの「ZC型」エンジンが搭載された「Si」グレードの「CR-X」は今でも高い人気を維持していますが、この初代「CR-X」の注目点はむしろその軽量さの方にあると言っても良いかもしれません。
その車重はなんと800kg。これは現行の軽スポーツ「S660」よりもはるかに軽量です。
しかもこれはサンルーフなどのアミューズ装備が組み込まれた中核グレードの「1.5i」の数値で、廉価装備の「1.3i」では760kgという驚異の数値です。
初代「CR-X」というと、14年ぶりにDOHC式が採用された1.6リットルの「ZC型」エンジンのイメージが強く残っているという人が多いかもしれません。
この軽量さを実現するために採用した新技術が「H.P.ALLOY」&「H.P.BLEND」というホンダ独自開発の樹脂素材です。
新素材「H・P・ALLOY」をフロントマスクやヘッドライト・フラップ、左右フロントフェンダー、左右ドアロア・ガーニッシュに採用することで、軽量化と耐チッピング性、防錆を達成。顔から足元まで飛び石や錆にも強く、美しいボディを手に入れている。
「H.P.ALLOY」は「HONDA POLYMER ALLOY」の略で、ABS樹脂とポリカーボネートに耐衝撃性を向上させる新成分を加え合成した独自の樹脂です。
これをフロントフェンダーやフロントマスク、サイドシルカバーに採用しています。
「H.P.BLEND」は「HONDA POLYMER BLEND」の略で、高い耐衝撃性と耐候性をもつ変性ポリプロピレンです。
これを前後バンパーに採用しています。
つまり、ボディの下半分がごっそり樹脂のパネルということになります。
外装の樹脂パネルと言えば1990年に登場した「GM」の「サターン Sシリーズ」が印象に残っていますが、その7年も前に実用していたのは驚きです。
前後バンパーにも新素材の「H・P・BLEND」を採用することで、軽量化や防錆、耐チッピング性の向上が図られた。軽い接触による変形防止も実現している。
軽量&コンパクトな新開発の12バルブ・クロスフローエンジンを搭載。1.5iでは110馬力の高出力を発揮したほか、1.3では20.0km/L(10モード燃費・5速車)という低燃費も実現している。
漫画「よろしくメカドック」に登場して、人気が再燃
初代「CR-X」と聞いて「ああ、あのメカドックに出てた!」と懐かしく感じる人も少なくないのではないでしょうか。
メカドックとは、1980年に「週刊少年ジャンプ」で連載を開始した、国内の本格チューニング&カーバトルマンガの草分け的存在である「よろしくメカドック」のことです。
人気が高く、1984年にアニメ化されましたが、それで観ていた人でも最低で50歳くらいだと思われます。
その劇中で、主人公がゼロヨンレースに出場するために選んだのがこの初代「CR-X」でした。
印象的なのはその改造内容で、エンジンを大胆にミッドシップに搭載してリヤ駆動にしてしまった点です。
しかもターボ化して大パワーを得るという、まさにWRCグループBのモンスターマシン「ルノー5ターボ」の手法をそのままホンダ車で再現してしまったのです。
当時のクルマ好きキッズたちは、「えええ! エンジンを荷室に積んで良いの?」とド胆を抜かれました。
そんな初代「CR-X」は、今の旧車ブームの中でもしっかりその存在感を示し、ホンダを代表する名車の一角として支持されているのです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(旧車FAN | ホンダ)
学生が蘇らせたシビックRSが「ラリー・モンテカルロ」に参戦 今回のチャレンジは、「技術の伝承」と「挑戦文化の醸成」を目的とした「50周年記念チャレンジ企画」の第一弾であり、ホンダ学園の理念を体現する取[…]
環境問題が叫ばれ始めた時代に登場したコンパクトカー 初代「シティ」が発売されたのは1981年です。1980年代初頭の日本は、高度経済成長のおかげで消費が潤って勢いを増し、文化や娯楽がアチコチで新しい花[…]
1:ニッサン プリメーラ[P10] デビュー:1990年2月 “プリメーラ”といえばこのモデルを思い浮かべる人の多いのではないだろうか。かつて「技術の日産」と謳われた同社が、1990年代のうちに運動性[…]
サービスや部品供給の詳細は、2025年秋頃に発表 かねてからホンダは、多様な取引先の協力を得て、生産供給が困難になった部品の代替部品生産の検討していたが、今回、愛着あるクルマに長く乗り続けたいという顧[…]
ホンダの黎明期はオートバイメーカー、高い技術力を世界に猛アピール ホンダ初の4輪車は、エポックメイキングどころか、異端児だった!? …と、YouTubeのアオリ動画のタイトルみたいに始めてしまいました[…]
最新の関連記事(大人気商品)
侮るなかれ、さまざまな効果が得られる空力パーツ 先日、知り合いからユニークなカーグッズを紹介された。細長いプラスチックパーツが12個並べられているパッケージ。一見すると、どんな用途でどのように使用する[…]
夏の猛暑も怖くない、ロール式サンシェードが作る快適空間 夏のドライブで誰もが感じる悩みは、車内の暑さだ。炎天下に駐車すれば、シートやダッシュボード、ハンドルが触れないほど熱くなる。さらに紫外線による内[…]
座るだけでクールダウン 夏のドライブが快適になる最新カーシート 夏の車内は、ただでさえ暑い。長時間の運転や渋滞に巻き込まれたとき、背中やお尻の蒸れが不快感を倍増させる。そんな夏の悩みを一気に解消するの[…]
引っ張るだけでOK、瞬時にセット完了 ロール式サンシェードの最大の魅力は、その操作の簡単さにある。取り付けは非常にシンプルで、工具も必要なくサンバイザーに専用パーツを固定するだけ。その状態でロール部分[…]
奥まで届く薄型設計で内窓掃除が快適に 近年の車はフロントガラスの傾斜が鋭角になり、従来の内窓ワイパーでは掃除しづらいケースが増えている。特にプリウスなど一部車種ではダッシュボード付近に大きなモニターや[…]
人気記事ランキング(全体)
FRのサニーに対して、日産初のFF方式を採用 1970年代を前にして、ヨーロッパから前輪駆動のFF方式の波が押し寄せてくる。この流れを敏感にとらえ、市場に送り出されたのがチェリーだ。車名の由来は日本の[…]
"最後の個性派スポーツ"と評価されたSR311フェアレディ2000 その軽やかな響きとは裏腹に、フェアレディという名は、国産スポーツカーのパイオニアの血統を受け継ぐ伝統の名称だ。その系譜をたどれば、ダ[…]
クラウンエステート概要:品格と機能性が同居する「大人のアクティブキャビン」 クラウンエステートは、クラウンシリーズ第4弾として登場した「大人のアクティブキャビン」。ワゴンとSUVを融合させた新しいデザ[…]
コンパクトでも侮れない装備力 F-BOX Squareは、トヨタ・タウンエースをベースに仕上げられた8ナンバーキャンピングカー。街乗りにも馴染むコンパクトな全長と車高1,960mmというサイズ感は、立[…]
優雅な旅を叶えるDarwin Q3の世界 トヨタ・ハイエースをベースに、DELTA VAN DESIGNが手掛けた「Darwin Q3」は、旅を愛する人々の理想を具現化したキャンピングカーだ。ベース車[…]
最新の投稿記事(全体)
コンセプトモデル「Acura Performance EV Concept」の進化系 ベースとなっているのは、昨年2024年にカリフォルニアで開催されたモントレー・カー・ウィークで発表された、Acur[…]
一見すると、何に使うかよくわからないアイテムだが…。 TikTokを始めとしたSNSでバズった話題のカーグッズ。ショート動画で見ていると、かなり便利そうなので気にはなったいたのだが…。実際のところはど[…]
GRIDLESS GARAGE LIFEを体現するGMLVAN G-01 GMLVAN G-01は日産キャラバンをベースに、GORDON MILLER MOTORSのアイコンである丸目ライトとテールラ[…]
「トヨタ・2000GT」より先に生まれた「小さなスポーツカー」 「トヨタ・スポーツ800」が発売されたのは1965年です。 それより少し前の1950年代は、戦後からの復興期から徐々に産業が発展しつつあ[…]
フォレスター:モデル概要 6代目として登場した現行モデルは、レジャービークルとしての本質を追求し続けてきた歴代モデルのコンセプトを継承。スバル伝統の水平対向エンジンと独自の4WDシステムを採用するほか[…]
- 1
- 2